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著作権

この動画戦国時代を最後に制する大本命は「字幕.in」なんじゃね?

盲点だった。
ニコニコ動画やRimoの派手さに目を奪われっぱなしだったのと、非営利個人サイトということで、ついつい軽視してしまっていたのかもしれない。
しかし、考えれば考えるほど、「字幕.in」はヤバイ。
本家のYouTube含め、どのサービスも軽視できないジレンマやリスクを抱える中で、「字幕in」だけがあらゆる障壁を回避できる可能性が高いという結論に達した。
satoru.netの中の人は可及的速やかにビジネス化に向けて動き出すべきだ。
私がマネーの虎の高橋がなりだったなら巨額の出資を申し出るところだ。
ヒントを与えてくれたのは、「字幕.in」に投稿されたこの秀逸作品である。
mixi経験者ならきっとお気に召すだろう。何度見ても笑える。

勘のいいユーザ達は、この作品を見ただけで
「なるほど『字幕.in』はこうやって遊べばいいのか」
と即座に理解する。
そして、表面上の仕様は似通っていても「ニコニコ動画」とは全く別のサービスである事に気付く。
さらに、この「面白さ」にはどこか既視感があることにも気付くだろう。
代表的なものを挙げると、以前はてなのコアユーザ達を震撼させ、笑いのどん底に突き落としたこの動画だ。

この作品の素材となった「キーボードクラッシャー」君の動画は、他にも無数のバリエーションを生み出しちょっとしたブームとなった。
そして興味深いのは「字幕in」のサービスにおいても、素材となる動画が特定のものに集中する傾向があるという事だ。
これらのヒントを元に考察してみると、「字幕.in」というサービスは、他のサービスが共通に抱える問題、具体的には
1.素材コンテンツの確保
2.著作権問題
2.回線インフラ及び負荷対策
のすべての要素において、大きなアドバンテージを持つと気付いちゃったのだ。
以下、そのポイントを順に説明しよう。


1.素材となる動画のインデックス数は、少なくて良い

もちろん多くても困ることはないが、必ずしも大量の動画は必要ない。
先に述べた通り、同じ動画を使い回すことで、別の面白さが醸成されるからだ。
極端な話、字幕素材として「使える」ものが数十動画程度でも、サービスは十分可能だろう。


2.素材そのものが「面白い」必要はない

むしろ意味不明な方が、ナイスな字幕が付いた時の面白さが増幅される。
これはとても重要なポイントだ。
まず、日本語である必要は全く無いどころか邪魔になる位なので、頭の固い日本の著作権利団体を最初から相手にする必要が無い。
先の「ミクシィ」作品はテレビドラマ「24」のトレイラーが素材となっているがそれも必然性はそれほど無いので、その気になれば運営者側が自前で素材動画を制作して、それをお題として提供する事も可能だ。
その場合だと、ユーザのアップロードにすら依存せずにサービスは成り立つ。
フランス語やポルトガル語や中国語やスワヒリ語の映像もあると良いかな。交渉窓口さえある国なら、日米より許諾は得やすそうだ。
レアな言語の方が秀逸な字幕作品を生みやすそうだし、「空耳」部門なんかも佳作が増えるだろう。
[追記]
考えてみると、「24」にしてもトレイラーなんだから、許諾とれる可能性はあるよね。いろんな映画やドラマのトレイラーを積極的に素材とすれば、逆にそこから広告料収入だって夢じゃない。いずれにしても、いろいろと前途は明るい。


3.クライアント側のキャッシュが再利用される頻度が高い

上記、1,2の要素が結果的にキャッシュの再利用率を飛躍的に高める。
実際、「字幕.in」で同じ動画の複数作品を見てみると、ロードされるのは最初の作品だけだった。
整理すると。
素材動画が少なくていいから、ぶっこ抜きとかしなくても無問題。
権利問題クリアも全然いけそう。
回線インフラも負荷も、キャッシュ利用率が高くてウマー。
すごいよ。ノープロブレムだよ。
非営利なんかでやってる場合じゃないよ。
うかうかしてると、他に横取りされちゃうよ。
文面は軽めのノリですが、内容は超マジです。
とりあえずsatoru.netの中の人にトラックバックしといたろ。

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ネットWatch

「ニコニコ動画(β)」とは結局何だったのか

ここ数日ネットではニコニコ動画の話題で騒然という感じだった。
大方議論は出尽くした感もあるが、技術的理解度のばらつきが余計な混乱や誤解を招いている様に見受けられるし、重要なポイントが見過ごされてる気もするので、ここまでの総括を兼ねて整理しておきたい(長くなる予感)。
まず、この件を知らない方の為にあらためて経緯をまとめてみる。

2007年1月15日 YouTubeやAmebaVisionの動画に任意のタイミングでコメントを付けられる
サービス「ニコニコ動画(β)」開始。大きな話題を集める。
※ちなみにニコニコ動画の試験サービスは2006年12月から既に行われていた。
1月31日 ニコニコ動画βの月間PVが早くも1億を突破
2月7日 ニコニコ動画βの投稿コメント数が1000万件突破
2月20日 この頃からニコニコ動画へのDDoS攻撃が断続的に行われる
2月23日 ニコニコ動画βサービス一時停止。アナウンス上の停止理由は、DDoS攻撃の激化だったが
その後、YouTubeからニコニコ動画ドメインに対するアクセス遮断が判明。
2月24日 ニワンゴがニコニコ動画βサービスの終了、新サービスへの移行準備に入る事を発表。
2月27日 ニコニコ動画停止を影響で、YouTube動画に字幕を付けられる同系統のサービス「字幕in」の
アクセスが急増。1日200万PVに。
なお、字幕inのサービス自体は、1月14日から既に始まっていた。
3月1日 3月5日よりニコニコ動画を再開すると発表。
YouTube対応は当面見送り、替わりに自前動画投稿サイト「SMILE」(仮)のサービスも開始すると発表された。

こうした一連の経緯を受けて、ブログ界隈でもこの話題で盛り上った。
特に注目を集めたのは、「ニコニコ動画はYouTubeにとって脅威だった」「アクセス遮断はYouTubeにとって失敗だった」といった論調の記事で、代表的なものは以下のエントリ。
ニコニコ動画とYoutubeとWeb2.0時代の終焉
Mind Clip ニコニコ動画がYouTubeに嫌われた本当の理由。
これらの記事に対するカウンタとして、昨日あたりからはてなブックマークでも人気になっているのが「最速インターフェース研究会」のエントリー
「ニコニコ動画はYouTubeにとって脅威になったのでアクセス拒否された」みたいな論調に話を持って行きたがる人たちについて
紹介は省くが他のブログにも興味深いエントリーが多数あった。
以上がこれまでの大まかな流れ。さてここからがこのエントリーの本題。


ニコニコ動画βの技術的考察

冒頭にも書いた様に、技術的な誤解が元で議論が拡散してしまった印象を個人的に持ってるので、まずその点についてちょっと整理したい。
ニコニコ動画βの実装において、重要と思われるポイントは以下の3点。

  1. 主要な機能は全てFlashで実現されていた
  2. サービスを(YouTubeとの事前交渉無しに)実現する為には、FLVファイルのURI取得(ぶっこ抜き)が必須だった
  3. FLVファイルのURI取得は、YouTube-APIでは提供されていなかった

2,3については、最速インタフェース研究会さん始め、幾つかのブログが既に指摘している通り。
またFLVパスの具体的な取得方法については、ニコニコ動画みたいなものを作ってみるテストと問題点 というエントリーでZAPAさんが実に丁寧な検証をされているので、興味のある方はそちらを参照されたし。
ここで補足しておきたいのは、スクレイピングという手法自体は必ずしも「不正」という訳ではないよという点。特に、API提供というトレンドが無かった頃のWEBにおいては当たり前に行われていた手法の総称で、そもそも「正しい」とか「正しくない」という範疇の話ではなくて、あくまで当事者間の利害関係によってケースバイケースで語られるべきもの。
だから「なんだ、やっぱニコニコ動画は不正なアクセスをしてたのか」みたいなリアクションはいささか過剰反応だし、逆に「アクセス遮断しやがった!」と逆切れできる程の正当性も無いよというレベルで捉えるのが丁度良いと思う。
[追記]
この部分は、「スクレイピング」という言葉自体をネガティブな意味だと解釈している人が見受けられたので、その点に関する補足として読み取って欲しい。
今回の「当事者間の利害関係」まで踏み込めば、ぶっこ抜き行為がYouTubeにとって少なくとも「ウェルカムではない」のは確かで、過去にflvパスの取得仕様が突然変更された事を考えてもそれは明らかだとは思う。しかし本当に「不正」ならばその時点でRimoもアウトなわけで、ここは早計な判断で結論を急ぐべきでもないと思う。
[追記ここまで]
それよりもここで強調したいのは、1の方。ニコニコ動画にしろ字幕inにしろ、Flash無しには有り得ないという点。ニコニコ動画βが短期間に開発を進められたのも、字幕inが個人の非営利サイトで実現できているのも、Flashというプラットフォームがそれだけのポテンシャルを機能として最初から持っていたから。
ニコニコ動画βを異常に過大評価しちゃってる人には、そこが伝わって無い気がした。
実際、Flashでの実装はある程度ActionScriptに精通した人であればハッキリ言って簡単だ。
その実証として、私もちょっとした「なんちゃってニコニコ動画」を作ってみた。開発工数は2時間。

Flash上のローカル変数にコメントの履歴20件分とその時のタイムコードを配列で残しているので、動画を先頭に戻して再生すれば、自分のコメントも時間軸に沿って再生される
(他人のコメントは当然残らない、念のため。また、ローカル変数なのでリロードすればクリアされる)
このサンプルではサーバサイド連携はしていないが、あとはこの情報をサーバサイドに飛ばしてDBに蓄積し、XML情報としてFlash側にフィードバックしてあげれば、それだけでニコニコ動画の仕様はほぼ実現できる。
動画は以前話題になったJRメドレーを選んでみた。
ちなみにコメント位置の縦座標はランダムにしているので、再生の度に位置が変わる仕様になっている。
動画再生中の定期的なタイムイベントをPlayerオブジェクトが生成し、それを受けるリスナーオブジェクトを登録して、その時のタイムコードをこれまたPlayerオブジェクトから取得、文字列オブジェクトを動画上にアタッチしてフレームイベントでアニメーション、などなど、必要な機能がいたれりつくせりなFlashだからこそ実現できる。
何が言いたいかというと、この程度の「マッシュアップ」の可能性は、YouTubeが配信プラットフォームにFlashを選択した時点で当然折込済みだったろう、という事。
今でこそFlash Video(flv)は動画ポータルにおける配信フォーマットの主流になったが、そもそもこの流れを作ったのがYouTubeとGoogleVideoであり、2005年当初は比較的マイナーな存在だった。
例えばGoogleにしても、GoogleMapをAjaxで実装した時「Flash採用を嫌ったのでは」という見解が支配的だった。それが動画配信ではあっさりとFlashを選択したのも、その圧倒的な可能性を見抜いていたからに他ならない。
つまり、彼らの先見性にやっと時代が追いついてきた、というのが昨今の状況であって、ニコニコ動画が秀逸なサービスである事に異論は無いにせよ、「YouTubeがニコニコ動画に脅威を感じた」とまで言ってしまうのは、いささか欲目が過ぎるのではないかと思う。
ちなみに、Flashファイル上の動的テキストが検索にヒットする事は無い。そもそもSEO的にFlashは不利というのが定説で、ほぼ画面全体がFlashで覆われていたニコニコ動画βは、Player部分のみFlashを採用しているYouTubeと比べても検索との親和性は低い。


ニコニコ動画βが「画期的」だった点

ニコニコ動画が「画期的」だった事に疑問の余地は無いと思う。特に「これはスゴイ」と感じたのは異常なまでの「コメントする時の障壁の低さ」だった。
2ちゃんねるに書き込んだ事はいまだに無いが、ニコニコ動画には仕様確認も兼ねて何度かコメントしてみた。
で、実際コメントしてみて驚いたのが、その「気楽さ」だ。
どんな場違いなコメントも、あっという間に流れていく。誰も自分のコメントなど気に留めていない。そのくせ、妙な一体感が醸成される。そもそも書き手を特定する情報が無いから絡まれたりする心配も無い。
2ちゃんねるで言う「この速さなら言える」状態が定常的に続く感じ、とでも言おうか。気楽にも程がある。
あれほどまでに「書き込む快感」が増幅されるサービスは過去に体験した事が無かった。正直楽しかった。
これは2ちゃんねる文化を擁する日本でしか生まれないサービスだな、と感じた。
コメントするのに、id登録すら必要無いというのはよく考えるとかなり大胆だ。コメンターの絶対数を推測する手がかりを捨てるのは運営サイドとしては勇気がいる。そして、その結果生まれた「気楽さ」がアクセスの急増に寄与した最大要因だと思う。

最後に

結局「ニコニコ動画β」とは何だったのか。
一言で表現するのは難しい。
WEB2.0的世界観に内在する不確実性とか、YouTubeがいまだに抱える著作権問題とか、衆愚としての2ちゃんねる文化とかこれまで問題視されながらも存在し続けてきた様々な要素をすべて巻き込んで2ヶ月足らずで巨大化し、散ったあだ花か。
ニコニコ動画βについて何を語っても妙な残尿感が残る。エントリーを書き進めていくうちにかえって混乱してきた。
もうすぐニコニコ動画の新サービスが始まる。
今後どんな展開になるのかはわからないが、何か進展がある度に短絡的な判断を下してあれこれ言うのはしばらく慎みたい。
なんとなくそんな気がしてきた。全然まとまってないw。ゴメンナサイ。
[追記]
要望いただいたので一応「なんちゃってニコニコ動画サンプル」flaファイル置いときます。
Flash Pro.Ver8です。
nicosample1.zip

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ヨギータ・ラガシャマナン・ジャスラック

ドウモー コンニチワー
ボクゥハ ラクゴカノ
ヨギータ・ラガシャーマナン・ジャスラック
ト モウシマスケドモ
キョウハ コンナニタクサンノ
チ、チ、チョ、チョ、
チョサ、チョサ、
ゴメンナサイ
チョット ハツオンスィニクイ コトバ ダカラ
チョ、
チョサ、チョサク、チョ、
チョサクケンリョウ
ヲ モラッテ メチャメチャ ウレスィ ダケド
ボクハ コナイダ ハジメテ
ユートゥーブ ノ ヒトト オハナシシタ ダケド
ユートゥーブ ノ ヒト イガイト フレンドリーダッタ ダケド
ホンライナラバ コッチモ シツレイガアッチャイケナイ ダケド
ソンナノ ボクカラ シテミタラ
フレンドリートカ ソンナノカンケイナイ!
ソンナノ ゼーンゼンカンケイナイ!!
エゲツナーイ キンヨクヤデー
サイシュウテキニ
ユートゥーブノ トップページニ ニホンゴノ ケイコクダスッテ
ニホンガワノ ヨウキュウノ ベタサ ニ ドギモ ヲ ヌカレタヤロ!!
マサカ 2007ネンニ コノ ヨウキュウ ヲ 
フルテンション デ イッテクルトハナー
元ネタ(そろそろ消される予感)
R-1ぐらんぷり 2007 (チュートリアル徳井)

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どんなに愛されても「幸せ」にはなれない ”Rimo”という名のシザーハンズ

シザーハンズ。
両手がハサミで出来ているが故に、人間社会に適応できなかった人造人間エドワードの物語。
はてながリリースした新サービス「Rimo」(リィモ)は、超マジで「テレビそのもの」を目指すという、実体を伴ったWEB上のサービスとしてはおそらく世界初の画期的な試みである。
コンテンツとしては十分な魅力と可能性を感じる。
今後、多くのユーザに支持されるだろう、とも思う。
しかし、どんなに多くのユーザから愛されたとしても、”Rimo”は「幸せ」にはなれないだろう。
つまり、”Rimo”はビジネスとしては成功しないだろう。
というか、”Rimo”の存在そのものがビジネスとして成功できない「宿命」を併せ持ってしまっている様に思う。
このあたりのニュアンスをどう伝えればよいのか難しい。どう表現しても、批判と受け取られてしまいそうな文章になる。
あれこれ思案していて、「シザーハンズ」を思い出した。シザーハンズに例えたなら、少しはこのエントリーの意図を伝えられるかもしれない。
「Rimo、君は悪くない。
でも君がいくら”テレビ”になりたいと願っても、それは無理なんだ。
だって君の体は”WEB”で出来ているからね。」


サービスの収益について尋ねると、川崎さんは「ノープランです」とからりと笑う。サービスに自信はある。まずはたくさんの人に使ってもらい、楽しんでもらうのが先決だ。「人がたくさん集まれば、それだけで価値が生まれるはず。それこそ『こっちの方がテレビより面白い』とでもなれば、ビジネスも成り立つだろう」(神原さん)
YouTubeをテレビで“ダラ見” はてな、Wii対応の動画サービス (2/2)

「人がたくさん集まればそれだけで価値が生まれるはず」
「ユーザから支持さえ集められれば、ビジネスは何とかなる」
この様なある種楽観的な考え方は、WEBビジネスの世界では珍しいものではないし、むしろ支配的な考え方と言える。しかし、この理屈は「WEBビジネス」を志向するサービスで成り立つ話であって、「テレビ」を志向する「Rimo」に通用するかどうか。
Rimoのユーザがどの様に振舞い、そこで何が起こるのかを具体的に想像して欲しい。
ユーザは、TOPページURL http://rimo.tv/ にアクセスしたまま、「テレビの様に」コンテンツを視聴し始める。Rimoはコンテンツ抽出のアルゴリズムに則り、あらかじめ想定されたトラフィックを流し始める。ユーザは、流れ出したコンテンツをひたすら「消費」する。その行動パターンは、ネットユーザではなくテレビ視聴者のそれになる。
彼らは、殆ど存在感を発揮する事なくRimo上に滞留し続ける。彼らが起こすアクションは、基本的にスキップボタンかチャンネルボタンをクリックするだけ。Rimoのアクセスログには、ザッピングの痕跡だけが淡々と記録されていく。
この様なユーザが1000万人になろうが、1億人になろうが、それは「頭数」以外の意味を持たない。
何が言いたいかと言うと、ユーザの「能動的な意思表示」が有って初めてWEBは価値を創出できるという事だ。
GoogleやAmazonのビジネスモデルを持ち出すまでもなく、WEB上で成功したあらゆるビジネスは、「ユーザアクションの正確な把握」と「そこから潜在ニーズを的確に読み取る」という2つの大原則から成り立っていると言って過言ではない。

これまでのインターネットサービスでは、「文字を書き込む」「検索する」「設定項目を入力する」といった操作をする必要がありました。Rimoはそんなめんどうな操作をできるだけ取り払いました。
はてなダイアリー日記 2007-02-16

と豪語するRimoのコンセプトは確かに斬新だが、言い換えれば「WEBである事のメリットは全て捨て去りました」と言っているに等しい。そう考えると、Rimoのアクセスユーザ数をビジネスに結びつけるのは想像以上にハードルが高いと気づく。
クリッカブル広告の類は、そもそもRimoのコンセプトにそぐわないし、現状のUIを考えてもいかにも収まりが悪い。テレビを志向しているのだからテレビCMと同じ形態でCMを流せば良いという発想がやはり自然だろう。
そうなると、単純な視聴人数をベースにした広告収入という事になり、つまりテレビの視聴率競争という土俵にWEBインフラをぶらさげて参入、みたいな話になってくる。
しかし正直、スケールメリットの勝負になってしまうとWEBに勝ち目は無い様に思う。
テレビは一度電波を発信してしまえば、それを1万人が視聴しようが、1億人が視聴しようが同じコストだ。WEBではどう逆立ちしても、配信規模の増大に伴ってランニングコストが膨らむという基本構造は変わらない。ちなみにWEB上で1000万ストリーム同時配信しても、テレビ視聴率換算で約16.7%にしかならない。
「Rimo」はどんなにテレビを装ってもWEBサービスである。常識的でベタな話をすれば、ビジネスとして成功させるにはコンセプトを軌道修正すべきと思う。
しかし一方で、それこそツマラナイだろと思う自分もいる。
WEBの世界では非常識がしばしば新しい常識を生み出す。もしかしたらとてつもないブレークスルーがRimoをきっかけに起こらないとも限らない。

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YouTube

YouTubeで見る 1980~90年代日本のポップシーンで輝きを放った天才ミュージシャン10組

長らく日本の音楽シーンは不毛の時代が続いている。CD売り上げとかの話ではなく、クオリティの話だ。個別に見れば非凡な才能を持ったアーティストもいるとは思うが、総じて小粒でサウンド面で業界を牽引していく様な核になる人がいない。ヒットチャートは定型化してしまった即席ミュージックで溢れかえっている。その傾向は1990年代、ビーイングの隆盛あたりから始まってはいたと思うが、それでも今に比べれば個性と才に溢れたアーティストがたくさんいた。
そんなアーティストの中から「YouTubeで映像を紹介する」という前提で、10組を独断で選んでみた。彼らを知らない若い人にこそ見て欲しいなー。どのアーティストも強烈な個性で、きっと新鮮に感じるはず。
ヒット曲の有無はあまり関係が無い。ここに挙げた10組は皆、その独創性で「他のミュージシャン」に多大な影響を与えた(もしくは今も与え続けている)面々である。


いまみちともたか(バービーボーイズ)

そもそもこの企画を思いたったのは、はてなブックマーク「注目の動画」に上がっていたバービーボーイズの
目を閉じておいでよ” を見て、だった。
ソプラノサックスを持った男性と女性のツインボーカルという編成上の斬新さもさることながら、なんといってもギタリストいまみちの手がけるサウンドが素晴らしかった。
既成の枠に囚われない大胆なコード進行と独特のリフが味わい深い。YouTubeにもけっこう多くの映像があったのでどれを取り上げるか迷ったが、彼らのスタイリッシュな感じが良く出ていると思ったので、これ。
離れろよ


松浦雅也(PSY・S)

日本人独特の「ポップ」感覚。その最も上質な部分を抽出した様な人。マジ天才。
松浦氏の「ポップ」感覚は、後に彼がプロデュースした「パラッパラッパー」で一つの完成形に到達したと感じた。「パラッパラッパー」のサントラは歴史に残る名作。ピッチカートファイブの小西康陽がクラブでDJをやる時にパラッパの曲を回してたとかいう話もあったような。
PSY・S時代も佳作が多かったが、YouTubeでは選択肢が少なかった。とりあえずこれ。
電気とミント
ちなみに、前述のいまみちともたかもPSY・Sのレコーディングにしばしば参加していた。


イエローマジックオーケストラ

なんか紹介の順番が無茶苦茶ですけど(笑)。これはもう説明不要。世界のYMO。
この3人がユニットを組むなんて今思えばつくづく奇跡としか言いようが無い。
動画もたくさんあったけど、YMOのサウンドにおいて「ユキヒロ」のドラムがいかに重要だったか感じ取る事が出来るこの映像を選んでみた。
YMO-BEHIND THE MASK(’79LIVE)


戸川純(ゲルニカ)

つーか、YouTubeでゲルニカの映像を発見した時点で、死んだ。そして泣いた。
上述したYMOの細野晴臣がプロデュースしたコンセプトユニット。
とりあえず映像を見ていただければYMOとは別の意味で説明不要。
銀輪は唄う
初めて見る人は面食らうだろうが、繰り返し聞き込むほどに、戸川純の表現者としての稀有な才能と、上野耕路が創り上げるサウンド&アレンジの高度さに感嘆する。そしてハマる。
とはいえ、さすがにこれは聴き手を選ぶかな。
自分の場合は中学時代ゲルニカばかり聴いている変な子に育ってしまった。


フリッパーズ・ギター

小山田圭吾と小澤健二。この組み合わせもあらためて凄い。
今や小山田はコーネリアス名義でかなり先鋭的な音楽をやってるわけだが、オザケンのPOPさとミックスする事でこの当時の味わいが生まれたのかなとも思う。
BLUE SHININ’ QUICK STAR


田島貴男(オリジナルラブ)

一時期「渋谷系」なんて括り方もされたが、後に様々な音楽を取り込んで独特の存在感を放っている。
見方を変えれば迷走している様にも見える。良く言えばいまだ未完成。個人的にはJAZZ志向の強かった初期のサウンドが一番好き。
YouTubeではこれしか見つからなかった。
接吻
中島美嘉がこの曲をカバーしたのは記憶に新しい。


山下達郎

マイペースに息の長い活動をしているが、サウンドクオリティの高さは折り紙つき。
作曲、アレンジ、歌唱力、どれをとっても図抜けていて、レコーディング技術についてもサウンドエンジニア顔負けの知識を持つ。トータルな「音楽家」としてのレベルは日本でもトップクラスではないか。
YouTubeにはあまり映像が無かったが、ドラマ「漂流教室」に使われていたこれ。ええ曲や。
Loveland,Island


近田春夫(ビブラストーン)

様々な名義で様々な活動をしている近田春夫。その中でもビブラストーンの印象が強烈。HipHopを標榜しつつ、アメリカのそれとも、いわゆるJ-HipHopとも明らかに違うそのサウンドは唯一無二。
ブラスセクションまで揃えた分厚いサウンドに乗せて、日本社会を痛烈に風刺したリリックを独特のノリでしゃべりまくる。韻も殆ど踏まない。
しかしこれこそが「日本発」のHipHopスタイルと言えるのかもしれない。評価も、国内より海外での方が高かった感がある。
Mikky-D


岡村靖幸

なにかとお騒がせなオカムラちゃん。しかしその才能に疑問の余地は無い。
ミュージシャンにも熱烈なファン多数。2002年にはミュージシャン有志によりトリビュートアルバムまで作られた。
個人的には、溢れる才能を持て余し気味である事とその寡作具合から、漫画家の江口寿史とイメージが被る。
そーいえば、トリビュートアルバムは江口寿史がジャケット書いていた。やっぱ相通じるものがあるのかな。
YouTubeに、尾崎豊と競演してる興味深い映像があったのでそれ貼っときます。
岡村ちゃんわけえ!ほせえ!
尾崎豊&岡村靖幸  YOUNG OH!OH!


奥田民生

バリバリ「今」の人だけどユニコーン時代含めるとキャリアはけっこう長い。
その「リラックス具合」含めて才能だと思う。この人も海外で評価が高く、レコーディングとかで地味に凄い面子が集まる。”ロック”を肌で理解している人。個人的には作詞家としての才能も突出してると思う。
YouTubeではけっこう削除されちゃったのか、思ったほど数が無かった。
イージューライダー


他にも取り上げたかった人はたくさんいた。矢野顕子とか大貫妙子とかボガンボスとかRCサクセションとか。
とりあえず懐かしすぎ。それにしても皆すごい存在感だ。
2000年以降に世に出たミュージシャンで実力的にこのあたりの面子と肩を並べる人って誰かいたっけか?誰も思い浮かばない。
それこそが音楽業界の抱える最大の問題じゃなかろうか。
無許諾アップロード摘発に血道を上げるより大切な事があると思う。

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YouTube

ブラックマヨネーズの漫才に関する考察

昨年のM-1ではブラックマヨネーズがグランプリだった。
昨年は総じてレベルが高かった様に思うが、その中でもブラックマヨネーズは飛びぬけていたと思う。
そして、審査員だった大竹まことの発言(via Wikipedia)

「オーソドックス(な漫才)の凄さに吃驚した。別に新しいことをしなくても十分面白いことを再認識した」

という賞賛を私も違和感無く聞いていた。
しかし、最近YouTubeでブラマヨの漫才を幾つか見ていて、気付いた事がある。
彼らの漫才はやっぱり「新しい」んじゃないか、と。
ブラマヨの現在の漫才スタイルについては、やはりWikipediaからの引用が判りやすい。以下抜粋。

2005年からぼやき漫才のような形をとって、世の中の色々なことに対して吉田が不満を漏らし、小杉が「こうしたら良い」と案(最初は妥当な案だが徐々に無茶な案になる)を出し、それに対して吉田が的外れな文句をつけて笑わせるという芸風をも取り入れている。これは2005年初頭、吉田の「ラジオのようなフリートーク形式の漫才がやりたい」と言う提案から、二人の前に真っ白なノートを置いてその場の思いつきの会話形式でネタを作り書き込んでいったのが始まり。ちなみに、ネタの終盤あたりで興奮気味にツッコミをする小杉の顔に吉田がビンタをし、ネタの最後では必ずといっていいほど小杉の問いかけに対し吉田が皮膚科関係のことを言い終了する。

YouTubeではM-1時の映像が削除されてしまった様だが、以下の映像で典型的な彼らのスタイルを確認できる。
(いずれもM-1グランプリ直後の映像の様だ。)
http://www.youtube.com/watch?v=YZ17HVBre1g
http://www.youtube.com/watch?v=hDURdmSV4DU
「ハゲ」と「ブツブツ」という、あまりにベタなキャラ設定。きっちりパターン化されたネタの展開。
これらの要素が、ブラマヨ漫才が「オーソドックス」な印象を与える要因だろう。
しかし、それらは「カムフラージュ」だったのだ(なんだってー)
「新しい」漫才の代表格といえば、笑い飯が思い浮かぶが、ブラマヨの漫才にも実は笑い飯と同様の新しさが内在している。具体的には、日本のお笑いにおける基本中の基本「ボケ-ツッコミ」スタイルからの脱却である。
笑い飯が「Wボケ」というスタイルで、文字通りボケ-ツッコミそのものを破壊しているのに対し、ブラックマヨネーズは巧みにボケ-ツッコミを倒錯させる事によって、客も気付かないような「新しさ」を体現している。
ブラックマヨネーズのボケ担当は吉田敬(ブツブツ)で、ツッコミ担当は小杉竜一(ハゲ)である。
誰の目から見てもコテコテのボケ-ツッコミである。どこが倒錯やねんと。そう思われるかもしれない。その通りです。ごめんなさい。でも違うんです。
話が少し逸れるが、今の漫才はダウンタウンの存在無くして語れない。
ダウンタウンによる笑いは、日本のお笑い界に様々な「革命」をもたらしたと思うが、その1つに「浜田スタイル」と言っても過言ではない過激なツッコミがある。
ダウンタウンがもたらした新しさは、むしろボケ-ツッコミを必要以上にデフォルメする事による面白さである。そしてそれは最早新しさと言うよりは「定番」になりつつある。
浜田のツッコミはある種暴力的である。無駄にバイオレンス。
ケリを入れるのは当たり前、時に松本の鼻を摘んで左右にシェイクする。思い切り頬に平手を見舞う。ネクタイを引っ張って締める。やりたい放題である。その余りの突飛さに客は驚き松本も驚く。
それが新鮮な笑いを生む。そしてそれに影響を受けた若手芸人は多い。チュートリアルの福田も徳井の顔を思い切り平手打ちする。そして、ブラマヨも吉田が思い切り小杉の顔を張るのがお約束である。
興味深いのはブラマヨの場合、ボケがツッコミを張るという事だ。ここに「倒錯」の鍵がある。
ここでまず1つ指摘したいのは立ち位置である。
漫才におけるボケとツッコミの位置関係だ。
左に立つのは誰か。
ダウンタウンであれば松本人志であり、
やすきよであれば、横山やすしであり、
ツービートであればビートたけしであり、
フットボールアワーであれば岩尾望であり、
チュートリアルであれば徳井義実であり、
アンタッチャブルであれば山崎弘也である。
しかしブラックマヨネーズの場合左に立つのは(ツッコミの)小杉である。
左にはボケが立つ、というルールがある訳ではないのだろうし、実際ボケが右に立つコンビもブラマヨだけではない。しかしブラマヨの場合特別な意味がある様に思える。
「浜田スタイル」の蔓延に伴って漫才を見る客は
「右の人間が左の人間の頬をビンタする」
構図に慣れている。
そしてブラマヨの場合も立ち位置を逆にする事によってこの構図を守っているのだ。だから違和感が無い。
いや、違和感が無い理由はそれだけではない。そもそも吉田は本当にボケなのだろうか?
漫才の序盤、吉田の「でもなぁーー」からお約束のぼやきが始まり、小杉がツッコむというやりとりが続く。典型的なボケツッコミである。客はここで、吉田がボケで小杉がツッコミである事を確認しインプットする。
しかし、2人のテンションの上昇に伴い、よくよく聞くと吉田の口調は完全に「ツッコミ」のそれになっている。ブラマヨの漫才はWボケならぬ「Wツッコミ」なのだ。もうちょっと正確に言うと吉田のボケは「本人はツッコミになったつもり」という新しいボケなのである。メタ視点で初めてボケツッコミが成立しているという。だからこそ相手を「ビンタ」しても違和感が無いのである。客が序盤にインプットした「ボケ-ツッコミ」の認識がいつのまにか無意識のうちに揺さぶられているのだ。
JAZZ界の巨人マイルスデイビスは、晩年競演したプリンスについて
「本当の天才は才能をひけらかさないもんだ。プリンスはまさにそういう男だ。」
と評した。
ブラックマヨネーズの勝因は、客に「新しさ」を全く意識させなかった事にあると思う。
どうしても「斬新さ」を客に意識させてしまう笑い飯との差はそこにあった。
今年のM-1も明日に迫った。1年は早い。今年はどんな笑いが見られるのか、今から楽しみだ。

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官邸WEB+メルマガで7億超という話はやっぱりガセネタでした

前エントリー「首相官邸WEBサイト+メルマガで7億2千万はありえない」 の続き。
どうやら、結局これも「リテラシー」の問題でした、というオチみたい。
とりあえずWEBとメルマガだけで7億超云々の話はガセネタでFA。前エントリーに寄せられたコメントの幾つかを手がかりにいろいろ調べてみてそういう結論に至った。
まず、社民党でこの問題に注目したのは保坂展人議員らしい。氏のブログから、以下のエントリーを読むとその経緯が判る。
保坂展人のどこどこ日記 聖域なき「構造改革」の聖域は内閣・政府広報費
で、官邸サイト+メルマガで7億という話になったのは、内閣広報室がリリースした以下のPDFファイルがきっかけ。
→内閣広報室・政府広報室過去5年分の広報予算一覧表
このpdfファイル中の「官邸からの情報発信及び収集分析経費」の項に、確かに過去5年間いずれも7億超の額が記載されており、その備考欄に

官邸HP,メールマガジン等関係

という注釈がある。この備考欄の記述をもって「HPとメルマガに7億!」って話になった様だ。
しかし読んですぐお判りの様に、これはあくまで「官邸からの情報発信及び収集分析経費」の総額であって、備考欄の記述だけで断定するのは早計だ。内訳をちゃんと精査する必要がある。そしてその内訳は、WEB上に公開されている「内閣府 調達情報」から概ね把握できた。
保坂議員もこの情報までちゃんと辿りついている。保坂議員がエントリーからリンクしているのは平成18年度の調達情報。
→ 落札者等の公示(平成18年6月13日)
ちなみに前エントリーコメント欄で匿名の方がタレこんでくださったのは、これの平成17年度分。
→ 落札者等の公示(平成17年6月10日)
平成15,16年度についても「内閣府 調達情報」のページから探し当てる事ができる。まあどの年度も内容は大差無し。
平成18年度の落札者等公示情報から関係があると思われるものをざっくり集計すると以下の様になる。

内閣官房LAN関連 約2億4500万
WEBサイト関連 約2億1400万
メルマガ関連 約1億2000万
共同やロイター等各種配信ニュース購入費 約1億7000万
その他 約1億1500万

上記は、品目分類番号71,27,14,67のものをピックアップして集計したものだが、これだと全部で8億超になってしまうので、LAN関連のハード機器リース料(分類番号14)あたりはもしかすると別枠予算になっているのかもしれない。
いずれにしても、WEB関連で2億超、メルマガは約1億2千万という額。前回エントリーの乱暴な試算から見れば安いくらいだ。WEB関連もインフラ周りやセキュリティ監査等で1億8千万ほどになっており、それ以外の費用は約3000万超。前回の試算でも触れた通り、これもまあ妥当と思える線。
落札者公示情報だけですべてのコストを断定してしまうべきではないにしても、重要なのは社民党がここに挙げたのと同じソースを見て騒いでいる点だ。そういう意味では「読めてない」としか言い様が無い。
少なくともこれらの資料から読み取れる官邸WEB関連+メルマガ関連費用は3億超に過ぎず、これは比較的妥当性のある額だ。
そして7億超の額には、セキュリティ関連費用、WEBやメルマガ以外の各種システム費、が含まれていて、情報収集分析経費としては、各種ニュース通信社からのコンテンツ購入費が計上されているという点についてもほぼ確定と言っていいだろう。
今回の話は、
読めてない社民党=>その言い分をまんま記事にしちゃった毎日=>記事を鵜呑みにして脊椎反射したネット住人
と、様々なフェイズでリテラシーの欠如が露わになった興味深い事例という事で(苦笑)
自分ももっと早く気付くべきだったという自戒もこめて。
とりあえず貴重な情報をいろいろ提供してくれた前エントリーのコメンターの皆さんには感謝。


[追記]
まあそれはそれとして、保坂議員が政府に提出したと言う質問主意書に対してどんな回答がくるのかには興味はある。結局7億という数字だけが一人歩きするような報道の仕方をした毎日の方が問題なのかな。

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首相官邸WEBサイト+メルマガで7億2千万はありえない

社民党は個人的に大キライだけど、これに関してはしごく真っ当な批判なんじゃないかと思った。
過剰広報予算:小泉メルマガ、官邸HPに年間7億円超
もし自分が意見を求められたとしたらやはり「有り得ない」と答えると思う。
少なくとも、都知事の出張宿泊費が26万だったとかいうショボイ金額のツッコミよりは意義があるんじゃないか?
しかし、この額は妥当とR30氏が主張している。
[R30]: コンテンツ品質とIT活用のコストはタダではありません
これはWEB屋の端くれとして検証せずにはいられない。
ちなみに毎日の記事によれば、7億超というのは具体的には最少7億2055万~最大7億7543万円。
最小金額の7億2千万をベースに検証してみよう。
まず首相官邸WEBサイトを見てみる。
Microsoft Visioの自動サイトマップ生成機能を使って首相官邸サイトのページ数をざっと調べてみると概ね260ページ~270ページ。(注:ちょっとここは保留。一部数え漏れがあった一方で、同じドキュメントへのリンクもカウントされてたみたい。でもおそらく300ページ前後とは思う。ちなみに他ドメインのドキュメントはカウントしていない。)大規模サイトとは言えるが決して驚くようなページ数ではない。
しかも殆どのページが静的なHTMLなので、大規模なWEBアプリケーション開発も必要無い。
専用のCMSを構築している可能性も無い。もしそうなら初年度の開発費用が突出するはずだが実際には毎年7億以上かかっているのだ。
WEBサイト制作費の相場がどれくらいか、という点についてはMdNコーポレーションが発行しているWEB専門誌「WebCreators」を参考にしよう。
その2003年4月号に「WEBデザイン経済白書」という特集があった。今回批判の対象となっているのが2002年~2006年の経費だから、丁度いい。
その記事によればWEBサイトの平均受注金額は

  • 50万以下— 65%
  • 51~75万—14%
  • 76~100万—8%
  • 101~200万—8%
  • 201~500万—5%

500万以上については、グラフに項目すらない。これを見て判るように、皆が思ってるほど景気のいい業界ではない。
もちろん例外はある。制作費1億を超えているサイトだって実際にはある。しかしそういうサイトは総ページ数1000ページを超えてかつFlashでインタフェースをゴリゴリ作りこむ様なサイトだったり、大規模なDB連携WEBアプリケーション開発を伴うサイトであって、本当に特殊なケースだ。
首相官邸サイトについて言えば、どんなに多めに見積もっても初期制作費2000万、年間更新料を含めても3000万を超える事は無いんじゃないか、というのが一民間業者である私の率直な感想。
次にメルマガを見てみる。
こちらも出来る限り高めに見積もってみよう。
最も購読者が多かった時で227万人。227万人に週一回メール配信するだけの為に100台の専用サーバをデータセンターに配置し、100Mbpsの帯域保証回線を確保した場合を想定する。
まず、50万円あればDELLのハイエンドラックサーバを購入できる。100台を毎年新規購入したとして、年間5000万円。
ラックスペース使用料が1台月額2万円としても、月200万。年間で2400万円。100Mbps回線が月額300万として、年間3600万円。
サーバの保守費用が1台あたり年間60万円として、100台で年間6000万円。
ここまでの総額で1億7000万円。
メール配信するだけのアプリケーションであれば処理は超単純なのだが、ここも大盤振る舞いでアプリケーション開発費に1000万円。
次はメルマガのコンテンツに充てる費用。
小泉政権時代、首相官邸メールマガジンは基本的に以下のコンテンツで構成されていた。

  1. らいおんはーと ~ 小泉総理のメッセージ
  2. 大臣のほんねとーく
  3. 特別寄稿
  4. 小泉内閣の動き
  5. 数字でみる日本

このうち、「小泉内閣の動き」は官邸サイトへのリンクのみで構成されているので原稿料は発生しない。
それ以外のコンテンツ全てに原稿料が発生すると仮定する。
2003年6月19日発行のメルマガ第99号をサンプルとしてみると、原稿料が発生すると思われる部分の総文字数が約5300文字。ちなみにこれは編集後記まで含めている。400字詰め原稿用紙で正確には13枚とちょっと。ざっくり15枚分として計算しても原稿用紙1枚あたり原稿料20万円として、メルマガ1号あたり300万、年間約1億5000万。
さらに、メルマガ全体を企画・調整する専門のコーディネータに年間1億を払ったとして、全ての総額は4億3千万。首相官邸WEBサイトと合わせて4億6千万。
原稿料相場やコーディネータ周りの費用は専門外なので、このあたりは検証の余地があるとしてもこれだけジャブジャブに見積もっても4億6千万。
7億2千万には到底到達しないのだが、これは私の見積もりが間違ってるのだろうか?
間違っている、考慮漏れがある可能性も否定はできない。
いずれにしても、ITだって金がかかるんだから7億2千万は妥当、というだけじゃ余りに粗雑だ。個人的な感覚として7億2千万はありえない。正直、上記に示した見積もり額4億6千万だってムダだらけで高すぎるという感覚がある。
識者のご意見をぜひ伺いたいところだ。


[追記]
ディテールに対するツッコミ大歓迎。その為にわざわざ細かい試算を開陳したという意図もあり、議論が面白くなると思ってます。
コメント欄のIRさんのご指摘はもっともで、「首相官邸サイト」だからこそかかるコストというのは決して小さくないと思います。ただ、DDoS攻撃やセキュリティ強化に費やす額としていかほどが妥当かは検討する余地がありそう。メルマガが始まる以前の額との比較がポイントかもしれませんね。
あと、ブクマコメントでid:terazzoさんからも面白いご指摘。
DBに最もコストがかかっているというのは同意です。百歩譲って初年度7億超が妥当な額だとしても実務屋の感覚としては初期構築コストとランニングコストが同額というのは考えづらいですよね。一方、予算という観点で見れば毎年同額というのは通りやすい。そこのギャップを吸収して甘い汁を吸っている存在はあるはずで、そのあたり野党がツッコミを入れる意味はあると思ってます。
ちなみに私が購読した数十通のメールマガジンの中でも、早い時と遅い時で、1時間半の開きがありました。だから送信開始から完了まで30分以上かかっていても不思議はありません。
そもそもメルマガというのは何時に相手に到着しなければならないという縛りは基本的に無いはずで、年間わずか52回の発信の為に100MBpsの帯域保証回線を確保するのも十分過ぎるという感じがしてます。


[再追記]
毎日の記事によれば首相官邸WEB+メルマガという表現だったのでそれを信頼して書いたけど、本当に内閣府や国会TVなどのサイト運営コストは含んでいないのか、WEBの回線コストは他の政府系サイトと別にコストがかかっているのか、など不透明なところもある。あと、2002年以前のコストとの比較もすべきと思ったけど今のところソースが見つかってない。

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いろんな人の「最初にブックマークした記事」を調べてみた

はてなブックマークを使い出してから1年半以上が経過した。
1年半か。。。
そんな感慨に浸りつつ、何気なく自分の「最初のブクマ」を見てみたら、なんか意外だった。
自分の最初のブクマは2005年4月14日。
ITmedia エンタープライズ:はてな、住所登録の義務化撤回を決定 という記事だった。記憶が蘇る。この件について小倉先生の話題と絡めてエントリーを書こうと思ったけど結局ボツにしたんだった。
さらに、自分の「最初のコメント」が気になってまた調べる。
2005年5月1日。
テレビがネットを嫌う本当の理由
という記事に、
「けっこうツッコミどころがある気がする。後日反論したい。」
とコメントしていた。そーいやこれ、結局反論してなかったな。他のブログでいくつか反論記事が書かれて言いたいことが大方言われ尽くされちゃったんでモチベーションが下がったんだった。「ある気がする」なんて微妙に弱気(笑)。
初めて付けたタグはなんだっけ?また調べる。
WEFAIL のサイトに付けた
[Flash][Cool]
つーのが最初だったみたい。これ覚えてるけど、最初のタグだったとは意外。
こんな感じで自分のはてブ歴を調べてるうちに、いろんな人のを調べてみたくなったよ!
つーわけで調べたよ!ごめんなさいごめんなさい!先に謝っとく!
選んだ人はなんとなく調べてみたくなった人です。深い意味はないです。
あと、コメント初出とか、もしかすると見落としがあるかも。
敬称略しちゃったよ!それも謝っとく!


id:naoya

初めてのブックマーク 2005年2月10日
Bulkfeeds の Stats データについて: blog.bulknews.net
初めてのコメント 2005年02月21日
「mt-autolink プラグインの使い方。 」 at Movable Type で過去のエントリータイトルを自動的にリンクにする
初めてのタグ 2005年4月17日
[firefox] at Mozilla Firefox Extension @2ch
さすがに使い始めHAEEEEEE!当たり前だけど。最初の記事はBulknews。なんか納得。ちなみに梅田さんも最初のブクマはBulknews。はてなブックマーク日記によればタグ機能のリリースは2005年5月24日とのことなので過去に遡ってのタグ付けって事でしょうか。タグとコメントは後付けが可能なんで厳密に言えば「最初」じゃないのかもしれないけど、一応日付ベースでどんどんいきます。


id:FTTH

初めてのブックマーク 2005年10月22日
マーケットの馬車馬: 「靖国」カードが消える日
初めてのコメント 2005年10月22日
「外交はカードです。馬鹿にはそれが判らんのです。」
初めてのタグ 2005年10月22日
[靖国]
最初のブクマからコメント・タグ駆使してます。なんか普通の人っぽい!


id:REV

初めてのブックマーク 2005年6月8日
大変だ!ゆえゆえが土管に(ry
初めてのコメント 2005年6月8日
「ハピマテ繋がり。可愛い。」 同上
初めてのタグ 2005年6月9日

[(z)_ワナビ] at 某Aさんのエロゲークリエイター体験記
さすがに[カリカリモフモフ]じゃなかった。


id:finalvent

初めてのブックマーク 2005年2月13日
CNN.co.jp : バレンタインデーの「集団キス記録」に挑む、フィリピン ? – こぼれ話(dead link)
初めてのコメント 2005年2月22日
「鳥越説が顧みられるか。」 at 5世紀の大豪族・葛城氏の「王宮」か 奈良で巨大建物跡(dead link)
初めてのタグ 2005年2月16日
[hoge] at さかもと未明のアメーバ的告白(dead link)
2005年2月のブクマに[hoge]タグ付けてるのはこの方くらいじゃなかろうか!?
それにしても新聞社系のサイトってなんでどこも過去記事残さないんでしょうかね。
むしろ古い記事残した方がWEBの意味があると思うんだけど。dead linkばかりで切ないっす。


id:zonia

初めてのブックマーク 2005年9月5日
技術士(化学部門)CANのブログ:シュタイナーと科学
はじめてのコメント 2005年09月08日
「う、これは欲しいかも…。」 at ティームエンタテインメントから『イリスのアトリエ 2』ドラマCDシリーズが発売
はじめてのタグ 2005年9月5日
[ニセ科学] at (初ブクマ記事)
初ブクマでタグ使用。使い始めが比較的最近の方はやはり最初から馴染んでますね。


id:essa

初めてのブックマーク 2005年2月14日
■ [ニュース] 六曜、大安や友引は人権侵害?
はじめてのコメント 2005年2月28日
「ruby-electricはいい 」 at Emacs and Ruby | HyperionReactor
はじめてのタグ 2005年2月14日
[worldhacks] at (初ブクマ記事)
2005年2月の記事からちゃんと整理されたタグが付いてるのは特筆モノ。
私みたいに思いつきでテキトーに付けてると後で収拾がつかなくなります。


id:b4-tt

初めてのブックマーク 2005年4月1日
jkondoの日記 – あしかのあしあと
はじめてのコメント 2005年4月16日
「プロ市民 - かつどうほうこく」 at 世界の中心で左右をヲチするノケモノ – プロ市民の陰謀だモナ
はじめてのタグ 2005年6月3日
[情報漏洩] at 国際/モスクワで納税データ流出 930万人分のCD、電気街で5350円(dead link)
タグ付けを始める前までコメント率がすごく高かったんですね。
ブクマの使い方の変遷が見てとれて面白かったです。


id:kurimax

初めてのブックマーク 2005年2月13日
動物愛護読本 「犬を飼うってステキです-か?」
はじめてのコメント 2005年2月28日
「どんなんだろ 」 at 県が「出会い」メルマガ=独身男女に送信-少子化対策、新年度から・奈良(dead link)
はじめてのタグ 2005年4月26日
[記念][この人に歴史あり][なりきり] at ITmediaニュース:Opera CEO、大西洋横断のチャレンジ終了
使い始めが早いですねーでも全然変わってません(笑)。ちなみに[finalvent]タグ初出は2005年5月13日。


id:gotanda6

初めてのブックマーク 2005年2月11日
pêle-mêle – 職人は産業ロックを愛すのさ
はじめてのコメント 2005年2月24日
「↑今後、コメント欄こそが世界の中心と言うことで。」 at pele-mele – 法の完全実行 ~いまの社会は「ちょっとした悪事」に対して不寛容になりつつある
はじめてのタグ 2005年4月15日
[DISCO] at NYタイムズ捏造の構図(dead link)
こちらも2005年2月11日から。超早いっす。特筆すべきは、2005年2月の段階で「↑」を使ったコメント欄上のコミュニケーションを試みている点。ちょっと感動。


id:kanose

初めてのブックマーク 2005年4月29日
ARTIFACT@ハテナ系 – レスに関する考察
はじめてのコメント 2005年4月29日
「パソコン通信の時にそういう説明を見かけなかったのでずるずると…。」 同上
はじめてのタグ 2005年5月24日
[個人サイト] at オンラインコミュニケーションの耐え切れない薄さ :小林Scrap Book
使い始めが2005年4月末で意外と遅い。けど最初のブクマがセルクマですよ!コメントまでしてますよ!


番外編

id:dankogai

はじめてのタグ
[小飼弾][dankogai]
やっぱり!(笑)


他にも気になる人がたくさんいるんですけど、きりが無いのでこのへんで。
ちょっとした「プチタイムスリップ」感が実に面白かったっす。
皆さんは自分の初めての「ブクマ記事」「ブクマコメント」「タグ」覚えてますか?
調べてみると意外な発見があるかも。


[追記]
jazzanovaさんが「 大旦那の初ブクマ一覧」というエントリーで同様の試みをされていた様です。そちらも合わせて。

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社長、わが社の月給を50万から70万にUPしてください

社長、わが社の月給を50万から70万にUPしてください。
お願いします。
給料アップが社員にとって新たな労働意欲を高めるのです。
目先の人件費よりも、「給料の額に見合った仕事をしたい」という社員の思いが、会社の業績にも繋がるのです。
社員の生活を守ることは、経営者として当然の敬意です。
社員への敬意にふさわしい給料を支払うべきです。
若死にする社員もいます。50万だと、残された妻子が生きていくだけの貯蓄ができません。
給料というのは、社員の労働意欲を高めるものであり、遊興や娯楽の為にあるのではありません。「過剰な高給はむしろ社員を堕落させる」というのは、企業というものに対する無理解などゆえです。
他所の大企業には、70万もらってる人がザラにいます。同じ大企業として恥ずかしい。ウチの会社は社員を大事にしない野蛮な会社だと思われてしまいます。
それに、わが社の給料が今のままでもウチの製品の価格が下がるわけではありません。消費者にメリットはありません。
いくら会社全体が赤字だからといっても、給料は社員の生活の基盤です。会社の業績の為に社員が犠牲になってはいけません。
だから、わが社の給料を70万に上げてください。
参考リンク: http://thinkcopyright.org/reason.html


[追記]
こんな理由で給料がUPするならサラリーマンは誰も苦労しないよね、という事。念のため。