「NHK番組のネット配信、55万コンテンツ全面解禁!」とか安易に信じない方がいい

| コメント(0) | トラックバック(2)

NHKの持つ膨大なコンテンツがネットで全面解禁になるかもよスゴイね!という類の話が幾つかのメディアで報道されて話題になっている。

折りしもフランスでは、国立視聴覚研究所(INA)のアーカイブ10万件がインターネットで閲覧可能 になったばかりだし、「すわ日本もか!」と盛り上るのは無理も無い。

しかし、日本のメディアというのはどこまでも信用ならない様だ。油断のスキも無い。

まずは5月5日早朝の読売記事から見てみよう。以下、全文引用。

NHK番組のネット配信、07年度にも全面解禁

 竹中総務相の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」(座長・松原聡東洋大教授)は4日、NHK番組のインターネット配信について、2007年度にも全面解禁する方向で最終調整に入った

 約55万本にのぼるNHKの番組を有効活用する狙いで、5月中にまとめる最終報告に盛り込む。

 NHK番組のインターネット配信は、総務省の指針で業務の規模で年10億円程度まで認められているが、この上限を撤廃する。ネット配信は、受信料を充てるのではなく、利用者に直接課金する方向で検討しており、利用者の直接負担を禁じた放送法の改正を視野に入れている。

 NHKが保有する過去の番組は約55万本あり、埼玉県川口市のNHKアーカイブスなどで約5700本の番組が公開されているほか、通信事業者を通じて、一部番組を有料で提供している。しかし、懇談会では国民的な財産であるNHKの番組が十分活用されていないとの意見が大勢を占めている。

 同時に懇談会では、NHKのチャンネル数削減や子会社の整理・統合を進めて業務範囲を縮小する方針を固めており、これらを進めることでネット配信の全面解禁に反対している民放側の理解を得たい考えだ。

 また、テレビ番組のネット配信を巡っては、出演者などの著作権処理のルールが定まっておらず、権利者から番組ごとに個別に許諾をとる必要がある。

 このため、懇談会では、俳優、作曲家、レコード会社など業界ごとにある著作権管理団体が権利者の権利を集中管理し、許諾手続きを簡素化できるような体制の整備を求める方向だ。

 ただ、権利者側は、配信を差し止める権利がなくなるなど権利の切り下げにつながるとの警戒感が強い。このため、配信可能な番組の範囲は、今後議論される権利処理のルールにも影響される見通しだ。

(2006年5月5日3時0分 読売新聞)


この記事は、かなり詳細な内容に踏み込んでいるし、具体的な数字も出ていて信憑性も高い様に感じられる。

ところが、だ。この記事の当事者であるはずの松原聡東洋大教授のサイトを読んでみると唖然とする事が書いてある。以下抜粋。


 しかし、最近の新聞報道については、座長としては一切取材を受けておりません。どういうソースでの報道なのか、正直、見当がつかないでいます。特に、本日(5日)の読売新聞。「NHK番組、ネット配信全面解禁へ」という記事にはちょっとびっくりです。「懇談会は4日、最終調整に入った」とありますが、座長の松原は取材を受けておりませんし、最終報告案をどうするか、で一人で熟考中。竹中大臣はたしか外遊中のはず。4日に懇談会の誰が「最終調整に入った」のでしょうか・・・。
 また、記事の中身にも問題があります。NHKは55万本の過去の番組があり、そのうちの5700本しか公開していないとあります。その通りなのですが、「インターネット配信の上限が10億円」だから、公開が遅れているのではなくて、過去の番組の中で、5700本しか権利処理が済んでいないから、遅れているのです。(もちろん、10億円という上限に問題があることは間違いないのですが・・・)。10億円を撤廃したからといって、55万本が公開されるわけではありません。
 さらに言えば、これは私自身が調査を依頼して、その結果を見て驚いたのですが、その5700本の権利処理も、インターネット公開ではなくて、「施設内公開」で取っているそうです。川口市の施設などに行かない限り、この5700本も見られないわけです。NHKは、過去の番組をインターネットで配信する気は、最初からなかったと考えざるを得ないのではないでしょうか。(5月5日)


要約すると、


  • 座長の松原聡氏は、マスコミの取材すら受けていない

  • 「最終調整」に入ったなんて話は当の座長松原氏も寝耳に水

  • 公開が遅れている要因は、10億の予算上限ではなく権利処理

  • 権利処理済と思われた5700本も、施設内公開の権利であり、現状ネット配信は無理

    (つまりネット公開可能コンテンツは現状ゼロ)

要するに、ハッキリ言ってこの読売記事は飛ばし。

そして、この読売記事から18時間以上もたった後、共同通信が以下の記事を配信。全文引用。

ネット配信全面解禁を検討 50万本のNHK番組

 【香港5日共同】竹中平蔵総務相は5日夕、訪問先の香港で同行記者団と懇談し、過去に放送されたNHK番組のインターネット配信を全面解禁する方向で検討すべきだとの考えを表明した。
 NHKが保有する過去の番組は約50万本あるが、竹中氏は「NHKが持っているコンテンツ(情報の内容)をもっと活用するのがNHKのため、国民のため、関連する産業のためだと思う」と強調した。
 さらに、総務省の指針で年間上限10億円程度としているNHK番組のネット配信の規模についても「足かせになっている。どのような形でクリアしたらいいか議論しないといけない」と述べ、改正に前向きな意向を示した。
(共同通信) - 5月5日21時56分更新


誰がいつ何処で語ったかが明記されてる点で、読売記事よりは良い。しかし、この記事にしても結局


  • 誰が=竹中大臣が

  • いつ=5日夕

  • どこで=外遊先の香港で

  • 誰に=同行記者団相手に

語ったと言うだけの話。

どう見たって、これ竹中氏の個人的見解だろう。記者会見ですらない。ニュースバリューとしてはなんとも心許ない。「検討すべき」と言ってるって事は、逆に言えば「今はまだ検討すらしてない」って事の証左だし。

おそらく外遊先で唐突にこんな話が出たのも、読売の飛ばし記事がトリガーだろう。語ったのが5日夕というのがいかにもそれっぽい。そして、竹中大臣の意に関わらず、現状のNHKの状況は松原氏がサイトで語っているような体たらく。

なんだかなあ。もちろん、竹中大臣も松原氏もNHKコンテンツのネット解禁には前向きな訳で、そこには私も期待するけどしかしながら、少なくとも報道のニュアンスと現実とでは、あまりに乖離があり過ぎる。

こんな、政治的立ち位置とほぼ無関係な記事でさえ、いちいち疑わないとならんのか。日本のメディアはどうかしてます。

トラックバック(2)

トラックバックURL: http://www.virtual-pop.com/admt/mt-tb.cgi/154

「NHK番組のネット配信、07年度にも全面解禁 : 経済ニュース : 経済・マネー : YOMIURI ONLINE(読売新聞)」へのカウンター記事。 なんだ... 続きを読む

【第7回】ネット進出より“おいしい”キー局と地方局の関係 (ネット狂騒時代、テレビ局の憂鬱):NBonline(日経ビジネス オンライン) テレビ業界の中の人じ... 続きを読む

コメントする

アーカイブ

Powered by Movable Type 4.2rc3-ja