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Music Hack

JPOPサウンドの核心部分が、実は1つのコード進行で出来ていた、という話

Music Hack 1回目は、JPOPにおける、あるコード進行の話です。
これおそらく多くのミュージシャンが薄々気づいていたんだろうけど、誰もきちんと語ったことの無い話題で、だからそれを明らかにするのはスゴク有意義なことだと思ったんですが、とにかく語りたい事が多すぎて、最初のテイクでは1時間以上になってしまって焦りました。
そこから大幅に内容を削ると、今度は何を言いたいのかさっぱり判らない内容になってしまうというジレンマに陥り…なんとか前後半合わせて23分ほどの話に収まりましたが、
動画にコード進行のテロップを入れていく作業も意外とめんどくて手こずってしまったり。そうこうしているうちに予定から3週間以上もオーバーしてのエントリーとなってしまいました。人に何かを伝えるというのはホント難しいです。
まずは動画の方を見ていただきましょう。ニコニコ動画がJASRACと提携してくれたおかげでこういうコンテンツを合法的にUPすることができるわけです。ありがたいことです。
前後半に分かれてます。
こちらが前半。
【ニコニコ動画】JPOPサウンドの核心部分が、実は1つのコード進行で出来ていた 前編
後半。
【ニコニコ動画】JPOPサウンドの核心部分が、実は1つのコード進行で出来ていた 後編
いくつか補足です。まず”JPOP”という単語ですが、ここでは深く考えずに、「日本の商業音楽全般」を指す単語として使ってます。
あと、後半まとめの所、才能あるけどシングルがヒットしないアーティスト云々の話の部分で、「90年代」と言ってますが、例に挙げたユニコーンも岡村靖幸も80年代のシングル曲でした。よって「80年代後半」の誤りです。この場を借りて訂正させていただきます。


「王道進行」がなぜ日本人の琴線に触れるのか、についての考察

この話題も、1時間でも2時間でも語れる様な深い話なんですが、わかりやすーく端的に言うと、
「メジャーとマイナーの中間を漂う浮遊感」
これがキーワードです。
ここでいうメジャー、マイナーはもちろん「調性」の話です。
王道進行の最初のコード、サブドミナントというのは、それ自体に調性を保留する機能がある上に、ドミナント7の後トニックにいかずにⅢm7にいくあたりで、調性の保留感がさらに強まって、あげくに最後マイナーに方に終止しちゃうっていう。
使いどころによってはかなり調性感をあいまいにする進行なわけです。
そして、「メジャーとマイナーの中間」というのは、実は王道進行だけでなく、JPOPで好まれるコード進行全般にみられる特徴なのです。
もっと話を広げると、日本に限らず、全世界的に「ポップミュージック」におけるロマンチシズムってのはメジャーとマイナーの調性の揺らぎが生み出すという話にまで発展してしまうので、このくらいにしておきますが、いずれにしてもそういうことです。
この話題は、「なぜ戦メリのテーマは日本人に好まれるのか」というタイトルに置き換えてもいいかもしれません。戦メリのテーマ、イントロは王道進行そのものだし、構成音的にも王道進行に通じる部分があります。
うーん、やはりこの話題は機会があれば改めて取り上げた方が良いかも、ですね。


あと、音極道茶室の方に、今回のHackで取り上げたすべての曲の原曲が確認できるYouTube動画リストをエントリーにしてますので、そちらもよろしければ。

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ソロピアノ

バッハ イタリア協奏曲3楽章をグールドのテンポで弾いてみた

記念すべきリリース第一弾に、オリジナル曲ではなくクラシックを選択するというのは、自分でも予想外だったのですが、この決断は我ながら面白い選択ではないかと思っています。

それは以下の理由からです。

  1. 自分にとってクラシックは音楽歴の原点であること
  2. そしてバッハは、あらゆる商業音楽のルーツであり原点でもあること
  3. 演奏者自身の録音・マスタリングによる(アレンジを伴わない)クラシック楽曲配信というのはおそらく前例が無いこと
  4. アグリゲータ業者が「クラシック」(というパブリックドメインな)楽曲をどのように処理するのかというテストケースになること
  5. CCライセンスを「パブリックドメイン」な楽曲の著作隣接権にのみ適用したい場合のテストケースになること
  6. (上記4,5に関連して)アグリゲータ業者経由の配信でCCライセンスの適用が可能かというテストケースになること

当初は、全曲フリーダウンロードでこのサイト上でのみ公開を考えていましたが上記の項番3~5に思い当たり、良い機会なのでコンテンツアグリゲータを利用した有料配信に挑戦してみようと思った次第です。

今回の最終目標はアグリゲータを利用して『イタリア協奏曲』全楽章をiTunesStoreおよび着うたサイトにて有料配信することです。
と、簡単に言っちゃってますが恐ろしくハードルの高い事をやろうとしているわけで(笑)、当然目標を達成できない確率も相当あるわけですが、その場合も含めてチャレンジの過程を随時報告していこうと思います。

今回の動画は、上記計画の途中経過&プロモーションとしてUPしたものです。
リリースまでにはまだまだクオリティを上げていきます。この動画では特に(録音上の理由もあり)ベロシティが均一過ぎてエモーショナルな表現に至っていません。100%納得できるレベルで配信までもっていきたいと思います。
ニコ動へのUPも初めてでしたが、後半音ずれが発生してしまっていることや、音声レベルが低すぎたことなど反省点が多々ありました。このあたりの動画作成ノウハウも経験を重ねながら体得していきたいです。

では前置きはこのくらいにして楽曲の解説です。
『イタリア協奏曲』はバッハの作品の中でも特に人気の高い曲の1つです。
「協奏曲」といいつつピアノ(チェンバロ)独奏曲なのですが、楽曲構造として典型的な協奏曲の形式が採用されていて、これはバッハが生前多数の協奏曲をチェンバロ用に編曲したことが影響している様です。

イタリア協奏曲は、あの『のだめカンタービレ』にも登場します。
単行本の18巻にあたる部分ですが、のだめが初めて開いたサロンコンサートの1曲目です。
のだめが三楽章の演奏を始めた時、ある観客が「速っ」とつぶやき、やがて観客達の表情が上気し笑顔になり、演奏が終わると同時に「ブラボー!」「情熱的なバッハね」と称賛する…。
のだめが通常より速いテンポで躍動的に演奏を始め、それが観客の高評価に繋がっていくという流れがほんのわずかな表現で的確に読み取れる素晴らしい描写です。

バッハの演奏において、テンポがいかに重要かを世に知らしめたのは二十世紀最高のピアニストと称されるグレングールドでした。
カナダの田舎から13歳で彗星のごとくデビューし、『ゴルトベルグ変奏曲』で世界的スターとなり、32歳で全てのコンサート活動を停止した不世出の天才。
若きグールドの貴重な映像が『On the Record Off the Record』(邦題 グレングールド27歳の記憶)というDVDとなっているのですがこの映像に収められたレコーディング風景が奇遇にも『イタリア協奏曲』の録音シーンです。
そして「三楽章」の最終テイクをプロデューサーと一緒に確認するシーン。そこでグールドは自らの演奏を
「良いテンポだ」「速すぎない」
と自画自賛します。強烈に速く躍動感溢れる演奏をして「速すぎない」と言い放つグールドがマジかっこ良すぎでシビれるわけですが(笑)彼がいかに「テンポ」を重要視しているかが垣間見えるシーンです。

今回のリリースに際しては、「グールドと同じテンポで弾く」事を裏テーマとして掲げているのですが、当初の目的はあくまで「自分の演奏力をピーク時に戻すリハビリ」の為でした。
しかし、練習を重ねるにつれ、それが単なるリハビリではなく「音楽的帰結」を意味するものだと認識させられました。
要するに「指が動く」ことに意味はなく、そのテンポに「音楽的必然性」を感じなければまったく「良い演奏」に聴こえないということです。

グールドのレコードではこの「三楽章」を実質およそ2分58秒で弾き切っています。今回の動画では実質演奏時間が2分57秒で、「グールドと同じテンポ」という目標はとりあえず達成できてはいるんですが、重要なのは音楽としての完成度をどこまで上げられるか、ですね。精進します。

【ニコニコ動画】バッハイタリア協奏曲3楽章をグールドと同じテンポで弾いてみた

–追記–
YouTubeにもUPしました。

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