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手塚治虫の「全作品」が合法的に二次利用可能という画期的試みもスルーされまくりという日本の悲劇

手塚治虫のあらゆる創作物を、期間限定で合法的に二次利用可能とし、広く一般から作品を募るという超画期的な試みが「人知れず」行われている。
経済産業省の委託により、日本動画協会と映像産業振興機構が共同で立ち上げた「オープンポスト(OpenPost)」というコンテンツ投稿サイトプロジェクトだ。
この試みが本来社会に与えるべきインパクトのデカさが、世間に全くと言っていいほど伝わってない。
 ダウンロード違法化やダビング10といった問題も確かに重要だが、それよりもこの素晴らしい試みがいまだに殆ど認知されていないという状況の方が個人的に危機感を感じる。コンテンツは「生み出して」ナンボだ。コンテンツ立国を目指すならそこが肝にならなければおかしい。
なぜこれほど認知されていないかという原因は明白。
基本的な告知宣伝不足に加え、その内容が余りに「判りづらい」のだ。もうワザとやってるのかと思う位。
まずは、肝心の投稿サイト「OpenPost」TOPページを見てみる。
http://openpost.jp/
「みんなの投稿コミュニティサイト Open Post.JP」
ページタイトルからいきなり萎える。
何のサイトかさっぱり判らない。ページ全体を見ても、サイトディレクションが根本的にずれてる。手塚プロダクションがあらゆる手塚作品の著作権をオープンにしたのは、ど素人にアトムのイラストを描かせる為ではあるまい。
サイト制作サイドがこの企画の意義を理解できていないとしか思えない。
OpenPostの概要を知るには、むしろNHK解説委員室ブログの方が判りやすいので興味のある方はこちらを参照した方が良い。
さて、OpenPostがなぜ「超画期的」なのかというと、公表場所と期間が限定されているとは言え、「手塚治虫の全作品におけるキャラクター、ストーリー、ロゴデザイン、美術設定などを自由に二次利用できる」という点だ。鉄腕アトム限定とかブラックジャック限定ならそれほど驚かない。
ところが、本サイトを含め他の紹介記事や告知を見ても、実は「全作品OK」とは一言も書いていない
それどころか二次利用可能な素材は限定されていると誤解されかねない表現が多々ある。
例えば、サイト上の「作品投稿の流れ」という部分の第2項にこう記述されている。

「②素材データベースから素材をダウンロードして作品を投稿」

 これを読むと、素材データベースに提供されているもののみ利用可能なのかと思ってしまう。
そして募集要項第2項には

サイト内にて提供されたテーマ作家の作品(キャラクター、ストーリー、ロゴデザイン、美術デザインなど)を活用したオリジナルの動画映像、マンガ、イラスト、脚本(小説)、商業デザイン、キャラクターデザイン。

 
と明記してあって、これも一読するとサイト内の素材データベースから入手可能なものに限定されるのかとも読める。
しかし実際には、「サイト内にて提供された」は「作品」ではなく「テーマ作家」にかかっている様だ。
そもそも素材DBからは、ストーリーやロゴデザインデータが一切入手できない。また素材DBの説明文でも「参考資料に利用して」という記述があるし、何より素材DBに存在しないキャラクタやストーリーが普通に使用されている。
以上の点から事実上「全作品二次利用OK」と判断できる。
結局、最も重要な部分が全く明記されていない為に、結果としてユーザの混乱を招き投稿意欲を刺激できていない。これは宣伝告知上の致命的ミスだと思う。
現状ではこのサイトが盛り上がってるとはお世辞にも言いがたい。
しかしこの素晴らしい試みが惨憺たる状況のままで終わって欲しくない。うまくすると「良質な二次創作」がいかに「創造力と才能」を要求されるか、を世に知ってもらうチャンスでもある。
面白い「二次創作物」を創ることは、ある意味一次創作より難しい。
浦沢直樹の「PLUTO」のような大胆なリメイク作品を独自に創作してOpenPost上で発表する事も可能なのだ。とりあえずOpenPostが存続する3月末までに、そんな展開がこれから起こることを期待したい。