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『弁護士』と『人権擁護法』

これは見過ごせない。シリアスモードにならざるを得ない。
『IT法のTOP FRONT』:人権擁護法案
『IT法のTOP FRONT』:続・人権擁護法案
小倉先生が、今旬の話題である人権擁護法を持ち出してきた。とはいえ、一発目のエントリー『人権擁護法案』の内容は当たり障りの無いもので、今更小倉先生が人権擁護法案に賛成したからといってさして驚く事もないし、意見は人それぞれだし、という感じで静観していた。
ところが、愛・蔵太氏のTBに応えるという名目で書かれたはずの『続・人権擁護法案』で、先生はものすごい歩幅で踏み込んでくる。自説の「匿名・実名論」に話題をリンクさせた上で最後に先生はこう言う。

はっきり言ってしまえば、人権擁護法案での差別規制が導入されて困るのは、匿名の陰に隠れて特定の者に人種差別的な表現を投げつけて嫌がらせをしている人たちや、匿名の陰に隠れて特定の人種等に対する憎悪を煽ってその者たちに対して差別的な処遇をするように呼びかけたりしている人たちだけではないかと思われます。

先生が高笑いしている。はっきり言わないのが小倉クオリティだったはずなのに、「はっきり言って」しまっている。正直、最初はこれもコメント欄の活性化剤かとタカをくくっていたが、それにしても小倉先生らしくない。ではその真意は何なのか。自分なりに読み解いてみようと思い、『弁護士』と『人権擁護法』の関わりについて改めて調べてみると、なんかこの法案の真のヤバさが見えてきた。(すごい長編になる予感)
まず、そもそも人権擁護法とは何の為の法案なのか。基本中の基本を法案から抜粋。

(目的)
第一条 この法律は、人権の侵害により発生し、又は発生するおそれのある被害の適正かつ迅速な救済又はその実効的な予防並びに人権尊重の理念を普及させ、及びそれに関する理解を深めるための啓発に関する措置を講ずることにより、人権の擁護に関する施策を総合的に推進し、もって、人権が尊重される社会の実現に寄与することを目的とする。

これ、ハッキリ言って反対する人なんていません。少々条文に穴が有ったとしても、ちゃーんと正しい目的に沿ってこの法律が施行・運用されてる限りはさしたる問題は無い。問題なのはこの法律が正しい目的に沿って機能せず、目的外の意図で濫用された場合。余計な事は考えずその観点に絞って検証してみる。
やはり真っ先に問題になるのは、多くの人が指摘しているように、法務省管轄で新たに設置される今法案の目玉人権委員会なるもの。この委員会の信頼性について、小倉先生はこう言っている。『IT法のTOP FRONTコメント欄』より抜粋。

人権委員会の委員は、「委員長及び委員は、人格が高潔で人権に関して高い識見を有する者であって、法律又は社会に関する学識経験のあるもののうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命ずる。」とされているわけで(第9条)、これで「信用がおけない」となるとどういう人なら信用がおけるのだろうかという疑問が生じます。

私もこれは同意。この条件でまさかとんでもない人間が委員に名を連ねるとは思えません。ですが運用を考えると問題が無いわけではない。以下法案第8条より抜粋。

第八条 人権委員会は、委員長及び委員四人をもって組織する。
2 委員のうち三人は、非常勤とする。
3 委員長は、人権委員会の会務を総理し、人権委員会を代表する。
4 委員長に事故があるときは、常勤の委員が、その職務を代理する。

なんと、委員会と言いながら、実は全部で5人しかいない(しかも3人は非常勤)。こんな少人数で本当にこの重責をこなしていけるのか、という疑念が生じてきますね。さらに第15条ではこんな記述も。

第十五条 人権委員会の事務を処理させるため、人権委員会に事務局を置く。
2 事務局の職員のうちには、弁護士となる資格を有する者を加えなければならない

でも一番ヤバイのは人権擁護委員なるものです。特にここに注目。第22条2、3項と第24条。

(第二十二条2項) 前項の人権委員会の委嘱は、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)が推薦した者のうちから、当該市町村(特別区を含む。以下同じ。)を包括する都道府県の区域(北海道にあっては、第三十二条第二項ただし書の規定により人権委員会が定める区域とする。第五項及び次条において同じ。)内の弁護士会及び都道府県人権擁護委員連合会の意見を聴いて、行わなければならない。
(第二十二条3項) 市町村長は、人権委員会に対し、当該市町村の住民で、人格が高潔であって人権に関して高い識見を有する者及び弁護士会その他人権の擁護を目的とし、又はこれを支持する団体の構成員のうちから、当該市町村の議会の意見を聴いて、人権擁護委員の候補者を推薦しなければならない。

第二十四条 人権擁護委員の定数は、全国を通じて二万人を超えないものとする。
2 各市町村ごとの人権擁護委員の定数は、その地域の人口、経済、文化その他の事情を考慮して、人権委員会が定める。
3 都道府県人権擁護委員連合会は、前項の人権擁護委員の定数につき、人権委員会に意見を述べることができる。

たった5名の人権委員会の委嘱を受ける2万人の人権擁護委員。その2万人は市町村長の推薦を受ければよいだけで国籍条項も含めほとんど条件は無いに等しい。そして委嘱を決めるときも弁護士会の意見を聞かなくてはならない事。そして、人権委員会事務局にも、人権擁護委員にも、弁護士だけが名指しで法案に明記されているという事実。
たった5名の人権委員会がどれだけ踏み込んで人権擁護委員の行動をチェックできるのか?
関東圏だけで2千人近い人権擁護委員が誕生する計算になるが、東京だけでいったい何人の弁護士が人権擁護委員になるのか?
そもそも人権委員会+人権擁護委員なる組織はこんないびつな構成で本当に機能するのか?
ちょっと考えただけでこれが運用時にどんな事になるのか、妄想は膨らむ。
ここまでで確実に言えるのは、この法案で弁護士会が大きな権益を手中にするという事。これだけは間違いない。事実上、この法案の施行、運営には弁護士会が不可欠。確かに人権擁護に関して弁護士会は実績を積んできてはいるが、新たに生まれる権限がここまで特定の組織に依存しまくって良いのか。小倉先生が高笑いしたとしても無理は無い。
NHK-朝日問題で声明を出した『報道・表現の危機を考える弁護士の会』などの行動を見ても、弁護士という人種が必ずしも公正・中立で論理的、とは限らないのが明らかになってきている昨今、弁護士が手にするこの権益が濫用されないという保証はいったいどこにあるのか。
「弁護士は信用できない!」とまでは言わない。しかし、どう考えてもこの法案には運用時のチェック体制についての規定が無さ過ぎる。
ちなみに小倉先生による「濫用」についての見解はこうだ。エントリーから抜粋。

それはともかく、今回の人権擁護法案は、人種差別等の禁止に関する部分についていえば、制裁規定が非常に弱いので、2ちゃんねるや一部のブログなどで騒がれているような「濫用」などほとんど起こりえないといえそうです。

なぜ制裁規定が弱い事が、「濫用」の抑止力になるのか。何度読んでも論理的ではない。普通の読解力の人にはこうとしか読めないだろう。
制裁規定が弱いんだから「濫用」されてもどーってことはない
これ、誤読ですかね?どう解釈したらいいんですかね?教えて偉い人!
さらに、今この法案を一番通したがっているのか誰かについても触れておく。
以下は、asahi.com3月5日配信記事より抜粋。

メディア規制「凍結より削除」 人権擁護法案で民主代表
——————————————–
 民主党の岡田代表は5日、愛媛県西条市で記者会見し、政府・与党が今国会に再提出を予定している人権擁護法案で「凍結」とされているメディア規制について「凍結では不十分で、削除が必要だ。一方でメディア規制以外の部分は成立させる必要がある。これから与党側と話し合う中で(メディア規制の)削除を実現したい」と述べた。今月中旬の法案提出後に本格化する与党との修正協議でメディア規制の削除を実現したうえで、法案成立をめざす考えを示したものだ。
 民主党は、02年に人権擁護法案(03年に廃案)が提出された際、対案に(1)報道被害対策は報道機関の自主規制を努力義務とする(2)人権侵害による被害を救済するために新設する人権委員会は独立性を高めるため内閣府に置く――との考え方を盛り込み、メディア規制の削除を求めた。
 今回は「党の考え方は基本的に変わっていない」(江田五月・人権侵害救済法に関するプロジェクトチーム座長)としながらも、友好団体の部落解放同盟が今国会成立の方針を掲げていることもあり、明確な方針を示していなかった。(以下略)

公明党のWEBサイト、「よくある質問」での人権擁護の項では、こんな記述も。

(中略)公明党同和対策等人権問題委員会の山名靖英事務局長(衆院議員)は2月23日に開かれた「部落解放・人権政策確立要求中央実行委員会」の会合であいさつし、同法案について、「日本が人権国家として脱皮するために不可欠な法律。皆さま方の協力を得ながら、何としても今国会で成立させたい」と強調しました。(2005年2月28日現在)

部落開放同盟や公明党がこの法案を通すのにやっきになっているのは、わざわざここで言うまでもなく周知の事実。もちろんある意味においては「擁護されるべき弱者」かもしれないが、本当にそれだけか。人権、平和、差別撤廃など、耳障りの良い言葉の裏に様々な利権があるのがこの国の暗部。
そして、小倉先生へ。
小倉先生のエントリー『続・人権擁護法案』は匿名ネットへの宣戦布告なんだと受け取ります。もちろんそれに対して一定の意義は認めます。無責任な匿名発言への苛立ちもある程度理解できます。しかし、「人権擁護法」をタテにもしそれを行うのであれば、それは『濫用』ではないのですか。
「匿名・実名」の議論において私の再反論に反応しないまま、スルーしたまま先生がそういう事をおっしゃるのは誠に残念です。
最後に小倉先生ご自身が、2005年1月14日に語ったコメント欄の言葉。

弁護士をやっていると、共産党員の友人もいるし創価学会員の友人もいますし、自民党員の友人もいますから、特に含むところはないですよ。

[追記]第二十二条第2項に関する記述を追加。
参考リンクに『若隠居の徒然日記』を追加。
参考リンク:
人権擁護(言論弾圧)法案反対!
「人権」に関しての日弁連のサイトの資料に少し呆れる (愛・蔵太の気まま日記)
人権擁護法案10年史(趣味のWEBデザイン)
人権擁護法案で得する奴は誰だ?(IrregularExpression)
杞憂であってほしい、人権擁護法案への心配 (若隠居の徒然日記)

「『弁護士』と『人権擁護法』」への33件の返信

トラックバックを頂戴して、早速参りました。
こう書かれると怖いですね、実に怖い。。。
というかですね、昨今の弁護士関係利権がこんなところにまで入っていたかと思うと実に痛快でありました。
初代人権委員会委員長は、元日弁連会長とか、そんなひとだったりして。
しかしまあ、小倉さんも底意地の悪いと言うか、ここまでくると実に愉快なお人ですなあ。面白すぎる。やっぱり、ネットの住人を相手に遊んどるんでしょうな。真面目に相手をするのが疲れてきた。

>無責任な匿名発言への苛立ちもある程度理解できます。
 私としては、弁護士とHOTWIREDの看板背負って無責任な発言をする方が苛立ちます。(まあどの程度の看板かは人それぞれですが)
 個人的なうっぷん晴らしのために法律利用していいもんなんでしょうか。

 お久しぶりです。人権擁護法案について、いくつかコメントさせて下さい。
 まず、「たった5人の人権委員会」についてですが、公安委員会にせよ労働委員会にせよ、中央の委員会ってそんなもんじゃないでしょうか。
 次に、「2万人の人権擁護委員」についてですが、「関東圏だけで~誕生する」と仰るところをみると、何もないところから巨大な組織が誕生するかのような印象をお持ちのようですが、人権擁護委員は現在も14,000人ほどが任命されて、人権擁護活動に従事しているはずです。この人々が人権擁護法(案)に基づく人権擁護委員にスライドするわけですから、「巨大組織を誕生させる」というのは、ちょっと違う気がします。
 巨大な権益が生まれる危険性についてですが、まず直接的利権は生まれる余地が少ないように思われます。現行の人権擁護委員や保護司など、法務省の所管する政策は無償篤志家の協力によるところが大きく、むしろ担い手の確保に苦労しているくらいです。弁護士会が委員任命に対する影響力を手に入れたとしても、そこに旨味があるとは思えません。間接的利権(例えば同和利権など)についてはどうかわかりませんが、人権委員会による公的調査によって私的な糾弾行為が排除される可能性もあるわけで、特定の団体に利する制度になるかどうかはまさしく運用次第ではなかろうかと思うのです。
 濫用の問題についてですが、もしも「人権侵害」認定を不当と感じた場合、他の行政処分と同じく、処分の名宛人は行政訴訟によって是正を求めることができるのではないでしょうか。
 またまた長文になってしまいましたが、以上のような感想を抱いた次第です。

1: 若隠居さん>
>初代人権委員会委員長は、元日弁連会長とか、そんなひとだったりして。
それは鋭いですね。すごくあり得る気がします。
>しかしまあ、小倉さんも底意地の悪いと言うか、ここまでくると実に愉快なお人ですなあ。面白すぎる。
小倉さんには、匿名で無責任な発言をする人間に対する怨念みたいなものを感じます。そのベースにあるのはやはり誤解なんですよね。正しく現実を見ればその怨念も霧散するような気がするんですけれども。。。。
2: グリンファンさん>
すみません。内容から判断して、コメントをこちらのエントリーに私の判断で移動しました。
>私としては、弁護士とHOTWIREDの看板背負って無責任な発言をする方が苛立ちます。
私としても、小倉先生の件に拘る理由はそこが大きいです。今の状況をHOT WIREDはどう思っているのか、本当に興味がありますね。
3: an_accusedさん>
おひさしぶりです。相変わらず鋭いツッコミ恐れ入ります。勉強になります。
>まず、「たった5人の人権委員会」についてですが、公安委員会にせよ労働委員会にせよ、中央の委員会ってそんなもんじゃないでしょうか。
なるほど。そうかもしれませんね。ただ、国家公安委員会に関して言えば、庶務は警察庁ですよね。下部組織が元からキッチリできている。それに対して2万人近くの擁護委員を新たに人権委員会が委嘱する今回の法案はやっぱり無理を感じてしまいますね。これは組織とは呼べないと思うのですが。
>人権擁護委員は現在も14,000人ほどが任命されて、人権擁護活動に従事しているはずです。
私の勘違いだったら申し訳ないですが、今の人権擁護委員というのはボランティアではなかったでしたっけ?
今回の法案では、各地方の市町村長が推薦する訳ですから、結果的に同じ人間が引き継いだとしても、やはり一から選び直した事にはならないでしょうか?いや、そこらへんはそれほど深く考えてはいなかったですけども。
>巨大な権益が生まれる危険性についてですが、まず直接的利権は生まれる余地が少ないように思われます。
権益、というと誤解を招くかもしれませんが、「権限」は大幅にUPしますよね。従来だと、人権相談とか、啓蒙活動みたいな本当に「ボランティア」的な活動に限られてたはずですから。
とはいえ、そんな「巨大利権」みたいなものが生まれるとは私も思ってないんですけど。ただ、今回のエントリーに思い当たったきっかけが小倉先生のエントリーだったわけで、『弁護士』という立場の方から、人権擁護法案に絡めてあのような「匿名発言者に対する恫喝」的発言が出るのを見てあらためて考察してみると、なるほど弁護士さんの権限ってのは相当なものだと感心した次第で。結局、言いたい事はそこなんです。
>行政訴訟によって是正を求めることができるのではないでしょうか。
確かにそうなんですけど、そもそも行政訴訟なんて起こした経験のある人が日本にどれくらいいるでしょうか?
私は経験無いです。多分無い人がほとんどです。
「行政訴訟によって是正を求める」しか手段が無いとしたら、これ法案としてあるべき姿ですかね?という疑問は大きく残ります。

3: an_accusedさん>
補足です。
>弁護士会が委員任命に対する影響力を手に入れたとしても、そこに旨味があるとは思えません。
弁護士の影響力に、間接利権享受者が目をつける、という危惧は否定できないと思ってます。そういった場合、時と共に巨大利権に化けたり、もしくはなんらかの「犯罪」の温床になる可能性は秘めてるような気がします。
まさに「運用次第」。あまり危機感を煽るつもりもないですけど、法案として結構「お粗末」なのは否めないと思うのですが、如何でしょうか?

>すみません。内容から判断して、コメントをこちらのエントリーに私の判断で移動しました。
私の間違いです。こっちで正しいです。
 私は法律の詳しいことは判らないですが、an_accusedさんの言いたいことはなんとなく判ります。
ただ、差別を生業とする人々がいることは事実としているわけですね。ちょっとひねくれた例え話かもしれませんが、
 当たり屋って昔いましたよね(今でもいるかもしれませんが)。交通事故は被害者が立場的に強いという事を利用して、ワザと当たって自己申告のむち打ち症か何かを使う奴、あれってイタイイタイって言えば診断書もらえます。
 この法案って差別を生業とする(そういう意味での当たり屋)人々に利用される危険性はないんでしょうか?
 もちろん、正しく利用された場合のみを考えた場合は反論の余地が少なくなるなるかもしれませんが、反対している人ってもっと俯瞰したところから議論しようとしているような気がします。
 賛成派の人は、なんか原爆反対意見を原発反対に利用している人みたいな匂いを醸し出しているような気がします。
 ちょっと長文かな、すいません。

すいません。名前忘れました。
6: Anonymous at 2005年03月10日 03:33
です。

 かく言う私も、法務省の外局であること、調停/仲裁における人権委員会委員に対する忌避が明記されていないこと、人権擁護委員のリコールが定められていないことに不満を抱いているのですが。
 人権委員会は、中央の庶務は法務省人権擁護局を改組したものが行い、地方においては各地方法務局の人権擁護部門を改組した事務局が行うことになるでしょう。難民政策などで人権抑圧しまくりの法務省に所管させてよいのか、という問題はありますが。
 今の人権擁護委員はボランティアです。そして新法においても同じくボランティアです(法案26条「人権擁護委員には、給与を支給しないものとする」)。また附則2条により人権擁護委員法が廃止されることから、新法は現行の制度を踏襲するものと考えてよいと思います(もちろん、制度が変わる以上、新たに任命されるのはその通りです)。先のコメントでも述べたように、法務省所管の政策はボランティアに頼りきっているのです(ボランティアゆえに引き受け手が不足し、そのことが不適格者に対するリコールを躊躇してしまう理由となるとすれば、それはそれで問題だと思います)。
 人権委員会は唐突に勧告等を行うわけではなく、調停や仲裁、当事者に対する聴聞を行ったうえで処分を行いますし、最終的に行政訴訟によって是正を求めることになるのは、この法案に限らず土地収用やタクシー営業認可などの通常の行政処分と同様だと思います。
 最後に、弁護士の“権益”拡大については、まさしくおっしゃる通りだと思います。例えば最近児童虐待に対して児童相談所と弁護士会が連携したりしています。これなどは、親族や地域社会による家庭への介入が期待できなくなっているから、弁護士(=法)の介入を招いているのです。なんでもかんでも弁護士が手を突っ込んでくるのは、それほど社会が法に頼らざるを得なくなっているからだと言えるように思います。
 弁護士会以外にも、障害者団体やアムネスティなど人権擁護に取り組んでいる団体はたくさんあるのでしょうが、いかんせん弁護士会以外はたいてい任意団体ですし、政治的背景を取沙汰されやすいために法文上規定しにくいというのもあるでしょうね。V○××-NETに“人権団体”としての影響力を持たせるわけにも、ねえ。
 ああ、またまた長文に。いつもすみません。

 ああっ、コメントを書いている間に他の方からレスポンスが!
 J2さま、ひとさまのブログで長々とすみません。
 グリンファンさまの「差別を生業とする者の存在」と、J2さまの「間接利権享受者の存在」は、あると思います。というか、あります。先のコメントに書いた「同和利権(エセ同和)」なんかがこれにあたると思います。
http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken86-01.html
これらは、かつて(今でも?)の “糾弾”と称する過激な交渉を皆が怖がるから、これを利用して金にしようとしているので、街宣右翼と似たようなものだと思います。これに対しては、非公式な交渉によって解決しようとせず「では、出るところに出ましょう」と言って排除していくしかないわけで、その「出るところ」として人権委員会が機能するか、ということが問題となるように思います。
 反対される方については、俯瞰的視野から論じているとも、副作用にこだわっているとも言えるわけで、まずは“改善すべき症状の重さ”と“処方”について考えるのが先であるような気がします。その点から、「そんなに人権侵害って多いの?」「差別的言論には言論で対抗すればいいんじゃないの?」ということがもっと論じられてもよいと思うんですが、肝心のメディアがアレじゃあ、法の介入を食い止めるのは難しいでしょうね。

弁護士はこれから大量増員されるので、就職先の拡大に躍起なのです。司法支援センターという外郭団体も新設され、全国に出先機関が置かれることになっています。もちろん税金で。

先生が新たなエントリ書きましたね。
最後のコメント書いてきました。
—————————————————
Unknown (グリンファン) 2005-03-10 07:27:37
終わるのをかすかに期待してます。
 真面目に議論している人には申し訳ありませんが、ここは、「人権擁護法案」を真面目に議論しているところではありません。
 Recent Trackbackの幾つかを読んでいただき、真面目に議論しているところへ移行することをお勧めします。
 ここは、カミングアウトを求めるための撒き餌ですので、ご注意ください。
お疲れ様でした。もういいです。
—————————————————
脱力しました。全身から水分が垂れ流れました。
彼が「人権擁護法案」を「利用」したらどうなるかを考えると背筋が溶けそうです。
an_accusedさん、また明日くらいにコメントします。

グリンファンさん>
こんにちは。小倉先生はさらに新しいエントリーを起こしたみたいですよw
でも、前回今回のエントリーは私は論旨としては賛成です。「もっと腹くくってやらんかい!」て事ですね。
プロレスなどでよく相手を叱咤する意味で張り手をかます事があるんですが、今回の小倉先生はそれだと思います。
an_accusedさん>
an_accusedさんの博識に敬意を表します。本当に素晴らしいです。おかげで自分も今法案の問題点を整理できてきました。結局頭の中を整理できぬまま今エントリーを書いてしまったのですが、エントリーを起こすにはモチベーションが高まった時に一気に書かないと新鮮味を失ってしまう側面もあるのでそこはご理解ください。
で、今人権擁護法案の問題点はやはり人権委員会について、「権限」だけを強化し、「組織」「制限(監査)」という側面をあまりにも軽視し過ぎている点ですね。このままだと後々禍根を残す気がします。
法を運用するのも利用するのも「人間」です。
「振り込め詐欺」の様に、ある犯罪手法のサンプルが世に出た瞬間に進化し、ブレイクする現象はありえます。
完成度の低いまま法案が通過すると、しばらくは平穏でも、ある「脱法手法」が世に提示された瞬間、それが蔓延しズタボロになる事も考えられますよね。
人々が無関心であるのに比べれば、たとえ拙くとも議論がなされている今の傾向は良いと思っています。
とおりすがりさん>
司法支援センターですか。恥かしながら知りませんでした。ちょっと調べてみます。情報ありがとうございました。

>J2さま
 恥ずかしいので、あまり持ち上げないで下さい。こちらこそ、考える場をお借りできてありがたく思っています。
さて、本日の自民党法務部会で人権擁護法案に対する反発が相次ぎ、法案の審議入りが遅れる模様ですね。財政問題と違い、急いで成立させる必要もありませんから、ぜひしっかりと議論していただきたいですし、その議論を監視していきたいと思います。
 自民党法務部会で問題とされたのは、J2さまが指摘されているとおり「人権擁護委員の選任のありかた」が中心だったようです。ご指摘のとおり、選任過程の透明化と不適格者に対する罷免手続の明記は必要ですね(現在は「なっていただく」ものなので、活動に対してあまり厳しいチェックを行いにくいように思います)。
 小倉氏のエントリーは、半分賛成です。一方は「たしかにリアルで動かなきゃ意味ないわなあ」、もう一方は「ネットでもリアルでも反対の声をあげているかもしれないじゃねえか、ネットだけって決め付けんな」です。
そういえば学生時代、薬害エイズ問題などで国会陳情に通った覚えがありますが(若気の至り)、就職してからは「市民オンブズマン」シンポに参加したくらいで、傍観者を決め込んでしまっています。情けない限り。
>グリンファンさま
 水分補給なさって復活なさるのをお待ちしております。(^^)

13:an_accusedさん>
>さて、本日の自民党法務部会で人権擁護法案に対する反発が相次ぎ、法案の審議入りが遅れる模様ですね。
そのようですね。ネットでも政治の場でも冷静で実りある議論が行われると良いですが。まだ成り行きを注視していく必要がありそうです。
>(現在は「なっていただく」ものなので、活動に対してあまり厳しいチェックを行いにくいように思います)。
今の様に無報酬のまま権限だけ強化してしまうと、「金銭的報酬が無くとも利益を享受できるもの」が積極的に擁護委員になりたがりはしないか不安です。
>そういえば学生時代、薬害エイズ問題などで国会陳情に通った覚えがありますが(若気の至り)
おお、国会陳情には行きませんでしたが共感できます。当時は管直人がヒーローだったんですがw

とりあえず、人権保護法案は見送り

人権法案、了承得られず 自民部会で異論が続出(Yahoo!)とりあえずは、人権保護法案は見送られました。しかし、人権保護法案は過去に何度もよみがえろうと蠢動を繰…

 人権擁護委員選任の恣意性については、自民党のセンセイの仰るとおりなんですが、じゃあ現行の人権擁護委員や保護司や調停委員、民生児童委員なんかはどうなの?って思ってしまうんですよね。ボランティアで2万人使うかわりに、ある程度“積極的な人物”にも引き受けてもらうのか、きちんと報酬を支払うかわりに、きちんと審査するのか(もちろん定員は激減しますが)、それとも他に選択肢があるのか(そもそも人権擁護行政を止めてしまうとか。極論ですが)ですね。
 私は、現行の制度において“積極的な人物”の選任が社会問題となっていないことから、新制度においてもそれほど問題が起こるとは思っていません。
 ただ、民生委員に特定の宗教団体加入者が多いという指摘があるようです。このような方々が民生委員の地位を利用して生活困窮家庭に入り込み、布教活動を行っているのであれば問題です。しかし、それは「“そのような人々”が民生委員になってはいけない」とするのではなく「民生委員の活動と布教活動を結び付けてはいけない」として規制するしかありませんし、他方「“そのような人々”しか民生委員になってくれない」という問題もあります。

15: an_accusedさん>
>じゃあ現行の人権擁護委員や保護司や調停委員、民生児童委員なんかはどうなの?って思ってしまうんですよね。
人権擁護委員に関して言えば、「権限」が強化されるというのに、法案全体の根底に「性善説的解釈」が多すぎるという印象を受けました。人権擁護委員法では許されても、今回の法案ではやはり基本的に別モノで、安易に現法の条文を継承せずに慎重に議論を重ねて練り上げるべきと個人的には思います。
確かに今のネットの拒絶反応は行き過ぎの感はありますが、ここ最近の国際情勢、社会情勢を考えるとこの法案がデリケートな部分にタッチしてくるのは確かなわけで。
個人的案としては、まず一定期間人権擁護の教育を受けた公務員が責任を持って指導監督する形で人権擁護委員を雇用すべきと思います。本気で人権に取り組むのならきっちり予算を取ってやるべきです。雇用も創出するわけですから、今の場当たり的な雇用創出事業なんかの予算を回せば実現可能なはず。権限も作業量も増加するのに「ボランティア」の善意に依存するのは無理があるように思います。

 そうですね。たしかに「性善説」的な制度設計であるには違いありません。
 しかし、おそらく人権擁護委員はボランティアによって担われることになるでしょう。これには積極的・消極的理由が考えられまして、まず積極的理由としては、若年者よりもある程度社会経験を有する者の方が人権救済を必要としている場面においては必要であること、地域社会に潜む差別事象を、地域のヨソ者である公務員が発見したり介入したりすることが困難であることが挙げられます。消極的理由としては、どこから予算を引っ張ってくるのか、に尽きます。民間雇用を創出するのであれば衆参全会一致で可決されるでしょうが、公務員数を増やす政策を実現するのは難しいと思います。
 ところで、人権擁護委員の行いうる調査は法案41条に基づく一般調査であり、拒否した場合に罰則規定のある特別調査(法案44条関係)を行う権限はありません。人権擁護委員は従前と大して変化せず、地方法務局長が行っていた人権侵犯に関する調査(従来は任意)を新しく人権委員会及び事務局の職員が行うことになる(これには罰則がある)のであって、ネットで流布されているような「オカシナ人権擁護委員が罰則を振りかざして踏み込んでくる」ことはないと思うのですが。

実は、上記のコメント後段は今気付いたんです。さっきまで「そこらへんのオッチャンが人権擁護委員だからって強権振りかざされても困るなあ」って思ってたんですけど、条文読んでたら「なんか違う」って。両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命する「人権委員会委員(5名)」と、市町村長の推薦を得て人権委員会が任命する「人権擁護委員(2万名以内)」が紛らわしいです。(正直なところ、今もちゃんと読めているか自信ありません)

an_accusedさん>
現行法を良くご存知の方々は概ね楽観論であるように思われますし、それも当然だと思います。
しかし、私としては「じゃあなぜ現行法の改正じゃないのか?」という根本的な疑問が湧いて来てしまいます。
現行法を改正して、「人権擁護委員があまりにも無力で現場に支障をきたしているのでいくらか権限を与えましょう」と言う方が、はるかに現実的だし、世論の抵抗もそれほど無いでしょう。
私は「人権擁護委員が罰則を振りかざして踏み込んでくる」ような事は全然心配していないのですが、差別利権を享受する団体が、その利権構造を安泰強固なものにする為に利用されるのを危惧しますし、弁護士会の関与があまりにも大きすぎる点を危惧しています。
すみません。からんでるわけじゃないんですけど^^;;

>J2さま
こちらこそ居座っちゃって申し訳ありません。自前のエントリーを書くのが正しいのはわかっているのですが。「新法に問題なんてゼンゼン無し!」って思っているならばこんなに書かないんですが、私にも何かしっくりこない(でもわからない)部分があるものですから、こちらで胸を借りて、考えを纏めようとしているんです。

人権擁護法案提出までの流れ

人権擁護法案10年史を参考にして、流れをちょっと整理してみましょう。
1969年 1月4日 「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」が発効する。 …

12:J2さん
>でも、前回今回のエントリーは私は論旨としては賛成です。「もっと腹くくってやらんかい!」て事ですね。
ものすごく好意的な解釈ですね。
>プロレスなどでよく相手を叱咤する意味で張り手をかます事があるんですが、今回の小倉先生はそれだと思います。
私の解釈では、誰もまともに相手してもらえないレスラーが観客に唾を吐きまくっているように見えます。
とにかく、J2さん達に雑誌などの言論操作ができるところでは、あの人と話してほしくないとお願いしたくてコメントしたのでした。

すいません。またName忘れました。
>21: Anonymous at 2005年03月11日 21:58

なんかねえ。
コッチでは実質的、かつ実りある論議が行なわれていますよね。賛成・反対とか、そういう紋切り型ではなく。
世の中を良くして行くには何が必要で、どんな考え方をしなくちゃいけないのか、ってことがだんだんわかってくる。
それがさー。なんでモトネタの弁護士サイトじゃできないのか。(いや、なんでって、理由は自明なんですが)

an_accusedさん>
>こちらこそ居座っちゃって申し訳ありません。
とんでもありません。an_accusedさんの様な有意義な問題提起は他のBlogを見回してもなかなか無いと思います。感謝、感謝。
グリンファンさん>
>ものすごく好意的な解釈ですね。
そう見えるかもしれませんね。ただ、『反対するなら真剣に』のエントリーに関しては私には小倉先生の言いたい事が判るんです。
著作権法改悪に対して、ミュージシャンや音楽関係者が必死の抵抗運動をした事があったのですが、その時に法曹界から先頭切って活動を引っ張ったのは誰あろう小倉先生その人なのです。
MusicWatchDogsというサイトにその時の経緯がまとめられています。特にここらへんなど。
http://watchdogs.himajin.jp/articles/000053.php
私はご本人に実名晒して小倉先生を批判しているわけですが、だからこそ小倉先生が過去どんな事をしてきたのか、正しく知る必要がありました。グリンファンさんにもそのあたりをご理解頂けるととてもうれしいです。
正直、小倉先生はあのエントリーを書けるだけの事は実行してきていると思います。(まあネットそのものに対する氏の偏見は相変わらずなんですけども)
nomadさん>
>コッチでは実質的、かつ実りある論議が行なわれていますよね。賛成・反対とか、そういう紋切り型ではなく。
いや、正直、コメントを寄せてくださる皆さんのおかげです。nomadさんの言う「コメントも含めてコンテンツ」という言葉、ここ数日痛感しております。私だけの力じゃ、無理。マジ、皆さんには心から感謝してます。ここでの議論は自分にとってもたまらなく有意義です。

>著作権法改悪に対して、ミュージシャンや音楽関係者が必死の抵抗運動をした事があったのですが、その時に法曹界から先頭切って活動を引っ張ったのは誰あろう小倉先生その人なのです。
話としては知っています。しかし、”罪を憎んで人を憎まず”の逆じゃないですけど、あの人が、若隠居さんやJ2さんや隔離板の人たちに対してした無礼は許されないと思います。もしも実際の会議室で同じようなことがなされていたと想像すると、ボコッって逝っちゃうでしょうね。俺なら。挙句の果てに逆切れで「事件は現場で起きてるんじゃぁ」って言われてもねぇ。
 もちろん私は、J2さんを嗾けているわけじゃなく、会議室で起きたことは会議室で解決するべきだとお願いしただけです。(対談したからって何の意味もないと思います)
 って言ってる私も、もうあのBlogは見てないし、いいんですけどね。このままでも。

>あの人が、若隠居さんやJ2さんや隔離板の人たちに対してした無礼は許されないと思います。
そうでしたね。私の事はまだしも、隔離版は確かに酷かった。小倉さんの愚行の中でも最悪でしたね。仰るとおりかもしれません。若隠居さんのコメント削除にしても、結局小倉先生は「自分に非がない」というところから出発してるから全部正当化されちゃってるんですよね。
>会議室で起きたことは会議室で解決するべきだとお願いしただけです。(対談したからって何の意味もないと思います)
なるほど。グリンファンさんの仰りたい事はよく判りました。それは間違いなく正論だと思います。まあ、小倉先生から正式に対談の話が出たわけではないのでとりあえず様子を見てみます。ご忠告ありがとうございました。

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