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人権擁護法案

同和問題についての、ある「謝罪」

長くなってしまったのでエントリーを分けました。『同和問題についての、ある「証言」』とセットで読んで頂ければ幸いです。
もう1ヶ月半くらい前の話で恐縮ですが、テレビ朝日『サンデープロジェクト』にて、「追跡2年!食肉のドンと呼ばれた男」という特集がありました。この特集内での発言について、田原総一郎らが翌週謝罪し、その平謝りっぷりが2chなどでも結構騒がれたんですが、この顛末は今の同和問題が持つ矛盾を最も良く現しているエピソードと感じます。今さらですが、1月23日放送の問題の部分と、翌週放送の謝罪をテキストに興しました。これも、現状を探る手掛かりとしての、ある「謝罪」です。
登場人物
司会:  うじきつよし(以下、うじき)
アシスタント: 宮田佳代子(以下、宮田)
出演: 田原総一郎(以下、田原)
     高野孟(以下、高野)
    大谷昭宏(以下、大谷)
■2005年1月23日 サンデープロジェクト
『追跡2年 食肉のドンと呼ばれた男』の問題部分 
(浅田 満の人物像や生い立ちなどについて、どこも報道しない事について)
田原「あのねえ、だいたいねえ、この人をやんないマスコミが悪いんですよ。」
宮田「取り上げてこなかった」
田原「うん、この人は被差別部落のなんとかって言ってねえ、そんでねえ、恐ろしがってんの。なーんにも恐ろしくない、本当は!
高野「タブー視されてきた」
田原「タブー視されてんの。ここが問題。で大谷さんやるんだよね?」
大谷「ええ」
田原「この人は、被差別部落をタブー視しないからできるの。」
高野「だからやっぱり大阪湾に浮かぶかもしんない(笑)」
うじき「危ないですよ、二人とも(苦笑)」
田原「変にねー、マスコミがタブー視する事はねー、逆に言えば差別なんだよ。」
大谷「そうですね」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■2005年1月30日 サンデープロジェクト
番組冒頭
うじき&宮田「おはようございます。」
うじき「今日はまず最初に番組からのお詫びがあります。」
宮田「はい。先週の放送の冒頭のコーナー。ハンナンの浅田満の特集を説明するくだりで、被差別部落の人達の心を傷つける発言があった事をお詫びいたします。え、まず田原さんの発言ですが、
一つ目は、浅田被告の生い立ちについて触れた事です。
二つ目は浅田被告の犯罪が被差別部落一般と関係があると誤解される発言でした。田原さんからです。」
田原「はい。えー、放送後に、私の古い友人から手紙を貰いました。
えー、手紙には、浅田被告の犯罪は憎む。しかし、えー、浅田被告の犯罪と被差別部落とは別のものである、と。これを田原さんの発言は、結びつけるような、この、ニュアンスがあったと。
えーーーー、大変残念だと。いう、あの、手紙貰って、うーんと思いました。
そしてもう一つ、あたかも被差別部落を取材する事が、困難、タブーだと、いう様な事を、言ったと。
これはもう、あのー全くの間違いであると、いう事を書かれていまして、そうだと。
私はその、差別の問題にはとっても取り組んでるつもりですが、やっぱ私の深層の中でね、
ついそういうものがあったのかなあと、いう事を非常に反省しています。
申し訳なかったと思ってます。」
宮田「高野さんからです」
高野「はい。えー、私の発言で被差別部落の皆さん、そして関係者の方々に、いー、の心を傷つけてしまい大変申し訳ありませんでした。まー、私も、長年、んー人権意識の普及向上の為の活動には取り組んでおり、差別は断じてあってはならないと、また許してはならないという風に思っています。
ま、そういう私が、あー差別と犯罪を関係づけるかのような印象を与える発言をした事に、いー、誠に申し訳なく思っております。えー、申し訳ありませんでした。」
うじき「私にも軽率なところがありました。あらためて深くお詫びします。(深く頭を下げる)」
田原「でもハンナンの問題はヤルんだよな。犯罪は犯罪として、ヤルと。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この時の3人は廊下に立たされてる小学生かのような印象を受けました。
とりあえずこんな長い謝罪は初めて見た。
田原はうつむいたまま、少しふてくされていた(それが最後の捨てゼリフに繋がった)。
[追記]
あらためてテキストを読み返してみると、政治家の圧力など比較にならないホンモノの圧力の臨場感がひしひしと伝わってくる。
同和問題一つとっても、その根っこは恐ろしく深い。士農工商時代からの怨念の歴史がある。糾弾により腑抜けになったメディアはろくに情報を伝えないから誰もその全貌を把握できない。
現状認識を共有できてないから効果的な議論ができない。
そして人権擁護法案は、タブー視された秘密のベールの上からさらに新しい毛布をかける。これじゃあ悪循環だ。
若隠居さんやplummetさんの意見も発想としてはアリだと思う。というか、「法案が成立したらどーするよ?」ていうのは確かに避けて通れないテーマではある。
しかし、この穴だらけの法案を少々積極利用した位で、日本が長く抱え続けた歴史の闇を解きほぐす力になるのか?と言うと、そこまで楽観的にはどーしてもなれない。タブーをタブーでなくす事。普通に考えればやはりそれが正しい順序だと思う。それだけでも難しい事だが、そっから先もまた難しい。
いずれにしても人権擁護法案通す前に、やるべき事は山ほどあるはず。と思う。
というわけで、私の場合、人権擁護法時期尚早論。もしくは法案細分化してできるとこから法制化論。てところでしょうか。うーん、このネタは難しいっすね。次はちょっと別の発想からアプローチしてみたい。

「同和問題についての、ある「謝罪」」への12件の返信

 エントリーを拝読して、「まさしくこれだ!」と膝を叩きました。痛い、膝が。(©ナンシー関)
 ここまでご丁寧な謝罪をするのなら“ゲーム脳”でも土下座しろ、いやいや、土下座するのではなくて、社会構造分析なり精神医学的検証なり、「あって当たり前の議論」ができない、ちょっと言われたらシュンとなって頭をさげちゃう(まあ、下げなければ徹底的にやられちゃうんでしょうけど)。
 アファーマティブアクションには、黒人の大学入学枠や女性の管理職登用、障害者雇用枠などさまざまなものがありますが、たいてい「逆差別」という批判があり、そして実際「逆差別」になっているものが多いです。
 既得権というおかずが皿に残っているのに「オカワリ食べたい」と言われちゃあ、厚かましいと反発するのも当然だと思います。
 理論的には、「(あるべき)人権擁護法の成立と引換えに、全ての優遇措置をなくします」というのが正しいのでしょうし、私はその方向を模索しているのですが、現実の重みの前に、立ち竦んでしまいます。

 この1月23日の放送ですがたまたまリアルタイムで見てました。「大阪湾に浮かぶ」でビックリしたんでよく覚えてます。さらにビックリしたのは確かその後15分か30分後のコーナー切れ目で司会者がお詫びしてました。そのときは具体的でなく不適切な発言というのみでしたが。
 翌週さらに具体的に謝罪していたとは知らなかったんでいまさらながらビックリです。
 深い・・・・・・深いです、大阪湾、深いです。

1: an_accusedさん>
>アファーマティブアクションには、黒人の大学入学枠や女性の管理職登用、障害者雇用枠などさまざまなものがありますが、たいてい「逆差別」という批判があり、そして実際「逆差別」になっているものが多いです。
この問題は、一筋縄ではいかないんでしょうね。そこは理解できるとしても、少なくとも「タブー」であるうちは建設的な進展なぞ期待できるはずもなく。このタブーを打ち破る原動力は当然ネットになるわけで、それ故ネットの言論をけん制する性格を持つ今回の法案については「順序が逆」と思うわけです。
>理論的には、「(あるべき)人権擁護法の成立と引換えに、全ての優遇措置をなくします」というのが正しいのでしょうし、私はその方向を模索しているのですが、現実の重みの前に、立ち竦んでしまいます。
確かにそれがベストなんでしょうねー。でもそれが実現できるような法案なら、そもそも解同や創価学会が法案成立にやっきになるはずがないのであって。法律の「利用」ノウハウに関しては一枚も二枚も上手のはずですから。
2: グリンファンさん>
> 翌週さらに具体的に謝罪していたとは知らなかったんでいまさらながらビックリです。
この時の裏話が週刊新潮に特集されてたみたいですね。私は見逃してしまいましたが。
もし人権擁護法が施行されていたとして、この場合、田原総一朗らは人権委員会に訴えたか?というと、その可能性は低いと思うわけで。同和利権の告発意欲を削ぐ要因は、「法の不備」じゃなく「恐怖心」なわけですからね。

ども、はじめまして。
ともかく、部落解放同盟について
調べて、調べて、調べまくってましたが
結論として「気色悪い」の一言。
このなんというか、ぞ~~~っとする感じ。
なんかのホラー映画見るより、部落解放同盟でも映画にした方が
よっぽど、恐怖映画できあがる感じがします。

4: 鷹森さん>
はじめまして。何度かBlog拝見させてもらってました。
これを機会によろしくお願いいたします。
>結論として「気色悪い」の一言。
全く同感です。なんというか、母親に溺愛されて育ったいびつなモンスターとでも言おうか…
この問題はとにかく根が深い。彼らは自ら壁を作ってしまっています。保護政策で生活水準は上がっても、差別は寧ろ拡がってる感もあります。
かくいう私も、もし自分に娘が出来て、被差別部落の彼氏と結婚したいと言ってきたら… 無理です、多分。はぁ。

わたしはこの問題についてはくわしくはないですし、
きっと想像にも及ばないようなことがいろいろあるんだろうなあと推測するのみです。
黒人の問題などとちがって皮膚の色も同じ、
ユダヤ人の問題ともちがって民族としても同じ、
移民問題ともちがう。
同じ日本人であり、差異はないんですよね・・・。
ほんとうに複雑で難しいことだと思います。
ただ、こちらのエントリーを読んで、以下のエッセーを思い出しましたので、ご紹介です。
ttp://www.nomusan.com/~essay/essay_vatican_01.html
>差のないものを差がないと教える、本当は教えようもないのである。差があると心の底で思っているものが、わざわざ差がないといいたがるのだ。

(メアドはダミーです)
こんにちは。plummetさんのところから飛んでまいりました。
実は私も、いわゆる同和地区が一キロ先にあるようなところ(大阪市南部)で育ったので、道徳の時間の副読本「にんげん」は読まされましたね。子ども心には「何これ、この人たちって字が読めないのがそもそもの発端なんだろうし、『ヒガミ根性』で世の中に向いてるから誰も相手にしないんでしょ?」なんて事をつらつらと考えておりました。イヤなガキでしたね。(早熟でしたもので)
ちなみに高校では、生野区が学区のひとつに含まれていたため、在日コリアン3世の子がクラスに1~2名はいるという環境でしたが、皆してワイワイとやっておりましたし、民族の差がどうこうといったような雰囲気はまったくありませんでした(なんたって、在日で生徒会長になっている人も居るくらいですから)。

mさん>
はじめまして、かな?
>同じ日本人であり、差異はないんですよね・・・。
日本が抱える問題は、ホント独自ですよね。言い方を変えれば他国より克服可能なはずなんですよね。ご紹介のリンク拝見しました。こういった「実体験」は説得力が違います。もっとたくさんの「体験」が眠ってるはず。多くの人の話を聞かせて欲しくなりました。
guldeenさん>
はじめまして。
>道徳の時間の副読本「にんげん」は読まされましたね。
北海道では、「アイヌ」についてかなり時間を割きます。そして社会人になるまで「同和問題」なんて聞いた事もありませんでした。
>『ヒガミ根性』で世の中に向いてるから誰も相手にしないんでしょ?
ある意味真理ですよね。差別は確かにあると思いますが、被差別者自身の「向き合い方」が違うと思うんですよね。
>皆してワイワイとやっておりましたし、民族の差がどうこうといったような雰囲気はまったくありませんでした(なんたって、在日で生徒会長になっている人も居るくらいですから)。
在日問題などを考えるとき、たとえば「コリアンザサード」氏のような存在がものすごく大きいと思います。guldeenさんのお話でもまっさきに氏を思い出しました。
タブーの殻を打ち破るのも、やはりネットの様な気がします。人権擁護法案の騒ぎを通じて、『同和問題』に多くの人が注目するようになったとすれば、それが一番の「収穫」かもしれないっすね。

>はじめまして、かな?
あああ恥ずかしい。はじめてじゃありませんです…。
以前に「moon」のハンドル名にてコメントしております。つい省略して「m」と打ってしまいました。
こんないいかげんなことじゃいけないと、心より猛反省しております。
まことにもうしわけございません。
今後もしもコメントさせていただく場合は「moon」でコメントいたします。
たいへん失礼いたしました。

>moon(m)さん
>心より猛反省しております。
そんな、猛反省だなんて。。。気楽にまたいらしてください。こちらが恐縮してしまいます。

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