知られざるワールドクラスの日本人ダンサー達

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例えば、テニスの錦織選手が大きな大会で勝ち進むと世間の注目が一気に集まる。オリンピックでノーマークだった種目で金メダリストが突然現れた時なども、一気にその種目がクローズアップされる。それはどんな分野であれ世界の舞台で活躍する日本人の姿が、多くの人に夢や希望、誇り、感動を与えてくれるからだろう。
しかしながら、世界の舞台で素晴らしい活躍をしても、一般のメディアにはあまり取り上げられない分野が多々あるのも事実。「ストリートダンス」も残念ながらそのような分野の一つだ。
あまり知られていないが、日本のストリートダンスのレベルは世界でもTOPクラス。もしオリンピックの種目でストリートダンスの団体戦があったならば、アメリカ、フランスと並んで日本も有力な金メダル候補の一角になるだろう。そんなストリートダンスがなぜ一般のメディアにあまり取り上げられないかといえば、ひとえにメディアの無知と勉強不足とは思うのだが、じゃあどこで勉強するんだと問われても、確かに一般の人向けに噛み砕いて解説している体系化されたストリートダンスの情報ってほぼ皆無だったりする。
 当ブログでは、ここ数年身も心もストリートダンスに嵌りまくっているブログ主が、一般にあまり知られていない日本のストリートダンスシーンの魅力を、一人でも多くの人に伝えていきたいと考えている。その第一弾として、本エントリーでは、知られざる日本のTOPダンサーの面々を詳しく紹介していきたいと思う。
ちなみに「知られざる」というのは、あくまで一般の人々に、ということであって、当然ダンスシーンの中では超有名な方々ばかりです。念のため。

1. Hilty & Bosch(Lockin’)

YOUとJINの2人組ユニット。メインジャンルはLockin’。読みはヒルティアンドボッシュ。ストリートダンスのジャンルについては、別の機会に詳しく取り上げる予定だが、Lockin’(ロッキン、ロックダンスとも呼ぶ)というジャンルは1960年代末~1970年代初頭に誕生したストリートダンスの中でも最も古くからあるジャンル。で、欧米ではやや古臭いジャンルと思われている節があって、このジャンルのダンサー人口はそれほど多くない。そのちょっと古臭いと思われていたジャンルで、日本から来た二人組が、凄まじいスピードと機械の様に正確無比なムーブでCoolに踊る様は世界に衝撃を与え、一気に世界の注目を浴びた。
 彼らが大ブレイクしたのは2004年~2005年で、まず2004年にJapan Dance Delightで優勝。この大会は、高校野球なら夏の甲子園、プロ野球なら日本シリーズに匹敵する、日本で最も歴史と権威のあるコンテストで、その大会を最年少最少人数という記録付きで制覇した彼らは、その勢いのまま翌2005年、当時ストリートダンスの世界3大大会の一つと言われていたUK B-Boy ChanpionshipsのLockin 2on2部門も制覇してしまう。その後は、RedBull BC Oneや、Battle of the Yearといった世界のビッグイベントのショーケースゲストとして相次いで招聘され、その人気を不動のものにした。彼らがブレイクした2005年は、YouTube誕生の年でもあり、なんとも象徴的。
 紹介する動画は毎年ドイツで行われている世界的なダンスセミナーイベント、UrbanDanceCampでHilty & Boschが講師として招かれた際のエキシビジョンの模様。ダンスの後、観衆が一斉に靴を投げつけているのはダンサーに対する最大の敬意の表し方で、たぶん「そんな踊り見せられたら私はダンスシューズを脱ぐしかないわ」って感じのニュアンスだと思う。

2. GoGo Brothers(Lockin’)

Hiltyと同じくLockinをメインジャンルとする兄弟(REIとYUU)2人組ユニット。父親がTonyGOGOというアメリカの偉大なストリートダンサーで、日本に本場のストリートダンスを広めた最大の功労者の一人。TonyGOGOは、Lockinというジャンルの創始者と言われる伝説的ダンスチームThe Lockersの正式メンバーにもなったレジェンド的存在で、その彼が日本人女性と結婚して1981年から日本在住となり、精力的にストリートダンスの歴史やスタイルを伝承していったことが、今日の日本のストリートダンスシーンの隆盛に繋がっている。
 そのTonyGOGOの直系であるGOGO Brothersはまさにサラブレッドで誰からも一目置かれる存在だったが、2006年、前年のHiltyに続いてUK B-Boy ChanpionshipsのLockin 2on2部門で優勝、さらに2007年、現在Lockinバトルでは世界最大の大会であるJuste DeboutのLockin部門で準優勝してその実力を証明してみせた。
 ダンススタイルはスピードで圧倒するHilty & Boschとは好対照で、全身から発散される日本人離れしたGroove感覚が最大の持ち味。動画はOcean Battle Sessionという中国のバトル大会でのジャッジデモの模様。実父のTONY GoGoと共演しているレアな動画。

3. Co-thkoo(Poppin’)

Gucchon(グッチョン)とKEI(ケイ)の2人組Poppin’ユニット。読みはクスコー。
Poppin’はLockin’に次いで歴史のあるジャンルで、音楽に合せて筋肉を弾く”Pop”という動作を主体にして、ロボットダンスやアニメーション、パントマイムなどの要素を取り入れた「不思議な動き」で魅せるダンススタイル。マイケルジャクソンで有名になった「ムーンウォーク」(正式にはBack Slide)もこのPoppin’のムーブである。
Co-thkooの海外実績は凄まじく、スタンディング系のジャンルでは世界最大のバトルイベントであるJuste deboutにて優勝2回、準優勝2回、さらにGucchonはソロでも2008年にUK B-BOY Chanpion shipsのチャンピオンに輝いている。
卓越したボディコントロールとミュージカリティ、どんな相手にも対応できる多彩な引出しの多さが特長。動画はFunkzilla Gameという台湾のバトルイベントでのショーケースの模様。

4. フォーマーアクション(Poppin’)

KITE(カイト),MADOKA(マドカ)の2人組ユニット。Poppin’ではCo-thkooと併せてこの4人が日本のTOP4と言っていいだろう。レッグロールやクレイジーレッグス等の足技に関しては世界随一と言っていいブガルースタイルのKITEと、高い身体能力を活かしたハードヒットとキレのあるムーブで魅せるアニメーションスタイルのMADOKA。個性が全く違う二人だが相性は抜群に良い。Juste deboutでは2009年、日本予選を勝ち上がるがMADOKAが急用で不参加となってしまい、KITEは代役のFISHBOY(オリエンタルラジオ中田敦彦の弟)と当日予選から勝ち上がりこの年見事世界一となった。2013年の同大会ではフォーマーアクションのコンビで悲願の決勝進出を果たすが、惜しくも敗れ準優勝に終わった。さらにKITEはソロでも2011年、UK B-BOY Championshipsでチャンピオンになった他、UKで大ヒットしたダンス映画「ストリートダンス2」にも出演を果たしている。
動画は台湾のファッションブランドのPV。二人の強い信頼関係が垣間見える良作品。

5. TAISUKE(Breakin’)

Breakin’は、いわゆるブレイクダンスで、ナインティナインの岡村や古くは欽ちゃんファミリーの風見しんごなども踊っていたスタイル。世界的にもダンサー人口が最も多い。高い身体能力を要するアクロバティックなムーブが多く、バトルも他のジャンルに比べると闘争心剥き出しでガチなバトルになりやすい。ダンサー人口が多いということは、それだけ世界への道のりも険しいものになるが、このジャンルのソロではもっとも世界一に近い男がTAISUKEだ。Breakin’のソロバトルの世界最高峰RedBull BC Oneにて2度準優勝しており、世界中の精鋭を集めたRedBull BCOne All Starsにも選出された。
動画は、BCOne All Stars trailerとなっているが公式のものでは無い様だ。

6. THE FLOORRIORZ(Breakin’)

上記で紹介したTaisukeをリーダーとして、Nori、Katsuyaなど10名からなるBreakin’チーム。2015年10月24日、Breakin’のチームバトルでは世界最大のBattle of the Yearで日本悲願の世界一という快挙を成し遂げたばかり。Battle of the YearはBreakinの大会では26回という長い歴史を誇る、まさに世界最高峰の舞台。日本での予選は2000年から行われるようになり、初年度の早稲田ブレイカーズをはじめとして実に6回も決勝まで勝ち進んだがすべて準優勝に終わり、優勝はまさに日本ダンス界全体の悲願だった。動画は優勝した今年の大会のショーケース予選の模様。その後には、快挙を成し遂げたバトル決勝の動画も紹介しておく(こちらは17分超の長丁場です)

7. s**tkingz(HipHop)

shoji, kazuki, NOPPO, oguriの4人にからなるHipHopチーム。読みはシットキングス。コレまで紹介したLockin’,Poppin’ Breakin’はOld Schoolと呼ばれ、このHipHopと次に紹介するHouseはNew Schoolと一般に呼ばれている。OldSchoolの要素も取り入れつつ、1980年代後半以降の様々なステップやスタイルを取り入れていった混合型ジャンル。アメリカではストリートダンス全体をHipHopダンスと呼ぶこともあり、厳密な定義は難しい。
アメリカのダンスコンテストBODY ROCKにおいて2010年、2011年と2年連続優勝し、その名を一気に知らしめた。現在では国内外問わず多数の著名アーティストの振り付けやバックダンサーを努める。独創性に富んだ振り付けと、それを高いレベルで体現するダンススキルの高さが魅力。
動画は最初に紹介したHiltyと同じく、UrbanDanceCampでのパフォーマンス。帽子をつかったユニークな仕掛けに注目して見て欲しい。

8. RUSHBALL(HipHop)

KYOKAとMAiKAのティーンエイジャー2人組のガールズHipHopユニット。高校1年と中学3年という若さで2012年Juste DeboutのHipHop部門で決勝進出を果たし世界中を驚かせた。日本のキッズ(主に15歳までの小中学生を指す)ダンサーのレベルの高さは圧倒的で、確実に世界のTOPを走っているが、彼女達もキッズダンサー時代からカリスマ的な人気と実力を誇っていた。Juste Deboutでの快挙はまさに日本のキッズレベルの高さを証明したと言える。ボディコントロール、スキル、ミュージカリティどれをとっても大人のトップレベルのダンサーを軽く凌駕しており、今後の活躍が楽しみでならない。
動画は、気鋭のダンス映像集団YAK Filmsとのコラボレーション動画。

9. HIRO(House)

Houseというジャンルはその名の通り、House Musicと共に発展してきたジャンル。比較的速いBPMの4つ打ちビートの上で流れるようなステップで踊る。魅せるダンスというよりは、クラブで自由気ままに踊るのが本来の姿で、派手さは無いが、より高いミュージカリティが要求される。
HIROは1997年に渡米し、アメリカで既にプロのダンサーとして、MYAなど著名アーティストのツアーダンサーなどを努めていた。4年間のアメリカ生活から帰国後は、日本の伝説的Houseチーム、ALMAの一員となりその後は日本を代表するHouseダンサーとして快進撃を続ける。2007年Juste debout House部門で優勝し世界一となったが、その後も安定した活躍を続け、Juste deboutでの決勝進出は実に4度に及び(House部門では最多タイ)、しかも4回ともパートナーが異なっており、その中にはMamson, Meechといったフランスのトップダンサーとのペアもある。これは彼がいかに世界中のトップダンサーからリスペクトされ、認められているかの証左だろう。
動画は、ソロバトルでは国内最大のイベント、DANCE@LIVE JAPAN 昨年のFINAL出場者TRAILER動画を選んでみた。

ここでご紹介したのは、まだほんの一握りにすぎない。まだまだ紹介したいダンサーは山ほどいるのだが、また機会を改めたいと思う。とりあえず、このエントリで少しでもストリートダンスに興味を持ってもらえたらこんな嬉しいことは無いです。