メディアWatchの最近のブログ記事

前エントリー「首相官邸WEBサイト+メルマガで7億2千万はありえない」 の続き。

どうやら、結局これも「リテラシー」の問題でした、というオチみたい。

とりあえずWEBとメルマガだけで7億超云々の話はガセネタでFA。前エントリーに寄せられたコメントの幾つかを手がかりにいろいろ調べてみてそういう結論に至った。

まず、社民党でこの問題に注目したのは保坂展人議員らしい。氏のブログから、以下のエントリーを読むとその経緯が判る。

保坂展人のどこどこ日記 聖域なき「構造改革」の聖域は内閣・政府広報費

で、官邸サイト+メルマガで7億という話になったのは、内閣広報室がリリースした以下のPDFファイルがきっかけ。

→内閣広報室・政府広報室過去5年分の広報予算一覧表

このpdfファイル中の「官邸からの情報発信及び収集分析経費」の項に、確かに過去5年間いずれも7億超の額が記載されており、その備考欄に

官邸HP,メールマガジン等関係

という注釈がある。この備考欄の記述をもって「HPとメルマガに7億!」って話になった様だ。

しかし読んですぐお判りの様に、これはあくまで「官邸からの情報発信及び収集分析経費」の総額であって、備考欄の記述だけで断定するのは早計だ。内訳をちゃんと精査する必要がある。そしてその内訳は、WEB上に公開されている「内閣府 調達情報」から概ね把握できた。
保坂議員もこの情報までちゃんと辿りついている。保坂議員がエントリーからリンクしているのは平成18年度の調達情報。
→ 落札者等の公示(平成18年6月13日)

ちなみに前エントリーコメント欄で匿名の方がタレこんでくださったのは、これの平成17年度分。
→ 落札者等の公示(平成17年6月10日)

平成15,16年度についても「内閣府 調達情報」のページから探し当てる事ができる。まあどの年度も内容は大差無し。

平成18年度の落札者等公示情報から関係があると思われるものをざっくり集計すると以下の様になる。

内閣官房LAN関連約2億4500万
WEBサイト関連約2億1400万
メルマガ関連約1億2000万
共同やロイター等各種配信ニュース購入費約1億7000万
その他約1億1500万

上記は、品目分類番号71,27,14,67のものをピックアップして集計したものだが、これだと全部で8億超になってしまうので、LAN関連のハード機器リース料(分類番号14)あたりはもしかすると別枠予算になっているのかもしれない。
いずれにしても、WEB関連で2億超、メルマガは約1億2千万という額。前回エントリーの乱暴な試算から見れば安いくらいだ。WEB関連もインフラ周りやセキュリティ監査等で1億8千万ほどになっており、それ以外の費用は約3000万超。前回の試算でも触れた通り、これもまあ妥当と思える線。

落札者公示情報だけですべてのコストを断定してしまうべきではないにしても、重要なのは社民党がここに挙げたのと同じソースを見て騒いでいる点だ。そういう意味では「読めてない」としか言い様が無い。

少なくともこれらの資料から読み取れる官邸WEB関連+メルマガ関連費用は3億超に過ぎず、これは比較的妥当性のある額だ。
そして7億超の額には、セキュリティ関連費用、WEBやメルマガ以外の各種システム費、が含まれていて、情報収集分析経費としては、各種ニュース通信社からのコンテンツ購入費が計上されているという点についてもほぼ確定と言っていいだろう。

今回の話は、
読めてない社民党=>その言い分をまんま記事にしちゃった毎日=>記事を鵜呑みにして脊椎反射したネット住人

と、様々なフェイズでリテラシーの欠如が露わになった興味深い事例という事で(苦笑)
自分ももっと早く気付くべきだったという自戒もこめて。
とりあえず貴重な情報をいろいろ提供してくれた前エントリーのコメンターの皆さんには感謝。



[追記]
まあそれはそれとして、保坂議員が政府に提出したと言う質問主意書に対してどんな回答がくるのかには興味はある。結局7億という数字だけが一人歩きするような報道の仕方をした毎日の方が問題なのかな。

このエントリーは、愛・蔵太さん風味で(笑)。

有能だが辞めてもらった理由」 という記事が話題になったわけですが。

で、はてなブックマークの反響がこちら

なんか記事をそのまま真に受けちゃってる人があまりに多いのに驚きました。
そんな中、id:fuktommyさんという方が、「何を今さら」というタグと共にURLを紹介されていたので見てみると

有能だが辞めてもらった理由 - 解雇する自由

驚いた事に、この新聞記事は2年以上も前のものだった様です。そして上記URLには、投稿者の氏名含め全文が紹介されていました。辻豊という会社経営の方で、39歳だそうです。ほとんど僕と同世代ですね。

で、この方が語るエピソードが事実であると仮定すると、概要はこんな感じです。

  1. 辻さんは社員数十人規模の会社経営者。
  2. やる気と向上心は誰にも負けないと自負する好印象の30代男性を試用社員として採用。
  3. その社員は有能だったが、夕方の満員電車社員章を付けたまま性描写ばかり載った漫画本を読んでいたのを目撃。
  4. その件でこの社員を社長室に呼んだが、本人が「漫画本を終業後に読んで悪いんですか」と言い張るので解雇。

こんな単純なストーリーなのに疑問点が多すぎて、これが事実とは俄かには信じられません。

個人的に気になる点を挙げてみると、

  • 「満員電車」なのに読んでる本の内容とか社員章付けてる事とか判ったという辻さんと、この社員の距離・位置関係はどんな感じだったか
  • 社員数十人の会社で、社員章なんてあるのか
  • 仮に社員章があったとして、まだ正社員でもない試用期間に渡すものなのか
  • 辻さんが最も気に入らなかったのは、社員章を付けてた事なのか、漫画を読んでいた事なのか、その漫画がエロかった事なのか
  • 会社名を伏せたところで、社員数十名の会社経営者の辻豊と言っちゃったら何もかもバレバレではないか
  • 2004年当時の39歳といったら、むしろ今の若者より多く漫画を読んだ世代ではないか

などなど。

他にも、会社経営に携わる者の実感として、せっかく有能な新人なのに業務上のミスでも勤務態度でもない理由で解雇できるなんて、すごく人材に恵まれた会社なんだなあとか。

あとちょっと補足すると、

社員章については、僕自身これまで4つの会社に勤務して社員章なんて頂いたのは社員数万人規模の大企業だけだったのですごく不思議な感じがしたわけです。実際のところどうなんでしょうか。あったとしても、試用期間中に渡しちゃうもんなんでしょうか。よくわかりません。

それと、社員君の反論が「終業後に漫画を読んで悪いんですか」という主張だった事から推測すると、辻さんが気に入らなかったのは、「漫画を読んでいた事」であって、エロとか社員章はあまり関係無い様ですね。

もし辻さんのお説教が「せめて社員章は外そうよ」とか、「漫画はいいけどエロは恥ずかしいよ」という内容だったらこういう反論にはならない気もします。


それにしても、辻さんはなぜこんなに漫画を毛嫌いするのでしょうか。ほぼ同世代の僕から見るとリアリティ無さ杉です。
小学生低学年の時には、もうガキデカとかこち亀とか始まってましたし、中学時代にはすすめパイレーツとかサーキットの狼とか。高校生位の時にはもうスピリッツなども創刊されて、めぞん一刻とか。少年誌では北斗の拳とかドクタースランプとかタッチとか。
もう思いっきり「漫画世代」なわけで。例え辻さん本人が漫画を読まない人だとしても、漫画を読んでるだけでその人を蔑む様な偏見ってのは醸成し得ない世代だと思うのですが。

さらに辻さん、社員数十名を抱える社長様です。大企業ではないでしょうが、決して小さな数でもありません。人件費とか考えても、年商は億単位でしょう。それなりに交友関係とかも広い筈です。大阪中央区に住む年商億単位の会社社長辻さんと言えば、多分周辺地域の人ならすぐ判るのでは無いでしょうか。

辻豊さんをご存知の方がいらっしゃったら、コメント欄とかで教えてくれるとうれしいです。個人的には、もともとこの辻豊さんという人はいないんじゃないかと思ってますが。

このエントリーでは、個人的印象を垂れ流しただけで、何の証明にもなってません。この疑惑は証明できません。あくまでこの新聞記事は「誰か」の個人的体験を綴った投稿欄でしかないので。


というか、新聞とか雑誌とかの投稿記事欄ってのは、作り手にとっては捏造しまくっても殆どばれない場所だというのも、頭の隅に入れておいても良い気はします。

以上、「ちょっと調べて書く日記」でした。実はあんまり調べてません。ごめんなさいごめんなさい。

NHKの持つ膨大なコンテンツがネットで全面解禁になるかもよスゴイね!という類の話が幾つかのメディアで報道されて話題になっている。

折りしもフランスでは、国立視聴覚研究所(INA)のアーカイブ10万件がインターネットで閲覧可能 になったばかりだし、「すわ日本もか!」と盛り上るのは無理も無い。

しかし、日本のメディアというのはどこまでも信用ならない様だ。油断のスキも無い。

まずは5月5日早朝の読売記事から見てみよう。以下、全文引用。

NHK番組のネット配信、07年度にも全面解禁

 竹中総務相の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」(座長・松原聡東洋大教授)は4日、NHK番組のインターネット配信について、2007年度にも全面解禁する方向で最終調整に入った

 約55万本にのぼるNHKの番組を有効活用する狙いで、5月中にまとめる最終報告に盛り込む。

 NHK番組のインターネット配信は、総務省の指針で業務の規模で年10億円程度まで認められているが、この上限を撤廃する。ネット配信は、受信料を充てるのではなく、利用者に直接課金する方向で検討しており、利用者の直接負担を禁じた放送法の改正を視野に入れている。

 NHKが保有する過去の番組は約55万本あり、埼玉県川口市のNHKアーカイブスなどで約5700本の番組が公開されているほか、通信事業者を通じて、一部番組を有料で提供している。しかし、懇談会では国民的な財産であるNHKの番組が十分活用されていないとの意見が大勢を占めている。

 同時に懇談会では、NHKのチャンネル数削減や子会社の整理・統合を進めて業務範囲を縮小する方針を固めており、これらを進めることでネット配信の全面解禁に反対している民放側の理解を得たい考えだ。

 また、テレビ番組のネット配信を巡っては、出演者などの著作権処理のルールが定まっておらず、権利者から番組ごとに個別に許諾をとる必要がある。

 このため、懇談会では、俳優、作曲家、レコード会社など業界ごとにある著作権管理団体が権利者の権利を集中管理し、許諾手続きを簡素化できるような体制の整備を求める方向だ。

 ただ、権利者側は、配信を差し止める権利がなくなるなど権利の切り下げにつながるとの警戒感が強い。このため、配信可能な番組の範囲は、今後議論される権利処理のルールにも影響される見通しだ。

(2006年5月5日3時0分 読売新聞)


この記事は、かなり詳細な内容に踏み込んでいるし、具体的な数字も出ていて信憑性も高い様に感じられる。

ところが、だ。この記事の当事者であるはずの松原聡東洋大教授のサイトを読んでみると唖然とする事が書いてある。以下抜粋。


 しかし、最近の新聞報道については、座長としては一切取材を受けておりません。どういうソースでの報道なのか、正直、見当がつかないでいます。特に、本日(5日)の読売新聞。「NHK番組、ネット配信全面解禁へ」という記事にはちょっとびっくりです。「懇談会は4日、最終調整に入った」とありますが、座長の松原は取材を受けておりませんし、最終報告案をどうするか、で一人で熟考中。竹中大臣はたしか外遊中のはず。4日に懇談会の誰が「最終調整に入った」のでしょうか・・・。
 また、記事の中身にも問題があります。NHKは55万本の過去の番組があり、そのうちの5700本しか公開していないとあります。その通りなのですが、「インターネット配信の上限が10億円」だから、公開が遅れているのではなくて、過去の番組の中で、5700本しか権利処理が済んでいないから、遅れているのです。(もちろん、10億円という上限に問題があることは間違いないのですが・・・)。10億円を撤廃したからといって、55万本が公開されるわけではありません。
 さらに言えば、これは私自身が調査を依頼して、その結果を見て驚いたのですが、その5700本の権利処理も、インターネット公開ではなくて、「施設内公開」で取っているそうです。川口市の施設などに行かない限り、この5700本も見られないわけです。NHKは、過去の番組をインターネットで配信する気は、最初からなかったと考えざるを得ないのではないでしょうか。(5月5日)


要約すると、


  • 座長の松原聡氏は、マスコミの取材すら受けていない

  • 「最終調整」に入ったなんて話は当の座長松原氏も寝耳に水

  • 公開が遅れている要因は、10億の予算上限ではなく権利処理

  • 権利処理済と思われた5700本も、施設内公開の権利であり、現状ネット配信は無理

    (つまりネット公開可能コンテンツは現状ゼロ)

要するに、ハッキリ言ってこの読売記事は飛ばし。

そして、この読売記事から18時間以上もたった後、共同通信が以下の記事を配信。全文引用。

ネット配信全面解禁を検討 50万本のNHK番組

 【香港5日共同】竹中平蔵総務相は5日夕、訪問先の香港で同行記者団と懇談し、過去に放送されたNHK番組のインターネット配信を全面解禁する方向で検討すべきだとの考えを表明した。
 NHKが保有する過去の番組は約50万本あるが、竹中氏は「NHKが持っているコンテンツ(情報の内容)をもっと活用するのがNHKのため、国民のため、関連する産業のためだと思う」と強調した。
 さらに、総務省の指針で年間上限10億円程度としているNHK番組のネット配信の規模についても「足かせになっている。どのような形でクリアしたらいいか議論しないといけない」と述べ、改正に前向きな意向を示した。
(共同通信) - 5月5日21時56分更新


誰がいつ何処で語ったかが明記されてる点で、読売記事よりは良い。しかし、この記事にしても結局


  • 誰が=竹中大臣が

  • いつ=5日夕

  • どこで=外遊先の香港で

  • 誰に=同行記者団相手に

語ったと言うだけの話。

どう見たって、これ竹中氏の個人的見解だろう。記者会見ですらない。ニュースバリューとしてはなんとも心許ない。「検討すべき」と言ってるって事は、逆に言えば「今はまだ検討すらしてない」って事の証左だし。

おそらく外遊先で唐突にこんな話が出たのも、読売の飛ばし記事がトリガーだろう。語ったのが5日夕というのがいかにもそれっぽい。そして、竹中大臣の意に関わらず、現状のNHKの状況は松原氏がサイトで語っているような体たらく。

なんだかなあ。もちろん、竹中大臣も松原氏もNHKコンテンツのネット解禁には前向きな訳で、そこには私も期待するけどしかしながら、少なくとも報道のニュアンスと現実とでは、あまりに乖離があり過ぎる。

こんな、政治的立ち位置とほぼ無関係な記事でさえ、いちいち疑わないとならんのか。日本のメディアはどうかしてます。

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