先日お伝えした通り、音極道名義のiTS配信が無事始まった訳ですが、配信の際どのアグリゲータを選択するか、というのが自分にとっても非常に悩みどころだったので、エントリとしてまとめておきます。 "iTunesStoreに曲を配信できる"アグリゲータ、というのを一つの目安にしてピックアップします。

[国内]

  1. BounDEE

    近年台頭著しいアグリゲータらしく、サンレコ2009年2月号の特集記事でもしょっぱなに紹介されてました。WEBサイトを見る限り、アグリゲータというより殆ど『レーベル』化してる印象。スペースシャワーTV系列の資金力をバックに、米国大手アグリゲータであるIODAと業務提携するなど大掛かりなビジネス展開。
    BounDEE取締役である福岡智彦氏のサンレコインタビューを読んでも、意図的に「レーベル」的役割を担っていこうという理念が読み取れます。
    国内アグリゲータとしてはおそらく一番充実した流通ルートを持っていると思われます。特にIODAとの提携によって、海外へのリーチはヘタなメジャーレーベルより強いでしょう。そこが最大の魅力。短所は、良くも悪くも発想が既存の音楽レーベルに近いところ。自分はそれが理由で選択しませんでした。配信時の利益配分率や流通ルート等、ミュージシャンにとっては情報開示が少なすぎるのも気になるところです。でも多くのプロを目指すミュージシャンにとっては超有力な選択肢の一つでしょう。


  2. viBirth

    2007年11月スタートのアグリゲータですが、2008年7月にMySpace公式ストアとしてリニューアルし、俄然注目を浴びるようになりました。
    アーティスト登録すると、月額¥3150で30GBまで曲ファイルをUP可能。viBirthが確保する流通ルートから配信したいサイトを選ぶと審査手続きをviBirthで代行。晴れて審査が通れば販売登録申請や権利処理、支払等すべてviBirthが代行するというシステム。ライツスケールが運営パートナーとなってます。運営会社は(株)ブレイブで、株式の60%を(株)フェイスが持ってますが、タイトーやスクウェアエニックスが資本参加しているあたりが興味深いです。販売サイトはiTunesStoreのほか、Napster、GIGA MUSICフル等。
    やはりなんといってもMySpace公式というのが最大の強みでしょうか。iTSの場合で利益配分56%というのも良心的な部類と思います。月額¥3,150を高いと見るか安いと見るかですが、1年で¥37,800、一方でリリースする楽曲数の制限が無いので、多数の曲を配信する程、1曲あたりのコストは下がります。年間30曲リリースした場合、1曲あたりのコストは年間¥1,260で、CDBabyまでとは言わないまでも、割高感はかなり軽減されます。


  3. Mind Peace

    最終的に音極道の楽曲配信に選んだアグリゲータです。国内アグリゲータでは老舗の部類に入ると思います。料金は一括プランと月額プランがあり、各プランでも内容によってさまざまなメニューになってますが、最安値のプランだと1曲月額¥150、年間¥1800で全提携サイトからの有料配信が可能です。一括だとライトS1というプランが年額¥15,000。このプランだと著作権管理はアーティスト自身となります。私が選択したのは、ライトL1という1年契約¥38,000で、提携先サイトの有料配信に加え、Amazonの陳列・発送までフォローしてくれる内容です。著作権管理も追加料金無しで代行してくれます。提携先販売サイトは、iTunesStore(Yahoo Japan Musicにもインデクスされます)の他、HMV★うたフル、CD販売先としてAmazonとなります。
    年額¥38,000は1年スパンで見るとviBirthとほぼ同額。viBirthでは楽曲数に制限なし(30GBの制限のみ)で、Mind Peaceは上限30曲。利益配分は卸値の90%(販売価格では無い)。こちらも良心的な配分と思います。
    正直viBirthとMind Peaceはかなり悩みました。結局Mind Peaceにした理由は大きく2つ。まず、携帯販売サイトであるHMV Mobileが3キャリア公式サイトであること。売れる売れないは別としても、日本でもっとも市場規模の大きい「着うた」市場でのマーケティングはどうしてもやっておきたかったというのがあって、提携先がDoCoMoに偏っているviBirthよりもMind Peaceの方がその意味で勝っていました。そして2つ目の理由は、自分がBounDEEを候補から外したのと関連するのですが、今後、様々な販売形態を試していこうとした時に、場合によっては無理なお願いをするかもしれない、そういった時に個別に相談できる関係を持ちたい、密なコミュニケーションが期待できるところが良いというのがあって、大資本がバックにない、インディペンデントな感じがCDBabyを彷彿とさせるMind Peaceになんとなく期待させるものがあったというのが決め手でした。そして(今のところ)十分期待どおりの対応をしていただいており、自分の判断は間違ってなかったと感じてます。
    ただ注意したいのは、原盤権を自分とMind Peaceとで共有する契約(ただし比率は99:1)になる点。著作権管理を代行してもらうと著作権も共有(99:1)という形になります。また、代行の場合は管理委託先はeライセンスに限定される点も注意。人によってはこれらの条件でNGという場合もあるでしょう。自分も悩みましたが、原盤権に関しては、アグリゲータと「密なコミュニケーション」を求める上ではむしろトレードオフとして必要かなと割り切りました。著作権管理については、とりあえず1stリリースがパブリックドメインな楽曲だったので良いとしても、今後に関しては保留です。場合によっては代行委託せずに著作権管理団体に直で依頼する道も検討中です。


  4. recommuni

    日本の音楽系SNSの草分け的存在。以前は完全招待性でしたが久々にアクセスしてみると普通に自分で登録できました。ちょっとまだ詳細を把握できてませんが、前述したサンレコ2009年2月号の記事には、レコミュニ内でのダウンロード販売に留まらず、「iTunesStoreや着うた&着うたフルサイトへのディストリビューションを委託することもできる」、との記述があります。


[海外]

海外のアグリゲータに関しては、既に先達の素晴らしいレポート記事が多数ありますので、それらの記事も併せてご紹介していきます。

  1. CDBaby

    まさに"WEBにおける個人音楽販売"のムーブメントを作りだした『源流』と言える超有名サイト。リンクは日本向けの窓口サイトです。CD販売がメインですが、iTunesStore等のダウンロード配信にも対応。詳しくは以下のリンク先の秀逸なレポートを読むのが一番わかりやすいと思います。
    iTunes Store デビューへの道(完結編)
    また、CDBabyという素晴らしいサイトがなぜ生まれたかが以下を読むとわかります。
    独立系ミュージシャンのサバイバルを助ける本物の漢


  2. TuneCore

    ダウンロード販売のみを考えるならこちらも有力な選択肢。ややコスト高という指摘もありますが、ロイヤリティが100%還元されるので販売数を多く見込めるアーティストであれば十分に相殺できるでしょう。TuneCoreに関してはtakeruiさんのエントリが参考になります。
    iTunesストアデビューだけならTuneCoreの方がよいんじゃないか。
    CDBabyかTuneCoreか - その損益分岐点


  3. IODA

    先述したBounDEEの提携先、サンフランシスコのアグリゲータ。直接IODAを利用する機会はあまり無い気もしますが、サイトを見るとそのポテンシャルが想像できます。BounDEE経由でこれらのコネクションが有効に機能するとすれば、かなりの魅力です。特にOur Partnersのページは、海外配信サイトのアーカイブとしても利用できそうな充実ぶりです。


  4. The Orchard

    米国の大手アグリゲータの1つですが、情報が少なすぎるので日本からOrchardを利用するメリット等はちょっと不明です。Tokyo Officeがある様な記述が見受けられますが詳細はちょっと不明です。すみません。


以上、ざっと名の知れたアグリゲータはとりあえずピックアップしてみました。おそらく2年後、3年後にはまた状況が大きく変わっているのかも知れません。
音極道としては、Mind Peaceとの1年契約を中心に、状況によってはCDBabyを併用した配信を模索していく予定です。

最後に、HMV★うたフルでの配信が無事始まったのでこの場を借りてご報告します!以下のQRコードからアーティスト検索結果画面に直接飛べます。
HMV検索ページQR

このエントリーは、Music Hacks第1回目のエントリー、JPOPサウンドの核心部分が、実は1つのコード進行で出来ていた、という話のフォローエントリーです。Music hackの中で取り上げたすべての楽曲について、YouTubeで原曲を見てもらえる様にリスト化しよう、という意図です。 ニコニコ動画のアカウントが無くてMusic Hacksの方の動画が見れない方は、お手数ですが、この際ですからアカウント取ってください。無料ですので。 とりあえず取り上げた順番にYouTube貼っていきます。一言コメント付き。

瞳をとじて [平井堅] (2004)

非常にオーソドックスな「王道進行」かつ「比較的最近の大ヒット曲」ということで冒頭にもってきました。ニコニコの年齢層を考慮しても、「瞳をとじて」なら覚えてるでしょってことで。SPEEDあたりはもうリアルに知らない若い子とかいそうでゾっとします(笑)
♪瞳をとじて


オリビアを聴きながら [杏里] (1978)

チューリップの財津和夫とかも「王道進行」っぽいコードを使ってて、古さで言えばそちらの方が古かったのですがちょっと変則気味だったので、オーソドックスな「オリビア」の方を取り上げました。
♪オリビアを聴きながら


いとしのエリー [S.A.S] (1979)

"勝手にシンドバット""気分次第で責めないで"と続いたことで定着しつつあった、コミックバンド的な評価を一変させた曲。そういう意味でサザンにとっても最初の勝負どころだったんだよなあ。1979年の時点でそういう大切な曲に王道進行もってくるあたりが桑田の非凡さ。
♪いとしのエリー


悲しい色やね [上田正樹] (1982)

この曲は全然JPOP臭がしないです。その秘密はメロディラインにあります。佳作だと思います。
♪悲しい色やね


シーズンインザサン [TUBE] (1986)

上田正樹の逆で、TUBEってすごいJPOPっぽい。むだにJPOPっぽい。なんだろうこの感覚。
♪シーズンインザサン


世界でいちばん熱い夏 [プリンセス・プリンセス] (1989)

日本のポップス史の中で一番「JPOP」を体現したのがプリプリの様な気がする。JPOPの教科書的なソングライティング。サビ前のBパターンも王道進行。
♪世界でいちばん熱い夏


ロビンソン [スピッツ] (1995)

この曲も全然JPOP臭がしない。そして"悲しい色やね"と全く同じ工夫がメロディラインに施されてるのが興味深い。
♪ロビンソン


White Love [SPEED] (1997)

この曲はSPEEDのシングルで一番売れた曲。そういう曲に王道進行が使われてるパターンってすごく多いんです。
♪White Love


LOVEマシーン [モーニング娘。] (1999)

データ調べてませんがこれもモーニング娘。で一番売れた曲、のはず。 この曲のコード進行は王道進行としては若干変則的で、冒頭からⅣ→Ⅴと、7th音が無い。
♪LOVEマシーン


Everything [MISIA] (2000)

王道進行をサビの後半にもってきているパターン。この曲は富田恵一のアレンジ含め、すべてが「王道」的な感じ。
♪Everything


Fragile[E.L.T] (2001)

王道進行をひたすら前面に押し出した平凡な曲。これを「いい曲」と感じちゃうリスナーがいるのは理解できるんだけど、作り手としては批判的にならざるを得ません。
♪Fragile


さくら[ケツメイシ] (2005)

この曲も一般の人達にはすごくウケがいいし、それは理解できる。 でも王道進行にまんまラップを乗せた安直さは、ある意味JPOPを10年遅らせたとも言える。聴いててすごく複雑な気分になる曲。
♪さくら


Can't Take My Eyes Off You[Boys Town Gang] (1982)

この曲とGive Me Up、2曲ともコード進行としては冒頭Dm9。このあたりはJAZZのⅡ→Ⅴからの流れという意味合いの方が強いのかも。それにしても気持がいい曲です。
♪Can't Take My Eyes Off You


Give Me Up[Michael Fortunati] (1986)

この曲を、特に若い年齢層の人がどれくらい知っているのかすごく興味がある。
♪Give Me Up


I Should Be So Lucky[Kylie Minogue] (1988)

今のカイリーミノーグから比べると別人の様なアイドル路線。逆に言うとそれだけサウンド的に進化を遂げた今のカイリーミノーグと、いまだにmihimaruGTとかが20年前のI Should Be So Lucky をカバーしちゃう日本の状況。要するに20年遅れてる。
♪I Should Be So Lucky


Together Forever [Rick Astley] (1988)

この曲はオッサンホイホイかなあ。今の人は知らなそうだなあ。どうなんだろう?
♪Together Forever


大迷惑 [ユニコーン] (1989)

超大胆なアレンジとオーケストレーションのお陰で、王道進行が隠し味くらいにしか感じない。才能って素晴らしい。動画の方で敢えて弾かなかったのは、ピアノじゃどう考えてもこの曲の素晴らしさを伝えられないから。
♪大迷惑


だいすき [岡村靖幸] (1988)

この曲もメロディラインが個性的なんで王道進行をほとんど意識させない。これもピアノではメロディラインの味わいを伝えられないと思って弾きませんでした。
♪だいすき


夢のうた [幸田來未] (2006)

エイベックスのここ最近の手抜きっぷりはなんなんだろう?バラードとか特に。逆にアーティストがかわいそうになる。
♪夢のうた


偶然の確率 [GIRL NEXT DOOR] (2008)

誰かが、"avexで「社運をかけた」ってフラグだよね"って言っててまったくだと思った。
♪偶然の確率


Drive Away [GIRL NEXT DOOR] (2008)

デビュー曲もビックリしたけど、これはもっとビックリした。
♪Drive Away


ここしばらく開店休業状態だった当ブログですが、更新を再開します。本家サイトの『音極道』の方も近々リニューアルオープンします。

で、いろいろ思うところがあり、唐突ですが本日より本格的に「生業として」音楽活動をスタートしようと思います。活動名義はサイト名である『音極道』をそのまま使用することとしました。
なお、今後自らの音楽活動に関するエントリーは新ブログ「音極道 Music Hacks」の方にリリースしていきますのでこちらも併せてよろしくお願いします。

以下、活動指針をニコニコ宣言に倣って宣言してみます。


第一宣言 一切の音楽出版社、音楽レーベル等に所属しません

音楽制作コストが劇的に低下し、WEBを利用したプロモーションもある程度機能する様になってきた昨今、もはや「音楽出版社」「音楽レーベル」の存在意義は失われつつあります。 「ポスト・レーベル」時代のモデルケースとなる様、制作・プロモーション・販売に至るまでを各種WEBサービス等を利用しながら独力で行います。


第二宣言 ミュージシャンの新しいビジネスモデルを模索し、先駆となることを目指します

2007年10月、リスナーが自由に価格設定してmp3ファイルをダウンロードできるという画期的試みでレディオヘッドが新作をリリースしたのは記憶に新しいところです。その後もナインインチネイルズやシャーラタンズなどの有名アーティスト達がさらに踏み込んだ形でこの「革命路線」を継承しています。
またインディーズアーティストにおいても、梅田望夫氏の『ウェブ時代をゆく』でも取り上げられたJonathan Coultonのような、WEBをフル活用した新しいタイプのミュージシャンが生まれ始めています。
このような、新しい音楽ビジネスモデルの「日本におけるモデルケース」となれる様、独自の試みも織り交ぜながら、試行錯誤していきます。


第三宣言 ミュージシャンの新しい著作権行使のあり方について模索し、先駆となることを目指します

著作権に関しては、ここ最近特に活発な議論がなされており、私自身そういった議論にはおおいに興味があります。
しかしながら議論には「限界」があります。結局、著作権のあり方を決定するのは議論ではなく著作権「行使」の場面であり、著作権利者の考え方一つで法律に関わらず社会の現実は変わってしまうからです。
例えば(あくまで例えばです)、「ダウンロード違法化」が著作権法において現実のものになってしまったとしても、すべての著作権者がすべての作品のネット配信を認めた瞬間、事実上「違法ダウンロード」というものはこの世に存在しなくなるわけです。
私自身が著作「権利者」となってその権利を様々な形で行使することにより、「新しい著作権のあり方」についてのモデルケースとして、様々な実証データを提供していきたいと思います。


第四宣言 "Music Hacker"を目指します

旧『音極道』本家サイトには『模倣道(パクリ道)』というコンテンツがありました。
毎回ある楽曲を題材として、その内部構造を徹底的に明らかにした上でそれを模倣した曲を発表していく、という試みでした。
ある日、「Music Hack」という言葉が唐突に頭に浮かんだとき、「ああ、"模倣道"で自分がやりたかったことって音楽を"Hack"することだったんだな」と悟りました。 ハッカーと呼ばれる人々にとっては、「先人のコードを読むこと」「自らがコードを書くこと」が表裏一体でありフラットだという感覚があるのではないかと思うのです。 私が音楽でやりたいこともまさにそれで、「先人の楽曲を読み解く」フェーズがすでに単なるアナリーゼではなく「創造」だという感覚。
例えば、菊池成孔などはまさに尊敬すべき「Music Hacker」であり、彼(と大谷能生)の著作である『東京大学のアルバートアイラー』『憂鬱と官能を教える学校』 といった作品群そのものが「Hack」であり「コンテンツ」であり「創造」であると思うわけです。 『音極道』は今後、極めて異端で独自性の強い音楽活動を展開していくと思われますが、それらはすべて「Music Hack」という基本コンセプトの元に展開していきます。

2008年 9月16日

J2 a.k.a. 音極道


『WEBミュージシャン』としての記念すべき最初のリリースは「バッハ イタリア協奏曲 BWV 971」のピアノソロです。 最終目標は、「全楽章の演奏を自ら録音・マスタリングしてiTunes および着うたサイトから有料配信する」ことですが、プロモーションの一環として練習風景をニコニコ動画にUPしてます。今回の演奏に関して、「グレングールドと同じテンポで弾く」ことを自ら課した裏テーマとしています。 なぜいきなりバッハなのか?グールドと同じテンポで弾くことに意味があるのか?などの詳しい経緯についてはこちらのエントリーにて解説していますので興味のある方はぜひそちらを読んで頂ければと思います。

あらためて「音楽家」として、末永く活動していきたいと思っていますので今後とも音極道をよろしくお願いします。

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