首相官邸WEBサイト+メルマガで7億2千万はありえない

社民党は個人的に大キライだけど、これに関してはしごく真っ当な批判なんじゃないかと思った。
過剰広報予算:小泉メルマガ、官邸HPに年間7億円超
もし自分が意見を求められたとしたらやはり「有り得ない」と答えると思う。
少なくとも、都知事の出張宿泊費が26万だったとかいうショボイ金額のツッコミよりは意義があるんじゃないか?
しかし、この額は妥当とR30氏が主張している。
[R30]: コンテンツ品質とIT活用のコストはタダではありません
これはWEB屋の端くれとして検証せずにはいられない。
ちなみに毎日の記事によれば、7億超というのは具体的には最少7億2055万~最大7億7543万円。
最小金額の7億2千万をベースに検証してみよう。
まず首相官邸WEBサイトを見てみる。
Microsoft Visioの自動サイトマップ生成機能を使って首相官邸サイトのページ数をざっと調べてみると概ね260ページ~270ページ。(注:ちょっとここは保留。一部数え漏れがあった一方で、同じドキュメントへのリンクもカウントされてたみたい。でもおそらく300ページ前後とは思う。ちなみに他ドメインのドキュメントはカウントしていない。)大規模サイトとは言えるが決して驚くようなページ数ではない。
しかも殆どのページが静的なHTMLなので、大規模なWEBアプリケーション開発も必要無い。
専用のCMSを構築している可能性も無い。もしそうなら初年度の開発費用が突出するはずだが実際には毎年7億以上かかっているのだ。
WEBサイト制作費の相場がどれくらいか、という点についてはMdNコーポレーションが発行しているWEB専門誌「WebCreators」を参考にしよう。
その2003年4月号に「WEBデザイン経済白書」という特集があった。今回批判の対象となっているのが2002年~2006年の経費だから、丁度いい。
その記事によればWEBサイトの平均受注金額は

  • 50万以下— 65%
  • 51~75万—14%
  • 76~100万—8%
  • 101~200万—8%
  • 201~500万—5%

500万以上については、グラフに項目すらない。これを見て判るように、皆が思ってるほど景気のいい業界ではない。
もちろん例外はある。制作費1億を超えているサイトだって実際にはある。しかしそういうサイトは総ページ数1000ページを超えてかつFlashでインタフェースをゴリゴリ作りこむ様なサイトだったり、大規模なDB連携WEBアプリケーション開発を伴うサイトであって、本当に特殊なケースだ。
首相官邸サイトについて言えば、どんなに多めに見積もっても初期制作費2000万、年間更新料を含めても3000万を超える事は無いんじゃないか、というのが一民間業者である私の率直な感想。
次にメルマガを見てみる。
こちらも出来る限り高めに見積もってみよう。
最も購読者が多かった時で227万人。227万人に週一回メール配信するだけの為に100台の専用サーバをデータセンターに配置し、100Mbpsの帯域保証回線を確保した場合を想定する。
まず、50万円あればDELLのハイエンドラックサーバを購入できる。100台を毎年新規購入したとして、年間5000万円。
ラックスペース使用料が1台月額2万円としても、月200万。年間で2400万円。100Mbps回線が月額300万として、年間3600万円。
サーバの保守費用が1台あたり年間60万円として、100台で年間6000万円。
ここまでの総額で1億7000万円。
メール配信するだけのアプリケーションであれば処理は超単純なのだが、ここも大盤振る舞いでアプリケーション開発費に1000万円。
次はメルマガのコンテンツに充てる費用。
小泉政権時代、首相官邸メールマガジンは基本的に以下のコンテンツで構成されていた。

  1. らいおんはーと ~ 小泉総理のメッセージ
  2. 大臣のほんねとーく
  3. 特別寄稿
  4. 小泉内閣の動き
  5. 数字でみる日本

このうち、「小泉内閣の動き」は官邸サイトへのリンクのみで構成されているので原稿料は発生しない。
それ以外のコンテンツ全てに原稿料が発生すると仮定する。
2003年6月19日発行のメルマガ第99号をサンプルとしてみると、原稿料が発生すると思われる部分の総文字数が約5300文字。ちなみにこれは編集後記まで含めている。400字詰め原稿用紙で正確には13枚とちょっと。ざっくり15枚分として計算しても原稿用紙1枚あたり原稿料20万円として、メルマガ1号あたり300万、年間約1億5000万。
さらに、メルマガ全体を企画・調整する専門のコーディネータに年間1億を払ったとして、全ての総額は4億3千万。首相官邸WEBサイトと合わせて4億6千万。
原稿料相場やコーディネータ周りの費用は専門外なので、このあたりは検証の余地があるとしてもこれだけジャブジャブに見積もっても4億6千万。
7億2千万には到底到達しないのだが、これは私の見積もりが間違ってるのだろうか?
間違っている、考慮漏れがある可能性も否定はできない。
いずれにしても、ITだって金がかかるんだから7億2千万は妥当、というだけじゃ余りに粗雑だ。個人的な感覚として7億2千万はありえない。正直、上記に示した見積もり額4億6千万だってムダだらけで高すぎるという感覚がある。
識者のご意見をぜひ伺いたいところだ。


[追記]
ディテールに対するツッコミ大歓迎。その為にわざわざ細かい試算を開陳したという意図もあり、議論が面白くなると思ってます。
コメント欄のIRさんのご指摘はもっともで、「首相官邸サイト」だからこそかかるコストというのは決して小さくないと思います。ただ、DDoS攻撃やセキュリティ強化に費やす額としていかほどが妥当かは検討する余地がありそう。メルマガが始まる以前の額との比較がポイントかもしれませんね。
あと、ブクマコメントでid:terazzoさんからも面白いご指摘。
DBに最もコストがかかっているというのは同意です。百歩譲って初年度7億超が妥当な額だとしても実務屋の感覚としては初期構築コストとランニングコストが同額というのは考えづらいですよね。一方、予算という観点で見れば毎年同額というのは通りやすい。そこのギャップを吸収して甘い汁を吸っている存在はあるはずで、そのあたり野党がツッコミを入れる意味はあると思ってます。
ちなみに私が購読した数十通のメールマガジンの中でも、早い時と遅い時で、1時間半の開きがありました。だから送信開始から完了まで30分以上かかっていても不思議はありません。
そもそもメルマガというのは何時に相手に到着しなければならないという縛りは基本的に無いはずで、年間わずか52回の発信の為に100MBpsの帯域保証回線を確保するのも十分過ぎるという感じがしてます。


[再追記]
毎日の記事によれば首相官邸WEB+メルマガという表現だったのでそれを信頼して書いたけど、本当に内閣府や国会TVなどのサイト運営コストは含んでいないのか、WEBの回線コストは他の政府系サイトと別にコストがかかっているのか、など不透明なところもある。あと、2002年以前のコストとの比較もすべきと思ったけど今のところソースが見つかってない。

いろんな人の「最初にブックマークした記事」を調べてみた

はてなブックマークを使い出してから1年半以上が経過した。
1年半か。。。
そんな感慨に浸りつつ、何気なく自分の「最初のブクマ」を見てみたら、なんか意外だった。
自分の最初のブクマは2005年4月14日。
ITmedia エンタープライズ:はてな、住所登録の義務化撤回を決定 という記事だった。記憶が蘇る。この件について小倉先生の話題と絡めてエントリーを書こうと思ったけど結局ボツにしたんだった。
さらに、自分の「最初のコメント」が気になってまた調べる。
2005年5月1日。
テレビがネットを嫌う本当の理由
という記事に、
「けっこうツッコミどころがある気がする。後日反論したい。」
とコメントしていた。そーいやこれ、結局反論してなかったな。他のブログでいくつか反論記事が書かれて言いたいことが大方言われ尽くされちゃったんでモチベーションが下がったんだった。「ある気がする」なんて微妙に弱気(笑)。
初めて付けたタグはなんだっけ?また調べる。
WEFAIL のサイトに付けた
[Flash][Cool]
つーのが最初だったみたい。これ覚えてるけど、最初のタグだったとは意外。
こんな感じで自分のはてブ歴を調べてるうちに、いろんな人のを調べてみたくなったよ!
つーわけで調べたよ!ごめんなさいごめんなさい!先に謝っとく!
選んだ人はなんとなく調べてみたくなった人です。深い意味はないです。
あと、コメント初出とか、もしかすると見落としがあるかも。
敬称略しちゃったよ!それも謝っとく!


id:naoya

初めてのブックマーク 2005年2月10日
Bulkfeeds の Stats データについて: blog.bulknews.net
初めてのコメント 2005年02月21日
「mt-autolink プラグインの使い方。 」 at Movable Type で過去のエントリータイトルを自動的にリンクにする
初めてのタグ 2005年4月17日
[firefox] at Mozilla Firefox Extension @2ch
さすがに使い始めHAEEEEEE!当たり前だけど。最初の記事はBulknews。なんか納得。ちなみに梅田さんも最初のブクマはBulknews。はてなブックマーク日記によればタグ機能のリリースは2005年5月24日とのことなので過去に遡ってのタグ付けって事でしょうか。タグとコメントは後付けが可能なんで厳密に言えば「最初」じゃないのかもしれないけど、一応日付ベースでどんどんいきます。


id:FTTH

初めてのブックマーク 2005年10月22日
マーケットの馬車馬: 「靖国」カードが消える日
初めてのコメント 2005年10月22日
「外交はカードです。馬鹿にはそれが判らんのです。」
初めてのタグ 2005年10月22日
[靖国]
最初のブクマからコメント・タグ駆使してます。なんか普通の人っぽい!


id:REV

初めてのブックマーク 2005年6月8日
大変だ!ゆえゆえが土管に(ry
初めてのコメント 2005年6月8日
「ハピマテ繋がり。可愛い。」 同上
初めてのタグ 2005年6月9日

[(z)_ワナビ] at 某Aさんのエロゲークリエイター体験記
さすがに[カリカリモフモフ]じゃなかった。


id:finalvent

初めてのブックマーク 2005年2月13日
CNN.co.jp : バレンタインデーの「集団キス記録」に挑む、フィリピン ? – こぼれ話(dead link)
初めてのコメント 2005年2月22日
「鳥越説が顧みられるか。」 at 5世紀の大豪族・葛城氏の「王宮」か 奈良で巨大建物跡(dead link)
初めてのタグ 2005年2月16日
[hoge] at さかもと未明のアメーバ的告白(dead link)
2005年2月のブクマに[hoge]タグ付けてるのはこの方くらいじゃなかろうか!?
それにしても新聞社系のサイトってなんでどこも過去記事残さないんでしょうかね。
むしろ古い記事残した方がWEBの意味があると思うんだけど。dead linkばかりで切ないっす。


id:zonia

初めてのブックマーク 2005年9月5日
技術士(化学部門)CANのブログ:シュタイナーと科学
はじめてのコメント 2005年09月08日
「う、これは欲しいかも…。」 at ティームエンタテインメントから『イリスのアトリエ 2』ドラマCDシリーズが発売
はじめてのタグ 2005年9月5日
[ニセ科学] at (初ブクマ記事)
初ブクマでタグ使用。使い始めが比較的最近の方はやはり最初から馴染んでますね。


id:essa

初めてのブックマーク 2005年2月14日
■ [ニュース] 六曜、大安や友引は人権侵害?
はじめてのコメント 2005年2月28日
「ruby-electricはいい 」 at Emacs and Ruby | HyperionReactor
はじめてのタグ 2005年2月14日
[worldhacks] at (初ブクマ記事)
2005年2月の記事からちゃんと整理されたタグが付いてるのは特筆モノ。
私みたいに思いつきでテキトーに付けてると後で収拾がつかなくなります。


id:b4-tt

初めてのブックマーク 2005年4月1日
jkondoの日記 – あしかのあしあと
はじめてのコメント 2005年4月16日
「プロ市民 - かつどうほうこく」 at 世界の中心で左右をヲチするノケモノ – プロ市民の陰謀だモナ
はじめてのタグ 2005年6月3日
[情報漏洩] at 国際/モスクワで納税データ流出 930万人分のCD、電気街で5350円(dead link)
タグ付けを始める前までコメント率がすごく高かったんですね。
ブクマの使い方の変遷が見てとれて面白かったです。


id:kurimax

初めてのブックマーク 2005年2月13日
動物愛護読本 「犬を飼うってステキです-か?」
はじめてのコメント 2005年2月28日
「どんなんだろ 」 at 県が「出会い」メルマガ=独身男女に送信-少子化対策、新年度から・奈良(dead link)
はじめてのタグ 2005年4月26日
[記念][この人に歴史あり][なりきり] at ITmediaニュース:Opera CEO、大西洋横断のチャレンジ終了
使い始めが早いですねーでも全然変わってません(笑)。ちなみに[finalvent]タグ初出は2005年5月13日。


id:gotanda6

初めてのブックマーク 2005年2月11日
pêle-mêle – 職人は産業ロックを愛すのさ
はじめてのコメント 2005年2月24日
「↑今後、コメント欄こそが世界の中心と言うことで。」 at pele-mele – 法の完全実行 ~いまの社会は「ちょっとした悪事」に対して不寛容になりつつある
はじめてのタグ 2005年4月15日
[DISCO] at NYタイムズ捏造の構図(dead link)
こちらも2005年2月11日から。超早いっす。特筆すべきは、2005年2月の段階で「↑」を使ったコメント欄上のコミュニケーションを試みている点。ちょっと感動。


id:kanose

初めてのブックマーク 2005年4月29日
ARTIFACT@ハテナ系 – レスに関する考察
はじめてのコメント 2005年4月29日
「パソコン通信の時にそういう説明を見かけなかったのでずるずると…。」 同上
はじめてのタグ 2005年5月24日
[個人サイト] at オンラインコミュニケーションの耐え切れない薄さ :小林Scrap Book
使い始めが2005年4月末で意外と遅い。けど最初のブクマがセルクマですよ!コメントまでしてますよ!


番外編

id:dankogai

はじめてのタグ
[小飼弾][dankogai]
やっぱり!(笑)


他にも気になる人がたくさんいるんですけど、きりが無いのでこのへんで。
ちょっとした「プチタイムスリップ」感が実に面白かったっす。
皆さんは自分の初めての「ブクマ記事」「ブクマコメント」「タグ」覚えてますか?
調べてみると意外な発見があるかも。


[追記]
jazzanovaさんが「 大旦那の初ブクマ一覧」というエントリーで同様の試みをされていた様です。そちらも合わせて。

ised倫理研第7回議事録を読み解く(前編)

ised倫理研第7回の議事録が3月29日にようやく公開された。
議事録を読んだ感想から言うと、「めちゃめちゃ面白かった」の一言に尽きる。
isedの議論の中でも特に盛り上った部類に入るんじゃないかなあ。少なくともオグリンウォッチャーとしては実に興味深い内容だった。
「共通ID小倉案」としてこれほど詳細に纏まっているテキストもこれが初めてだろうし、それに対する代表的な反論の数々もこの議論の中に凝縮されている。加えて、これまでの小倉先生には見られなかった注目発言も幾つか見られた。
正直中身が濃厚過ぎて(笑)この議論を整理するのは少々荷が重いのだが、なんとか私なりのレベルでこの興味深い議論を読み解いていこうと思う。長文になりそうな予感。

小倉式共通IDの概要

議事録の冒頭は、小倉先生の講演から始まる。ここでは「小倉式共通ID」案の概要が語られている。今回のised議事録を元に、あらためて箇条書きで整理してみよう。

  • 「表現の匿名性」は、現状の日本のネット社会においては議論を活性化するどころか、むしろ阻害要因(いわゆる祭、コメントスクラム等)になっている。
  • 言論の自由市場を本当に活性化するには、匿名性の保障の程度を低くするしかない
  • その具体的な方策として、プロバイダ責任制限法第3条を改正する。すなわち、プロバイダがユーザの戸籍上の名称や住民票の住所を正しく把握している場合に限り、プロバイダがユーザの違法行為から
    免責される事とする。
  • しかし、ユーザの個人情報を取得・保有するのはコストがかなりかかる。ISPならまだしも、これを個々の掲示板管理者に求めるのは現実的ではない。(小倉先生はこの部分を指して「個別ID制度」と呼んでいる)
  • そこで、この高コストな部分(個人情報を登録して保管するといった業務)をアウトソースできる仕組み、すなわちその業務を専門的に行う民間業者に委託する。その専門業者が発行するIDが小倉先生言うところの「共通ID」。

以上が、共通ID案概要。

小倉先生注目発言

さて次に、議事録上で個人的に特に注目した小倉先生の発言をピックアップしてみる。

ここで重要なのは、このIT革命がもたらした言論の自由市場への参入可能性の拡大、いいかえれば参入障壁の崩壊は、法がもともと持っていた「表現の自由」の問題と直接の関係を持たないということです。

小倉先生が過去に「参入障壁」という言葉を用いたのは、ちょっと記憶がない。これは後ほど、「共通ID」の実現可能性を考察する上でキーワードになる。その点については後述。

さらにこうした情報は個人情報保護法上の個人情報にあたりますから、これを取得・保有するためにはコストはかなりかかってしまう。ISPならまだしも、これを個々の掲示板管理者に求めるのは無理があるでしょう。つまり個別ID制度は現実的ではない。

「個別ID制度」自体小倉先生の言葉で詳細に語られる事は今まで殆どなかったと思う。今回の議事録では、小倉先生の言う「個別ID制度」が何を指しているかが判る。しかも、「高コストで現実的でない」とまで言っているのは小倉先生なりのブラッシュアップの成果なのか。

 ただ課題として、開示請求者の権利を侵害しているとまでは言えない場合にも、個人情報の開示を認めるべきかどうかについては、私としても迷っている部分がないわけではありません。たしかに他人を批判する以上、「批判が的外れだった場合には恥を書く」という程度の責任は負って然るべきとは思います。しかしだからといって、他人を批判したとき、必ずその相手から氏名住所の開示請求を受けたら、開示するような制度にすべきだろうか。そこは考える余地があると思います。

ここはまさに、「えーーーーー!?」って気分(笑)。議事録一番のサプライズ。そこが小倉案を批判している最大の理由の一つなのに。小倉さんが「考える余地がある」と言ってる点に、「いや、そこ普通にNGでしょ」とツッコミいれてる訳だから、議論の余地はあるでしょう。小倉さん「でさえ」迷ってるんだったら、そこにフォーカスした批判には耳を傾けてくださいよ。たのんますよ。

 ともあれこの共通ID制度が実現すれば、ファイルローグのようなP2P型のサービスもできるようになる可能性があります。これまでは利用者の住所氏名といった個人情報を集められなかったので、違法な行為に使われるのを止めることができませんでした。しかしこの共通ID制度が実現すれば、違法な利用者に簡単にアクセスすることができるようになります。

今までピンとこなくて気付かなかったのだが、今回の議事録読んでて痛感したのは、小倉さんの「共通ID」構想の原点には「ファイルローグ事件」があるという事。第三者から見ると唐突な感が否めないが小倉さんの中では繋がっている。で、そこに気が付くと、小倉さんの思考プロセスが見えてきて興味深い。

あらためて共通ID構想へのカウンター

1.「コメント欄閉鎖」で十分では?

議事録より引用。

小倉:
 ブログのコメントスクラムと掲示板の炎上の違いについて、以前感覚的に述べたことがあります*1。コメントスクラムというのは、自分の家の前でギャーギャーやられているような感覚があるんですね。自分の家の前で毎日抗議にきたり、ビラをまいたりする人たちに対して、やめろと言うのは当然の権利ではないかと思います。

高木:
 それについては、単純にコメント欄無しのブログにすればいいのではないですか。ただ途中でポリシーを変えると「コメント閉じやがった」と言われてしまうので、最初からコメント欄を設けないようにすればいいのではないか。

「言論の自由」という切り口で見れば、コメント欄を閉鎖してもブログ主の言論の自由が損なわれる事はない。家の前でのビラ撒きに例えるなら、それこそコメント欄閉鎖で完全にシャットアウトできる。
私自身何度か小倉先生のブログで同じ質問したが、その時もこの議事録でも明確な反論は無い。というか、一部で「コメント欄閉鎖は恥ずかしい」みたいな風潮が蔓延している事こそが問題で、もっと積極的にブログ運営スキルとしての「コメント欄閉鎖」を啓蒙する事の方がコメントスクラム防止に有効な方策と思うのだが。
いずれにしろ、議事録でも指摘がある様に「コメントスクラム」を「法改正」の論拠にするのはかなり説得力が弱い。

2.インターネットに「地理的制限」が通用するか?

東氏が共同討議の冒頭で議論を整理した際の発言。

小倉さんの提案は、その指摘のうえでいえば、サイバースベースを再び地理的空間に結びつけよういうものです。

インターネットとは、言うまでも無く「地理的制限」を超えたところに価値があり、だからこそ発展してきた。そういう観点からあらためて共通ID構想を見た時に、本当にその試みが機能するのかという単純な疑問が沸く。
「海外のBlogサービス使えば、プロバイダ責任制限法は適用できない」というのも、前々からある共通ID構想への反論として代表的なもの。例えばアメリカのTypepad.comでブログを開設し、そこでの発言が問題になっても、日本のプロバイダ責任制限法は適用できないだろう。結局、仮にプロバイダ責任制限法が改正されたとしても、それは単に大量のブログユーザが海外のブログサービスに流出するのを促すだけになりはしないか。

3.全てのブログサービス事業者は法改正に反対する

kanose氏の重要な指摘。

加野瀬:
 ネットサービスというのは、基本的にユーザーを増やしたがるものです。しかし共通IDというのは、ユーザーを増やさない方向に行くシステムのような気がします。それを導入するメリットはなにかあるんでしょうか。

そもそも、ブログサービスは現状でもさほどおいしいビジネスではない。そしてブログに限らず「出来るだけ大勢のユーザを囲い込む」のが今のWEBビジネスの大前提だ。広告価値を高めるにもアフィリエイト数を増やすにも「多大なアクセス数」が収益のポイントになる。mixiの場合だと100万ユーザ突破時でさえまだ大赤字だった。加野瀬氏の指摘はその点を突いたものだ。
そこで、前段で引用した小倉先生の「参入障壁」発言である。小倉さんは「参入障壁の崩壊」を問題視している。平たく言うと、「誰でも簡単に参入できるから質が低下する」というわけ。これは言論の質だけを問題にすれば確かに一理ある。
しかし参入障壁を再び高めるというのは、つまるところ参入者数の減少を意味する。言い換えれば市場規模の縮小
共通ID導入によって、事業者にとってはただでさえランニングコストが増加するというのに、それがもたらすものは市場規模の縮小。新しいユーザ層を開拓できるとか、何かプラスの効果があるのなら検討の余地もあるだろう。しかし共通ID構想はサービス事業者には何一つ良い事が無い。こんな法改正に事業者がYesと言う訳が無い。
すべてのブログサービス事業者はこの小倉案の法改正には反対するだろう。
法改正を前提にすれば、共通ID導入のインセンティブが働く可能性も無くはないが、その法改正自体が果たして実現するのか大いに疑問だ。
つーかまだまだ終わりそうもないのでw続きは次エントリーで。

ソーシャルブックマークでは見つけられない価値-「ササイのことで」

「高木敏光」という素晴らしいWEBクリエイターがいる。(高木浩光氏じゃないよ)
高木氏の名を轟かせたのは、最近ではやはり「CRIMSON ROOM」だろう。
”閉じ込められた部屋から脱出する”という判りやすいシンプルな設定と、Flashで緻密に作り込まれた独特の世界観が大きな反響を呼び、WEBゲームの新機軸を打ち出した。
「CRIMSON ROOM」は発表後1年半で5000万アクセスを超えるビッグヒットとなりその系譜を受け継ぐ「脱出モノ」シリーズは、昨年12月に発表された「WHITE CHAMBER」を含め、4作品が発表されている。
FASCO-CSのサイトから、現在4作品全てアクセスできる。興味のある方は是非トライしてみて欲しい。ハマりすぎて寝不足にならない様に。マジ危険なのでw。
そんな高木氏が、ご自身のブログで壮大な物語を黙々と紡いでいる。
「ササイのことで」
これがまたハマる。今日現在、「ササイのことで」関連エントリーは56。しかも1つ1つのテキスト量が多いので、これを通しで読むのはかなりのエネルギーを要する。読むのでさえ大変なのだから、これを書き続けるエネルギーは想像を絶する。そこには、何か特別な「想い」がある。
幸い、最初から49エントリー目までがPDFファイルに纏められ、通読出来る様になった。
PDF【ササイのことで】
正直、「これはブログなのか?」と思う。「ササイのことで」は、どのPermalinkを拾ってみても壮大な物語の断片でしかない。思えば、ブログの普及(がもたらしたPermalinkの世界観)や、それを前提としたソーシャルブックマークが生み出してきたものは「読み切り」の世界。ネットに存在するあまりに膨大な情報量故に、ネットユーザー達はいつの間にか、あちこちの情報を刹那的に拾い読む習性が身についてしまった。
はてなブックマークやdel.icio.usを探索しても見つけられない「価値」がある。それはある意味、新聞や雑誌の連載小説のようでいて、しかし一方でそれらはブログの1エントリーとして関連性の無いエントリーと混在し、物語の断片1つ1つに読者からのコメントがつく。そこには、他のブログでは味わえない奇妙な時間軸が流れている事に気づく。
余談だが、高木氏とある仕事で関わりを持つ事となった。尊敬する高木氏と関わりを持てる事を「運命」に感謝したい。3月頃には新たな展開があるかもしれない。私が実名を晒す事になるかもしれない。
先の事はまだ不透明で何とも言えないが、1つだけ確実なのは、2~3月は、また超絶多忙な日々になる事。
そんなわけで、また更新が途切れがちになるかもしれませんが、ご了承ください。


P.S. 日々コメントを寄せてくださる皆様、レスできなくて大変申し訳ありません。なかなか時間が取れなくて、エントリー書きを優先してしまっていますが、出来ればいつかまとめてレスしたいとは思ってます。

「テレフォンショッキング」に見る日本人気質

「笑っていいとも」の看板コーナー「テレフォンショッキング」は、コーナー単体でも20年以上の歴史がある。
このコーナーの進行は何度かマイナーチェンジしているが、何しろ20年以上という年月を経てのものだから、現在のスタイルになってからも既に数年が経つだろう。
現在では、寄贈された花や電報の紹介、ゲストとタモリのトークの後、100人に一人を目指す100分の1アンケート、最後にお友達紹介、と続く流れになっている。
そして、長い年月の中で観覧客のリアクションがパターン化していき、そのうちの幾つかは暗黙の「お約束」として不文律が形成されていく。
その1つに、
「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」
がある。
コーナーの終盤、タモリが「それではお友達を…」と切り出したタイミングで、観覧客が一斉に
「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」
と、ゲストへ惜別の意を表す。
これが観覧客の儀式として定着している。儀式であるから、たとえゲストが知らない人間でもトークがイマイチ盛り上らなくても、それは関係無い。最早この儀式は観客としての1つの「マナー」なのだ。
ところが、この儀式がたまに行われない事がある
その日の客がたまたまこの「お約束」を知らなかったのだろうか? そうではない。
ゲストに人気が無かったのか? これも違う。
ごく稀に前半のトークで客をどん引きさせてしまいこのような事態に陥ってしまうゲストも皆無ではないが、ほとんどの場合そうではない。
では、何故なのか。
それは「間」である。タモリと観客との呼吸の問題なのだ。
「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」
には、それにふさわしい絶妙の「間」がある。その「間」を外してしまった時、観客は硬直し声を失う。
このような機微は、日本人特有のものなんじゃないかと思う。
根拠も無く言い放ってしまうが、これが欧米人であれば「このひと人気ないのね」という理由以外想像できないに違いない。
実際、この
「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」
が無い回のパターンで多いのが、直前の100分の1アンケートで見事1名に該当するアンケートで携帯ストラップをゲットした時である。祝福の歓声と拍手が鳴り止まないうちにタモリが「それではお友達を…」と切り出してしまいタモリの発言が聞こえ辛い状況に加え、客側の心の準備が出来ていないのとで、タイミングを失うパターン。このパターンを何度も目撃した。
遅れてからでも「えええー」と言えばいいのに、観客はそうしない。
間を外してしまった時点で、失敗なのだ。美しくないのだ。ああ、日本人というのはなんとデリケートな人種だろう。
思えば、
「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」
という儀式自体、欧米人には理解し難いものかもしれない。日本人は「暗黙のお約束」が大好きだ。
コミュニケーションが不得手な日本人は、「お約束」の共有で意思の疎通を実感する。「みんなと一緒の行動」が楽しくて仕方がないのだ。自分が「いいとも」の観覧席に居たとしても、嬉々として儀式に参加しているだろう。
実際には
「工エエェェ(´∀`)ェェエエ工」
とこんな感じで、半笑いだろう。だって楽しそうだもん。
お約束であるはずの儀式がスルーされてしまった時、多分ゲストの方も地味にショックなんだと思う。でも、ゲストは平静を装う。タモリも、何事も無かったかのように振舞う。
素敵だ。これも日本的美意識だ。あらためて客に催促するなんて無粋で出来ない。楽屋に戻ってからヘコめば良いのだ。
「テレホンショッキング」には「日本人の機微」が詰まっている。

前原誠司という男

前原誠司が民主党代表に選出された。
「解党的出直し」を求められる代表選挙でその結論が「管直人」だったならお笑いネタにしかならなかったわけで、とりあえずこの結果は歓迎されて良いだろう。
早速今日(9/18)朝のフジテレビ『報道2001』に前原新代表が出演していた。
番組の印象含め、とりあえず現段階で私の目から見た「前原誠司」という政治家の人間像についてちょっと語ってみたいと思う。
まずは、前原氏のWEBサイトからプロフィールを見てみよう。

昭和37年 4月
 京都市左京区に生まれる(1962年4月30日生)
 昭和44年 4月
 京都市立修学院小学校入学
 昭和50年 4月
 京都教育大学教育学部附属京都中学校入学
 昭和53年 4月
 京都教育大学教育学部附属高等学校入学
 昭和57年 4月
 京都大学法学部入学、国際政治学(高坂正堯ゼミ)を専攻
 昭和62年 4月
 (財)松下政経塾入塾 第8期生
 平成 3年 4月
 京都府議会議員選挙(左京区選出)において府議会史上最年少の28歳で初当選
 平成 5年 7月
 第40回衆議院議員総選挙において初当選(旧京都1区選出)
 平成 8年 10月
 第41回衆議院議員総選挙において2期目の当選
 平成 12年 6月
 第42回衆議院議員総選挙において3期目の当選(京都2区選出)
 平成 15年 11月
 第43回衆議院議員総選挙において4期目の当選(京都2区選出)
 平成 17年 9月
 第44回衆議院議員総選挙において5期目の当選(京都2区選出)

ここで特筆すべきは、京都大学で高坂ゼミ門下である事だろう。
松下政経塾出身だとは知っていたが高坂ゼミ出身とは知らなかった。高坂正堯と言えば、晩年はサンデープロジェクトのコメンテーターとして茶の間にも親しまれた、現実主義的政治外交論の巨匠である。「報道2001」の番組中も何度か高坂氏の名前を出していたし、彼の政治思想の基礎は高坂ゼミで築かれたたのだろう。親中派の多い民主党の中ではユニークな存在と言える。このあたりはわりと好感が持てるし、学生時代の経歴としてはおそらく最高レベルだ。
1993年7月に新党ブームの追い風に乗って日本新党から初当選。
で、面白かったのが、1995年にフジ「報道2001」番組上で行われた一回生議員9人によるディベート大会で安倍晋三らを抑えて優勝したというエピソード。この話も今日の報道2001で紹介されて当時のVTRもチラっと放送されたのだが、他にも高市早苗や松沢しげふみの姿もあって、錚々たるメンバーだった。どうやら弁が立つという意味でも最上位クラスらしい。
実際、今日の「報道2001」番組中の受け答えもほぼ完璧という印象だった。
頭の回転も速いし、ソツがない。落ち着きもある。岡田克也あたりと比べちゃうと格が違うという感じだった。
しかし、どうも好きになれない。
一言で言うと、橋本龍太郎を見ている感じなのだ。エリートで政策通、論理的でなめらかな弁舌。そこそこ良いルックス。で、それらの要素から醸し出される自信過剰な感じと、親しみにくさ。
まずお笑いネタにはなりにくい。その点だけは管直人の足元にも及ばない感じだw。
まさに橋本龍太郎タイプ。
節操の無さも気になる。電脳補完録 によれば、前原誠司は拉致議連と日朝友好議連の両方に所属している。
この組み合わせは普通に考えればありえないだろう。それぞれでちゃんと活動しようとすれば確実に自己矛盾に陥る。選挙用のポーズなのか日和見主義者か。謎である。
2ちゃんねるでは、府議会時代の「同和推進副委員長」という経歴がオフィシャルサイトのプロフィールから突然削除されたという事で昨日から話題になっていた(関連記事)。スクリーンショットを見る限りガセではないっぽい。経歴そのものよりも「削除した」事の方が気になる。
この削除が「ネット対策」の一環だとすると、「ソツがない」にも程がある。府議会時代のこの程度の役職で神経質になるのは、むしろ逆効果だと思うのだが。こんな細かいとこにまで気がまわっちゃうところが逆に危うい。やましい事があるのかとかえって疑われるでしょうに。それとも、前述した「節操の無さ」となんか関係があるのだろうか?
それから、JSFさんの記事(&コメント欄)で知ったのだが、前原は軍事マニアかつ鉄道マニアで、前防衛庁長官の石破茂氏と意気投合だったらしいw。
こういう一面をどんどん強調していけば「親しみやすさ」もいくらかアップするかもしれない。
そういえば、前原と石破で検索してて、こんな議事録を見つけたのだけど、このやりとりも2人でニヤニヤしながらしてたのか。ちょっと笑えるw。
「好きになれない」とは書いたものの、現在の民主党においては最上位の人材である事は確かだろうし、党首討論などでは小泉がタジタジになる場面も多くなりそうだ。
ある程度固定ファンも増えそうだし、自民党が自滅すれば、風を掴むくらいのポテンシャルは秘めているだろう。
謎めいた部分もあるし、ネットでもはっきりとした評価は留保してその言動を見守ってる人が多い感じがする。それにしても、基本的にリアリストである筈の前原が、どういう理由で「外国人参政権に賛成」しているのかはぜひ聞いてみたいものだ。

「のまネコ騒動」を正しく理解する

9月1日にエイベックスが「のまネコキャラクターグッズ」販売を開始した事に端を発する「のまネコ騒動」はまだ収束する気配がない。(ご存知無い方は こちらの記事を参照)
この件に関してエイベックスの対応に非があった事は明らかで、怒りの世論が巻き起こるのも当然ではある。しかし一方でその問題点が整理できていない為に、ただ単に怒りを撒き散らしている論調が多いのは残念だ。
このエントリーでは、まず判断根拠となる法的解釈を整理した上で、この騒動の問題点について検証してみようと思う。

キャラクターとはそもそも著作物か?

この根本的なところがいきなりグレーゾーンだ。
まずは著作権法から「著作物」の定義を見てみよう。

1.著作物
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

この条文を読む限り、キャラクター単体では「思想又は感情を創作的に表現したもの」というのは微妙なものがあるし、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」というのもこれまた微妙だ。
では世に言う「キャラクタービジネス」において、キャラクターの著作権保護はどういう理屈で構成されているか。
CharaBiz.comというサイトの「基礎知識」コーナーの記述が参考になる。以下抜粋。

日本で使われている「キャラクター」の意味を簡単に説明すると、
一般的にはコミックやTVアニメーション、映画など著作物に登場する人やロボット、擬
人化された生き物などの総称として使われています。

つまり、アニメや映画など、まずベースになる著作物があって、その構成要素として派生的に登場キャラクターも著作権保護の対象になるという解釈であり、藤崎詩織事件などの判例を見てもそのような解釈がなされているようだ。実際、ミッキーマウス、ポケモン、アンパンマンなど、キャラクタービジネスとして成功したものは、その殆どにベースとなる「著作物」がある。
逆に言うと、そういった「著作物」の構成要素としての拠り所を持たない「図柄だけの」キャラクターが著作権の名の下に守られる可能性はあまり高くない。とりあえずそのような「図柄だけの」キャラクターが著作物か否かの判断が下された判例はまだ多分無いはずだ。
では、「キャラクター単体」の権利は通常どのようにして守られるか。
その拠り所として「商標登録」がある。例えばサンリオのキャラクタ群などはあらゆる分野において商標登録でガチガチに守られている。
以上の点を鑑みると、モナーやおにぎりが「著作物」として認められるかどうかは極めて微妙だ。そういう意味で「モナーなどのAAは商標登録しておくべき」という意見が、ある程度有効な方策である事がお判りいただけると思う。
ちなみに「のまネコ」も登録商標検索で確認した限りでは、未だ商標登録されていない様である。
[2005/9/29追記]
「のまネコ」及び「米酒」が有限会社ゼンによって商標登録出願されているのを確認。
なぜかキャラクターの図柄は「米酒」の方で出願されている模様。これはおそらく「のまネコ」と「米酒」はキャラクタ設定にとって不可分なものという事を明確にしたかったものと思われます。モナーとの明確な差別化を図ろうというエイベックスの意図は汲み取れる気がします。

AAはパブリックドメインか

AAが(著作物であると仮定して)パブリックドメインであるという説をたまに見かける。本当にそうだろうか。どんなAAも、それを最初に公表した人間がどこかにいるはずである。そして、著作者が不明な場合でも著作物は基本的に公表後50年間保護の対象になる。インターネットの歴史を考えてみても、AAが公表後50年経過しているとは思えない。
著作者が不明であるからといって、またそれらが世に広く普及しているからといってそれだけで著作権が消滅する法的根拠は無い。やはり「著作者不明の著作物」と解釈するのが自然だろう。
著作者不明の著作物を利用するにあたって、著作権法では以下のように定められている。

(著作権者不明等の場合における著作物の利用)
第67条 公表された著作物又は相当期間にわたり公衆に提供され、若しくは提示されている事実が明らかである著作物は、著作権者の不明その他の理由により相当な努力を払つてもその著作権者と連絡することができないときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当するものとして文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託して、その裁定に係る利用方法により利用することができる。

「のまネコ」にオリジナリティはあるか

のまネコとモナーの類似性について、知財分野の専門家である栗原潔氏のブログの記述から抜粋してみよう。

そういう意味で言うと、両者が類似してると認めてもらうのはちょっと厳しい気がします。
商標の実務で言うと、キャラクターというのはわりと類似の判定が甘く、ちょっとでも違ってると非類似とされるようです(まあそうしないと線画で描いたネコなんてみんな類似になってしまいますからね)。商標の審査と裁判所の認定は異なるプロセスですが、基本的考え方は同じだと思います。

確かに、商標実務の様に「図柄」だけから判断するのならば栗原氏のおっしゃる通りだろう。しかし、今回問題なのは「図柄」が似ているという事だけではない。それらの図柄には黒Flash当時の「オリジナル」があって、それが改変されていった過程が公にバレバレだったという事こそが問題なのだ。
わた氏が当初発表していたFlashで登場していたのは明らかに「モナー」であり「オニギリ」だった。少なくとも作品を見た者は皆そう思ったはずだ。そしてその作品がAAの巣窟である「2ちゃんねる」で発表されていた。
その同じ作品であるはずのものが、登場キャラだけが突然「のまネコ」に化けた。このプロセスこそが騒動の要因であって、単に「似てるじゃん」という問題ではない。
さらに極めつけは、エイベックス自身が、最早伝説となりつつあるw一節

インターネット掲示板において親しまれてきた「モナー」等のアスキーアートにインスパイヤされて

と述べて、AAとの関連性を認めた事だ。
少なくともエイベックスは法的に「シロ」だと言い切る事はできない。残念ながらモナーの創作者が不明な為に「手出しができない」というだけだ。

エイベックスはどこで道を間違えたのか

もう一度原点に立ち返ってみると、明確に「著作物」と言えるのはO-zoneの歌う楽曲とわた氏の「Flashムービー」だけである。登場キャラクタがモナーか否かに関わらず、Flash作品がわた氏の「著作物」である事は疑問の余地が無い。Flashだけ見れば本当に素晴らしい作品だと思う。
で、それらの状況から想像するに、おそらくわた氏がエイベックスに譲渡したのはあくまで「Flashムービー」の著作権であって、それはそれなりに報酬を受けてのものだったろうし、Flashの作者がわた氏である以上そこを非難するのは的外れだ。
まあ確かに、わた氏本人の弁解が火に油を注いでいる感はあるが、そもそも彼女は著作権についてあまり理解していない様に見受けられる。
(判っていればあんな意味不明で逆効果にしかならない弁解をするはずがない。)
これはあくまで推測だが、わた氏はエイベックスから
「Flashムービーの登場キャラクタについて著作人格権を主張しない」
「登場キャラクタについてAAであると公言しない」
あたりの事を確約させられた程度で、本人はそれを律儀に守ろうとしているだけではないだろうか。
それよりも、ここまで取り上げた点だけを見てもキャラクター周辺の法的判断はグレーゾーンだらけである事はお判りいただけたと思う。このテの騒動が起きる度に事態が混迷を深めてしまうのも無理も無い。
エイベックスはせめて「グレー」なものは、「グレー」のまま処理すべきだった。
少なくとも深入りすべきでなかった。
思えば、ドワンゴのCMにおけるAAの著作権処理なども外部からは不透明だし、電車男のドラマ中に出てくるAAが、しかるべき処理手続きを踏んでいるのかだって判然としない。
それでも騒ぎにはならない。深入りしなかったからだ。それが最低限の大人の判断というものだろう。
しかしエイベックスは「のまネコ」という急造キャラを生み出して、グッズまで販売してしまった。
グレーの上から無理やりペンキで白く塗った挙句、「著作者」として「権利」まで主張してしまった。本来、「著作物利用者」でしかないはずが逆の立場を装って目先の利益に走ったのだから、それは非難されても仕方が無い。そこがエイベックスの、唯一にして致命的な過ちだったと思う。
ちなみにFlash作品中の「空耳」がわた氏本人のアイディアかというのは、あまり本質的な問題ではない。詞の著作権はあくまで原曲の「作詞者」のものであって、その「発音」を日本語に置き換えただけで「創作物」とみなされる可能性はどのみち低いからだ。

最後に

昨年、わた氏の「マイヤヒFlash」を初めて見た時は感動したものだ。その後、何度繰り返し見たか判らない。
エイベックスの不始末ばかりがクローズアップされているが、本来著作権者に抹殺されがちな「黒Flash」を敢えて採用し、世のニーズに応えようとしたのは画期的な英断だった。その素晴らしい試みが、この騒動で全てオジャンになってしまったのが残念でならない。
他所の言及記事としては、
大西宏のマーケティングエッセンス:「のまネコ問題」は、avexがそういう会社だということ
がよくまとまっていた。今後の課題なども含めて同意できる部分が多かった。
よければこちらも併せて。

TBスパムに完敗しました

以前にも100近いTBスパムの嵐に襲われた事があり、BlackList系のプラグインで弾いておりましたが、今日また50近いTBスパムに晒され、いちいちリスト化してもイタチごっこというか、きりがないので新しいPlugin入れました。
ゑBLOGさんのトラックバックSPAM防止プラグインです。IrregularExpressionさんも導入しているヤツ。
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まだ、動作確認できてない(つか、TBがこないと正常動作してるかわからない)ので、もし、トラブルや、TB送れねーぞゴルァ、という方はコメント欄なりメールなりでタレこんで頂ければ幸いです。