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日本のインターネット、「本当にヤバイ」部分

2ヶ月前に書いた「日本のインターネット、マジやばくね?」 の続き。
前回のエントリーは想像を遥かに超える反響で、投稿後5日間で10万PVを超えた。
まず本論への導入として、前回のエントリーを書いた意図についてちょっと説明しておきたい。
個人的な話になるが、私は1998年にとあるIT企業を退職し、その1年後、1999年からWEBビジネスに関わりを持つようになった。
で、その1999年当時と比べて、一般ユーザのネット環境が劇的に改善し始めた2003年以降の日本の状況に漠然とした違和感を感じていた。一言で言えば「バランスがとれていない」と感じていた。その違和感は今でも払拭されないままだ。そんな折、前回取り上げた日経コミュニケーションの記事をたまたま読んだ。そこでのIIJ鈴木社長のインタビューこそが、私が感じていた違和感をピンポイントで言い当てていると思った。ココがこの議論のキモだと思うので、あらためて引用する。

(引用者注:インタビュアーの発言)
■しかし安価な料金が日本をブロードバンドで世界一の地位に押し上げた。
(引用者注:以下鈴木氏)
「世界一安い」なんてバカげてる。安さばかりを追求しているのは日本と韓国だけだ
日本と米国のインターネットは全く違う。米国はインターネットを含め、プラットフォームの値段を安くする事には非常に慎重だ。Mビット/秒あたりの単価を見ても、日本は米国の30分の1。世界平均と比べると50分の1だ。米国はインフラに金が落ちているから破綻することはないが、日本は非常に危険な状況にある。

基本的に、値段が安く品質が良いというのは素晴らしい事だ。私だってその恩恵に与っている。しかしだからこそ、この問題は落としどころの難しいやっかいな問題なんだと思う。
ちなみに、私が前回引用した日経の記事で全面的に賛同できるのはこのインタビュー部分だけなのだが言葉足らずでその辺がうまく伝わらなかったみたいなので、そのあたりを中心に話を進めたい。
「バランスがとれていない」というのは具体的にどういう事か。
前回のエントリーでは「アクセス系と幹線系の収益不均衡」と表現したが、ちょっと言い方が悪かったかもしれない。WEBビジネスに携わっていて肌で実感していたのは、幹線系というよりはサーバ側回線(ファーストワンマイル)とのバランスの悪さだ。
1999年当時アクセス回線の主流はISDN(INS64)。いわゆる2B+Dいうやつで、通常の接続では回線速度64kbps。アナログモデム利用者も相当数いて、33.6kbps~56kbps。
対してサーバ側は、自社に置いて直接専用線を引き込むパターンが多かった様に思う。というか、当時のデータセンター(以下iDC)回線相場が判らないというのもあるのだが、普及型のエコノミー専用線で128kbps、T1回線だと1.5Mbps。
サーバ~クライアントというのは一対多の関係なので、不特定多数のクライアントリクエストがサーバ側で集束する事になる。当然サーバ側回線の方がより広帯域を求められる。計算上エコノミー専用線で64kbps2回線分、一応は「広帯域」だった。少なくともTCP/IPの1コネクションにおいてサーバ側がボトルネックになる事は無かった。月額3万数千円という価格でも1クライアントに対する帯域優位は最低限確保できたのである。
T1回線だと64kbps約24回線分の同時収容能力があって、それで月額30万円前後。そんな時代だった。
自分にはこの当時の感覚がベースとしてある。
翻って、昨今の状況はどうか。
まずアクセス回線は基本的にベストエフォート(帯域非保証)だが、実測値ベースで光回線がおおよそ数Mbps~数十Mbps位、ADSL/ケーブルだと数百kbps~十数Mbpsといったところか。価格はより安価になり、かつ回線速度は数百倍~数千倍と劇的に進化した。
対して、サーバ側はiDC設置が主流と言って良いだろう。ちょっと調べてみたがほとんどのiDCはネット上に回線価格を公表してなかった。探した中では唯一、eおおさかiDCが公表(PDF) しているのを見つけたのでそこから引くと、1Mbpsで¥115,500、10Mbpsだと¥304,500。それ以上は1Mbps増強につき¥21,000。
ホスティング事業者系で見ると、例えばAT-Link の場合20Mbpsで¥399,000。
確かにサーバ側回線も1999年当時に比べればかなり広帯域かつ安くはなっている。しかしそれでも実際に運用されている数からすると数Mbps~数十Mbpsのサーバ回線が殆どのはずだ。
具体的な統計データがある訳ではないが、前述したeおおさかiDCやAT-Link、それ以外の事業者の価格表を見ても回線メニューは10Mbps前後を中心に組まれている。という事はここらへんが売れ筋と推測できる。100Mbps以上が主流になっていればこんな価格表にはならないはずだし、私が実際に業務で抱えているクライアントにしても数Mbpsのバックボーンが殆どだ。大資本の企業サイトや主なポータルサイトを除けば、おそらくどこも似たような状況ではないか。
つまり、現在では1コネクションでさえもサーバ側回線がボトルネックになっているという状況が日本全国で当たり前のように起きているという事。サーバサイドの帯域優位が全然確保できていない。道路に例えれば、複数の3車線道路が1本の2車線道路に合流するようなもので、これは明らかに「いびつ」だ。この「いびつさ」がこれまでさほど目立たなかったのは、そこを流れるトラフィック量が極小だったからに過ぎない。複数の3車線道路が1本の2車線道路に合流したところで、殆ど車が通ってなければ渋滞は起きない。今後トラフィックが増えるに従ってこの問題は次第に顕在化してくる。
実はこの音極道茶室を運営しているサーバも、恥ずかしくて言えないくらいの極細回線だ。このブログへのアクセスは少なくとも90%以上の確率でサーバ回線がボトルネックになってるはずだが、テキストベースのブログ程度だから今のところ苦情は来ていない、というだけの話だ。
それでも月額¥60,000円の回線使用料をiDCに支払っている。でもって、月額¥5000程度のBフレッツ経由でオフィスにインバウンドさせている試験用サーバが桁違いにレスポンスが良かったりするもんだから、ますますアホらしくなる。帯域保証って何よ?なんか間違ってないか?
逆に、1999年当時の帯域優位性を現在のインターネットで実現する場合を考えてみるともっと判りやすい。
実測20Mbpsの光回線ユーザを基準に考えたとして、INS64に対するT1回線と同等の収容能力を確保しようとするとサーバ側には480Mbpsの帯域が必要な計算になる。1Mbps1万円で見積もっても、月額480万円。当時のT1回線の16倍近い額になってしまう
しかもブロードバンドコンテンツは基本的にユーザの帯域占有時間が長い。ネットで映画鑑賞までする時代だ。サーバ側に要求される帯域レベルは1999年当時より遥かにシビアなはず。これではとてもじゃないが小規模ベンチャー企業などは手が出せない。このままこの「いびつさ」が是正されなければ、ブロードバンド時代はプロバイダだけじゃなくサービス事業者にとっても受難の時代になる。
それにしても、GYAOは大丈夫なんだろうか。自前でインフラを持っているとは言え、ランニングコストがべらぼうにかかっているのは想像に難くない。さらに昨今の「ただ乗り論」の影響もあってか、直接相互接続していないプロバイダに対してUSENが独自にヒアリングを実施し、回答のあったプロバイダとはコスト負担についての個別協議が始まっているという。そんなコストは想定外のはずだ。
広告料にしたってそもそもテレビCM相場より遥かに安い上に、GYAOユーザ900万人が同時視聴したと(のべ人数なのでこれが実数では無いのは承知の上で)仮定してもテレビ視聴率に換算するとたかだか15%。
結局最後は有料アダルトコンテンツで稼ぐしかないのか?などと思ってしまう。なんとも虚しい話だ。
いずれにしろ、今後ますますインターネットのトラフィック量は増え続ける。GYAOが潰れたとしてもWinnyがネットから消えたとしても、それに替わるものが現れるだけだ。この流れは誰にも止められない。
そして、トラフィックの増加に伴って、「いびつ」な部分が顕在化する。基幹・中継インフラやファーストワンマイルに増強圧力がかかる。世界一早くて安いアクセス回線が普及してしまった日本は、他のどこの国よりもこの圧力が強い。
その増強コストを誰がどう分担するのか。
日本が固有に抱える問題を一言で言うなら、そういう事なんだと思う。
このエントリーを書こうと思った矢先、前回のエントリーでも引用させて頂いたmichikaifuさんがまたまたタイムリーなエントリーを書かれた。
Tech Mom from Silicon Valley – 「インフラただ乗り論」日米の違い より以下抜粋。

アメリカでは、ボトルネックはバックボーンでなく、ブロードバンドのアクセス部分だ
バックボーンが業者間取引なのに対し、これは消費者向けのサービスなので、
おのずとチャージできる金額に限界がある。

チャージできる金額に限界がある部分が、ボトルネックとして機能しているアメリカは健全だと思う。
そして、やっぱりココが日米の決定的な違いなんじゃないかという思いを強くした。
前回のエントリーの締めに書いた
「日本のインターネットに従量課金が復活するのは、すぐ目の前と見た。」
と言うのは、いささか極論だったかもしれない。
ただ、ちょっと補足すると、何もダイヤルアップ時代の様な従量課金が復活すると言っているのではなく、ある程度の転送量しきい値を設定した上で、それを超える「重度のヘビーユーザー」にさらなるコスト負担を求める事でトラフィック増大の速度を幾らかでも鈍化させ、同時にコスト面でもアクセスユーザから幾分かのペイバックを見込む、というのは現実的に一番妥当な落としどころではないのかな、と2ヶ月経った今でも思っている。

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ネタ

MT4i導入-携帯電話で閲覧できるようにしました

MT4iをやっと導入しました。
インストール超カンタンなのな。つーかこれインストールって言わない。パスワード設定して転送しただけ。
うーん、なかなか優れものですなあ。
で、何ができるかって言うと、要するにこのサイトを携帯から参照できるようになりますた。
携帯からアクセスを試みる方は、URL
http://www.virtual-pop.com/tearoom/i
にお願いします。後ろに ”i” を付けるだけです。
つーか、QRコードとか表示した方がいいんかな?そのへんは検討しておきます。
長文エントリーとか、携帯から見るとすごいな。1エントリーが3ページとかになっちゃってるw

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ised倫理研第7回議事録を読み解く(後編)

前編はこちら
前編では「共通ID構想へのカウンター」の途中だったが、当初の予定を変更して共通IDについての言及は最後段にまとめる事とし、倫理研の議論の中で特に興味深かった部分にフォーカスを絞りたいと思う。

「オルタナティブとしてのネット空間」は不要なのか

倫理研第7回の議論が面白いものになったのは、東氏が小倉さんの問題提起を「倫理研のテーマに近づけるために」再定義したのが大きいと思う。これはGood Jobだと思った。
具体的にはこの部分。

東浩紀
 議論を整理しましょう。ネット上の言論、北田さんの表現を使えば
CMC(Computer Mediated Communication)ですが、その価値を評価するときにふたつの立場があるわけです。
それを現実空間からの自律性において評価するか、それとも自律性はむしろネガティブにしか働いていないと
考える
か。白田さんの場合は前者で、自律性を評価している。
後者の立場であれば、ネットはこれからは現実空間により従属したサブシステムにすべき
ということになる。小倉さんはこちらですね

そして、北田氏がそれに応える。

 というのも、CMCは現実のオルタナティブじゃないとまずいと思います
リアルの権力構造がネットにも入ってしまったら、絶対に勝てない人が出てきてしまうでしょう。
だからせめてネットの中だけでも勝てる状況があるべきではないか。
それが公正の一要素だと思うんですね。逆に不正なシステムというのは、負けた人間が
絶対に勝ち上がれないシステムのことだと思います。負けても再び勝ち上がれる経路が常に
保障されていれば、たとえ優賞劣敗が生じたとしてもそれは正当なシステムといいうる。
かつて言論空間はこうしたフラットな空間だったと思うんです。

ネットは、現実社会のオルタナティブたるべきか否か。倫理研の議論の中で、このアジェンダ設定は大きな流れの一つだった。そして、その視点から言えば白田氏も北田氏も小倉さんとの立場の違いが明確だ。
自律性」「オルタナティブ」といったキーワードがブレイクダウンされ、議論はさらに面白い展開を見せる。以下抜粋。

加野瀬:
 共通IDで討議の空間をつくっても、おそらく不満が生まれて匿名空間に流れると思います。
実例を挙げれば、2ちゃんねるのSNS板にはmixiのスレッドがアホみたいにあって、
mixiで感じた不満がこれまたアホみたいに書いてあります(笑)。
東さんは2ちゃんねるのことを「悪口で繋がる自由」*2とおっしゃていた。
しかしmixiは顕名で繋がる社会性になっているので、ポジティブなことで繋がるしかない。
顕名的な空間だと、ネガティブなことは絶対に許されないわけです。

東:
 そしてネガティブな欲求は2ちゃんねるに流れていく。

加野瀬:
 2ちゃんねるとmixiというのはポジとネガの関係だと思います。それが客観的に分かるので面白い。

これは言い換えると、「mixi」のオルタナティブとしての「2ちゃんねる」という側面があるという事。もちろん「mixi」がオフライン空間に近い性質を併せ持っているから、という部分も無くはない。しかし、「mixi」だって紛れも無い「ネット空間」だ。
つまり、オルタナティブとしての「ネット」空間の中に、さらなるオルタナティブがある。多重化された階層がある。これは面白い指摘だと思う。
考えてみると、「多重化されたオルタナティブ空間」はむしろオフライン社会の方が顕著に見られるものかもしれない。
例えば、「懇親会」や「打ち上げ」と称する所謂「酒の席」が古くから日本社会におけるオルタナティブな空間として機能していた。「無礼講」とは、日常とは別のコミュニケーション規範を持ち込もうという意志表示に他ならない。
そして、「2次会」はさらに「1次会」のオルタナティブとして、よりホンネを語りあえる場として機能していたりする。4次会くらいになると、残った少人数ですっかり気を許しあい人生まで語りあってたりするのだ(笑)。
「酒の席」だけでなく、オフライン社会ではある意味ネット以上に「オルタナティブな空間」が幾重にもフラクタルの様に複雑な階層を為している。そして我々は無意識のうちにそれぞれの空間を使い分け、コミュニケーションレベルを切り替えているのだ。
対して、ネットにはその様な「細やかなコミュニケーションレベルの使い分け」は不要だ。
ネットではあらゆる発言が公衆の面前に晒される。前述の「酒の席」に例えるなら、2次会や3次会で為されるような上司の悪口もクライアントに対する不平不満も全て筒抜けだ。そういう意味で、ネットがある種の「残酷さ」を本質的に持っている事は確かだ。
じゃあ、その「残酷さ」は全て排除されるべきものなのだろうか。「本音」というのは時に残酷なものだ。
「2ちゃんねるの自分に関するスレッドをチェックする」と公言する芸能人が何人もいる。そこは、噂の主にとっては「残酷な場所」だろう。なぜわざわざ見に行くのか。視聴者の忌憚無い本心がそこにあると知っているからではないか。
結局小倉さんの発想は、「オルタナティブな言論空間」そのものを否定するものだ。またまた「酒の席」に例えれば、「一次会で帰った上司が、二次会三次会で誰が自分を批判したのかトレースできるようにしよう」というものだ。
あらゆる風評が本人の耳に入ってきてしまうネット特有の「残酷さ」を問題にしているのはよく判る。
しかし何か問題解決のベクトルが違っていないだろうか。isedの議事録を読む限りでは、ネットがオフライン社会の「オルタナティブ」である事自体を問題視している人は小倉さん以外にいないように見える。

共通ID構想の実現可能性について

小倉さんの主張は、問題提起としては価値のあるものだと思うし、だからこそisedの議論も盛り上ったのだとは思う。しかし、それは実現可能性とは分けて考えるべき。議事録での高木先生の発言から引用。

高木:
 そういう仕組みもあっていいとは思うんですよ。たとえばこの場の議論をネット上でやろうとしても、
たしかになりすましや自作自演が邪魔になる。そこで共通IDのメカニズムがあれば、そうした存在を排除した
コミュニティをつくることができる。ただ現状では不可能です。一応はてなダイアリーで閉じてやることもできますが。
そして小倉さんの議論というのは、法改正も含めた上で事業者のインセンティブをいじり、皆がID制度を採用するような
方向に持っていこうというものです。しかしそこまで必要なのだろうかという議論と、少なくとも現状はそうしたことが
できないという議論は分けておく必要があります

なぜ高木さんは「不可能」という極めて強い表現を用いたのか。
なぜ議論を「分けておく」必要があるのか。
パネラーの方々の中で最も技術的見識の高い氏の発言だけにその言葉は重い。
で、ここからは個人的な見解。
結論から言うと、私見では小倉先生のイメージするような共通ID構想が実現する可能性は限りなく低い。まずは、共通ID構想実現までに超えなければならないハードルを箇条書きにしてみよう。

  1. 法改正の必要性を社会に認知させる(啓蒙)
  2. 法改正を立法府における議論の俎上に乗せる
  3. プロバイダ責任制限法の改正を実現する
  4. プロバイダ各社が免責をあきらめずにユーザの実名登録を選択する
  5. 共通ID管理運用専門の民間法人が起業する
  6. プロバイダ・共通ID業者双方が経営的に軌道に乗る
  7. ブログや掲示板のユーザがFC2等の海外法人に流れるのを防止する

ハッキリ言って全項目実現可能性の高いものは一つも無い。仮に各項目の実現可能性を30%と見積もっても(超甘い!)全てのハードルを越えられる確率は0.02%になる。
項目ごとの詳細な説明を始めるとそれぞれエントリー1本分くらいのテキスト量になっちゃいそうなのでここでは省くが、比較的実現性の高い項目をしいて挙げるならば、2と3。PSE法の様な法律が施行されてしまうのを見ると、悪法が必ずしも駆逐されるとは言い切れない。しかし、万が一法改正が実現したところで、その後の流れは市場原理に委ねざるを得ない。そうなった場合コスト面から見ても事業者意識から見てもユーザ心理から見ても上記の様なストーリーで事が運ぶとはとても考えられない。
最初から実現性は限りなく低いと考えていたが、4月10日のブログファン調査でアクティブユーザシェア1位 (※4月17日の調査では再び2位)となったFC2が米国法人と知って、その思いは決定的となった。
あと、ユーザの個人情報に対する事業者側の意識という点についてはこれまで共通ID論争でもあまり語られていなかったので参考リンクを1つご紹介。(個人情報保護法施行後は特に)WEB事業者はこのスタンスがデフォルトと思う。(つまり、共通ID専門業者、なるものはそれだけリスキーで、余程ビジネス的旨みが無い限り誰も手を出さない分野という事)
「不要な個人情報は求めない」ヤフー井上社長、情報セキュリティを語る
以下抜粋。

 これを実現するために最も重要としているのは、「必要以上に情報を収集しない、蓄積しない」ということだ。例えば、ある年齢層に向けた広告を出すために個人情報を取得する際は、わざわざ生年月日を求めるのではなく、生年のみを要求する。エリアを絞った広告を出す場合には、郵便番号で十分なため住所を要求しない。井上社長は、「持っていない個人情報は絶対に漏洩しない」と語る。

[補足]
言葉足らずの部分は多々あると自覚しているが、とにかく共通IDネタは話が長くなり過ぎて疲れる。(小倉さんが構想全体を練り直さない限り)小倉さんの構想が実現する日はこないと確信しているし、この話題をこれ以上引っ張る意味も最早感じない。ので、この話題は多分これで最後。コメント欄には(溜まっているものも含め)レスします。


[さらに追記]
忘れてた!議事録公開前から、isedエントリーを書く時はこれで締めようと思ってたんだった。
加野瀬さんのエントリー
「空気を読む」は「言論の予測市場」
こちらのエントリーで、ised倫理研の打ち上げの模様がリポートされている。

 isedの終電を過ぎた後の打ち上げで、時差ボケで疲れているといった東浩紀さんが急に2ちゃんねるに書き込む!と言い出して、2ちゃんねるの哲学板の自分のスレに「いまから15分すべての質問に答えます」と書き込み。15分過ぎても答えるサービス精神を発揮し、結局始発まで答えてました。

詳細は是非リンク先を参照してください。写真付きでおもしろいっす。この様な光景が、共通ID議論の直後に展開されていた訳です。はからずも本エントリーの話とうまいことリンクした(笑)。やっぱ「打ち上げ」は「オルタナティブ」ですな。
おあとがよろしいようで。

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小倉先生大変です!

すんません、ised議事録のまとめモチベーションが一気に冷める記事を発見してしまいました。
こちらの記事 によると、FC2ブログはなんと米国法人との事。本当なのか!?
本当だとすると、もし仮に小倉先生が悲願を達成し、プロバイダ責任制限法を私案通りに改正する日が来たとしても、FC2は適用外じゃないっすか!??どーなんでしょう?教えてください法律の専門家諸先生方!
つーか、サスケット君でさえも規制できません!先生!これは勅使河原君の陰謀なのか?
てか、米国法人ってのはマジで驚いた。
あ、そういえば福田君も規制適用外です!!

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小倉先生へ~ローカルプロクシによる「セーフティブログサービス(仮)」のご提案

すみません、ised議事録エントリーはまた次に延ばします。
というのも、「肯定派も否定派もハッピーになれる共通ID論争の落としどころ」をモヒカンチックにあれこれ考えていてちょっとしたアイディアが浮かんだので小倉先生宛にご提案したくなったのです。
落としどころと言っても、これはあくまで「ここから始めてみてはどうでしょう?」という内容です。このアイディアなら

  • 法改正も不要
  • 現行技術で可能
  • 一切の個人情報不要
  • 他のネットコミュニティへの影響無し
  • コスト的にも現実的

と思います。ビジネスパートナーさえ見つかればすぐにでも実現に向けて動き出せます。

概要

  1. 極めて高度なトレーサビリティとコメント制御機能を備え、さらになりすましや自作自演対策、法律アドバイザーまで備えた、ブロガーの安全を最大のウリとする「セーフティブログサービス(仮)」をベータサービスとして無料で立ち上げます。
  2. その最大の目的は、「マーケティング」。
    まず、このサービスがどれだけユーザを集めるかを以って、「安全なブログ」に対する市場ニーズを測定します。
  3. さらにユーザの顧客満足度も調査。顧客満足度が低ければこのサービスの安全対策が機能していないか、もしくはユーザがさらなる安全を求めている事になり、もっと本格的な施策が必要という根拠になります。
    逆に顧客満足度が高ければ、すなわち市場ニーズが満たされた事を示すわけで、そのまま本サービスに移行します。

アーキテクチャの詳細

トレーサビリティの確保(もちろんIPアドレスレベル)にはいろいろな方法が考えられると思いますが、ふと思いついたのが「プロクシの積極的利用」という逆転の発想。これけっこうイケルと思うんですが。
具体的には、表題にもある通り「ローカルプロクシ型のアプリケーションソフト」を事業者側で無料配布し、コメント投稿したい人にはそれを自分のPCにインストールしてもらうというもの。
ちょうど、2ちゃんねるの『禁断の壷』のようなものをイメージしてます。名付けて『禁断のコメントスクラム』略して『禁コメ』(笑)。
で、コメント投稿やエントリー投稿はこの『禁コメ』経由でしかできないような仕組みを実装する。ローカルプロクシだから、負荷の問題もありません。
これであれば、外部プロクシなどの利用はシャットアウトできるし、サーバ、クライアント両方を事業者側でコントロールできるので自由度がすごく高い。
例えば、インストールとアンインストールを繰り返す様な人でも、『禁コメ』側でMACアドレス情報を取得してしまえば、それとアプリケーションIDを紐付けしてその行動をトレースできます。
複数のPCを駆使して自作自演を試みる場合でも、外部プロクシ利用をシャットアウトしているので同じアクセス回線を使用する限り、同一IPアドレスからの発信である事は把握できます。
なりすましはもっと困難。アプリケーションIDだけでほぼ大丈夫。
コメント禁止等の制御も、アプリケーションIDベースで行えばIPアドレスによる制御より遥かに確実で細やか。
あとは、ホスト名を逆引きできないアドレスからの投稿はサーバ側ではじくとか。とにかくいろんなレベルの制御が実現可能。
しかも、個人情報の登録が一切無くても実現できる。当然ながら何らかのアカウント登録と組み合わせる事も可能ですが。
100%じゃないにせよ、はてなやTypeKeyのアカウント認証と比べても荒らし行為は遥かにハードルが高くなるんじゃないかと思います。

その他の対策

さらに、万が一コメント欄等でトラブルが起きた場合に備えて、法律アドバイザーをラインナップしておきます。で、このサービスのユーザに限り無料で相談できる。もちろんこのアドバイザーには小倉先生が就任します。
バランスを考えて、他にも専門家の方がいればベストかと。
私見ですが、一般人が訴訟をあきらめる一番の理由は、トレーサビリティなんかよりもやはり費用(と時間)なんじゃないかと思います。すごく高額な印象がある。相談だけで30分数万円とか聞かされれば、普通の人は尻込みしますよ。だから無料で気軽に相談できる窓口があれば、相談者は多いかもしれません。
「その他の対策」っつーか、これが一番荒らし抑制効果がありそうです(笑)。

個人的な予想

このサービスがもし実現されたとして果たしてどうなるのか。
個人的な予想を言えば、まずユーザ数はそれなりに集まると思いますが、既存のブログサービスを脅かす程にはならないと思います。なぜなら、ブログを開設してる人の殆どは、コメントスクラムの心配より「もっとアクセス欲しいリアクション欲しい」だと思うからです。
ただ、ビジネス的にはちょっと面白いかもと思っていて、何故かというと結局こういうサービスを一番欲しているのは「実名ブログを書いている有名人」だから。
だとするとビジネスモデル的旨みはあります。。少ないユーザ数でもかなりの高アクセスが期待できるからです。
他のブログサービスは、金払ってでも有名人ブログを囲い込みたい、というのが殆どですから。
結局、こういうサービスが新しく出来てそれなりに安全対策が機能すれば「これで十分じゃん?」となるのではと個人的には思います。
アーキテクチャに関しては思いつきなのでまだ落とし穴や考慮漏れがありそうで若干不安は残りますが、そして小倉先生から見たらこれでも不十分なのは承知していますが、「共通ID登録業者」よりはビジネスパートナーも見つかりやすいと思います。
こういうアプローチも小倉先生にとってマイナスにはならないと思いますが如何でしょう?

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小倉弁護士提唱の共通ID論争はなぜ混迷するのか

前エントリーの続き、に入る前に。
これは最初に言及しておくべきだったかもしれない。
小倉先生が理想とする「ネット社会」は、厳密には2つのレベルに峻別できる。

  • 「訴訟が円滑に行える程度にトレーサビリティが保証されているネット社会」。これが「レベル1」。
  • 「批判が的外れだった場合には社会的評価が低下するというリスクを発言者が常に負うネット社会」。これが「レベル2」だ。

この「2つのレベル」は同じ次元では語れない。議論の上で慎重に区別すべきポイントだ。「2つのレベル」を両方認識している人同士の議論であれば、肯定派であれ否定派であれそれなりに議論は噛み合うのかもしれない。
しかし、「レベル1」の部分だけを見て「そんなにおかしな意見じゃない」と言い出す人、「レベル2」の部分だけを見て過剰に反発する人が大量に参入する事により議論は混迷を極める(そして永遠に収束しない)。
小倉先生は、プロバイダ責任制限法の改正によって、この「レベル1」「レベル2」を同時に実現しようとしている。
おおざっぱに言うと、
第三条(損害賠償責任の制限)の改正が、レベル1の実現に対応し、
第四条(発信者情報の開示請求等)の改正で、レベル2の実現を目論んでいる。
トレーサビリティだけの問題なら、第三条の改正(ユーザの住所氏名の把握)だけで済む。ところが、第四条まで改正し、発信者情報の開示条件を大幅に緩める事で「真っ当な批判」さえも抑制しようというのが小倉案の全貌だ。
そして、ここが重要なのだが、ised議事録における講演では、小倉先生はプロバイダ責任制限法改正の説明を第三条のみ詳細に論じ、第4条については殆ど具体的な説明をしていない。つまり法改正案の「比較的受け入れられやすい部分」しか説明していないのだ。
案の定、ised議事録でも、他のパネラーの方には「レベル2」の部分が伝わっていない。
例えば高木先生の次のコメント。

誹謗中傷のつもりがなくコメントしたのに激怒されてしまったとします。じゃあこれは誰だということになったとき、法律によってどこまで明かされるのかがポイントになる
もしこれが本人の住所氏名までだとすれば、これは訴訟目的のものでしょう

第四条の改正について認識していない為に、これは「訴訟目的」だと高木さんは解釈している。私もそれであればある程度理解できる。
しかし実際はどうか。
あらためて小倉先生のエントリー「共通ID構想等に向けてのプロバイダ責任制限法改正案」 から、該当部分の条文を見てみよう。
発信者情報開示が認められる条件の部分だ。

一  侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことについて
損害賠償又は侵害行為差止めその他の訴訟を提起したならば勝訴の見込みがないとはいえないとき

つまり、「仮に訴訟したとすると勝訴の見込みがゼロではない」という条件で発信者情報は開示されてしまう。
ちなみに現行の法案ではこうなっている。

一  侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき

つまり、現行では個人情報の開示は明白な「不法行為」に限定されている。
逆に言えば、小倉さんの改正案は「不法行為と言い切れない」「訴訟目的ではない」場合でもバンバン個人情報を開示していこうという意図は明らかだ。そうでなければ「社会的制裁」は機能しないわけだし、そもそも四条改正の必要は無いわけだし。
そして、前エントリーでも注目発言として挙げたこの部分。

しかしだからといって、他人を批判したとき、必ずその相手から氏名住所の開示請求を受けたら、
開示するような制度にすべきだろうか。そこは考える余地があると思います。

繰り返しになるが、小倉さん自身がそう考えているとしたら議論の余地はある。
実りある議論にする為には、正しく議題設定する必要があるだろう。
個人的な見解としては、「レベル1」の部分は意図としてある程度理解できる。この部分の議論のポイントはやはりコスト等を含めた「実現可能性」になるだろう。
そして、「レベル2」の部分はおおいに疑問がある。小倉先生自身、「考える余地はある」とおっしゃっている。
町村先生のこのエントリー を見ても、すごいコメント数になっている。まさに「混迷」する議論。さすがにこれほど大量のコメントになると議論を追う意欲が萎える。
有意義な議論にするには、小倉先生の意図を正確に把握する必要がある。
ised議事録エントリー後編は次のエントリーで。

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ised倫理研第7回議事録を読み解く(前編)

ised倫理研第7回の議事録が3月29日にようやく公開された。
議事録を読んだ感想から言うと、「めちゃめちゃ面白かった」の一言に尽きる。
isedの議論の中でも特に盛り上った部類に入るんじゃないかなあ。少なくともオグリンウォッチャーとしては実に興味深い内容だった。
「共通ID小倉案」としてこれほど詳細に纏まっているテキストもこれが初めてだろうし、それに対する代表的な反論の数々もこの議論の中に凝縮されている。加えて、これまでの小倉先生には見られなかった注目発言も幾つか見られた。
正直中身が濃厚過ぎて(笑)この議論を整理するのは少々荷が重いのだが、なんとか私なりのレベルでこの興味深い議論を読み解いていこうと思う。長文になりそうな予感。

小倉式共通IDの概要

議事録の冒頭は、小倉先生の講演から始まる。ここでは「小倉式共通ID」案の概要が語られている。今回のised議事録を元に、あらためて箇条書きで整理してみよう。

  • 「表現の匿名性」は、現状の日本のネット社会においては議論を活性化するどころか、むしろ阻害要因(いわゆる祭、コメントスクラム等)になっている。
  • 言論の自由市場を本当に活性化するには、匿名性の保障の程度を低くするしかない
  • その具体的な方策として、プロバイダ責任制限法第3条を改正する。すなわち、プロバイダがユーザの戸籍上の名称や住民票の住所を正しく把握している場合に限り、プロバイダがユーザの違法行為から
    免責される事とする。
  • しかし、ユーザの個人情報を取得・保有するのはコストがかなりかかる。ISPならまだしも、これを個々の掲示板管理者に求めるのは現実的ではない。(小倉先生はこの部分を指して「個別ID制度」と呼んでいる)
  • そこで、この高コストな部分(個人情報を登録して保管するといった業務)をアウトソースできる仕組み、すなわちその業務を専門的に行う民間業者に委託する。その専門業者が発行するIDが小倉先生言うところの「共通ID」。

以上が、共通ID案概要。

小倉先生注目発言

さて次に、議事録上で個人的に特に注目した小倉先生の発言をピックアップしてみる。

ここで重要なのは、このIT革命がもたらした言論の自由市場への参入可能性の拡大、いいかえれば参入障壁の崩壊は、法がもともと持っていた「表現の自由」の問題と直接の関係を持たないということです。

小倉先生が過去に「参入障壁」という言葉を用いたのは、ちょっと記憶がない。これは後ほど、「共通ID」の実現可能性を考察する上でキーワードになる。その点については後述。

さらにこうした情報は個人情報保護法上の個人情報にあたりますから、これを取得・保有するためにはコストはかなりかかってしまう。ISPならまだしも、これを個々の掲示板管理者に求めるのは無理があるでしょう。つまり個別ID制度は現実的ではない。

「個別ID制度」自体小倉先生の言葉で詳細に語られる事は今まで殆どなかったと思う。今回の議事録では、小倉先生の言う「個別ID制度」が何を指しているかが判る。しかも、「高コストで現実的でない」とまで言っているのは小倉先生なりのブラッシュアップの成果なのか。

 ただ課題として、開示請求者の権利を侵害しているとまでは言えない場合にも、個人情報の開示を認めるべきかどうかについては、私としても迷っている部分がないわけではありません。たしかに他人を批判する以上、「批判が的外れだった場合には恥を書く」という程度の責任は負って然るべきとは思います。しかしだからといって、他人を批判したとき、必ずその相手から氏名住所の開示請求を受けたら、開示するような制度にすべきだろうか。そこは考える余地があると思います。

ここはまさに、「えーーーーー!?」って気分(笑)。議事録一番のサプライズ。そこが小倉案を批判している最大の理由の一つなのに。小倉さんが「考える余地がある」と言ってる点に、「いや、そこ普通にNGでしょ」とツッコミいれてる訳だから、議論の余地はあるでしょう。小倉さん「でさえ」迷ってるんだったら、そこにフォーカスした批判には耳を傾けてくださいよ。たのんますよ。

 ともあれこの共通ID制度が実現すれば、ファイルローグのようなP2P型のサービスもできるようになる可能性があります。これまでは利用者の住所氏名といった個人情報を集められなかったので、違法な行為に使われるのを止めることができませんでした。しかしこの共通ID制度が実現すれば、違法な利用者に簡単にアクセスすることができるようになります。

今までピンとこなくて気付かなかったのだが、今回の議事録読んでて痛感したのは、小倉さんの「共通ID」構想の原点には「ファイルローグ事件」があるという事。第三者から見ると唐突な感が否めないが小倉さんの中では繋がっている。で、そこに気が付くと、小倉さんの思考プロセスが見えてきて興味深い。

あらためて共通ID構想へのカウンター

1.「コメント欄閉鎖」で十分では?

議事録より引用。

小倉:
 ブログのコメントスクラムと掲示板の炎上の違いについて、以前感覚的に述べたことがあります*1。コメントスクラムというのは、自分の家の前でギャーギャーやられているような感覚があるんですね。自分の家の前で毎日抗議にきたり、ビラをまいたりする人たちに対して、やめろと言うのは当然の権利ではないかと思います。

高木:
 それについては、単純にコメント欄無しのブログにすればいいのではないですか。ただ途中でポリシーを変えると「コメント閉じやがった」と言われてしまうので、最初からコメント欄を設けないようにすればいいのではないか。

「言論の自由」という切り口で見れば、コメント欄を閉鎖してもブログ主の言論の自由が損なわれる事はない。家の前でのビラ撒きに例えるなら、それこそコメント欄閉鎖で完全にシャットアウトできる。
私自身何度か小倉先生のブログで同じ質問したが、その時もこの議事録でも明確な反論は無い。というか、一部で「コメント欄閉鎖は恥ずかしい」みたいな風潮が蔓延している事こそが問題で、もっと積極的にブログ運営スキルとしての「コメント欄閉鎖」を啓蒙する事の方がコメントスクラム防止に有効な方策と思うのだが。
いずれにしろ、議事録でも指摘がある様に「コメントスクラム」を「法改正」の論拠にするのはかなり説得力が弱い。

2.インターネットに「地理的制限」が通用するか?

東氏が共同討議の冒頭で議論を整理した際の発言。

小倉さんの提案は、その指摘のうえでいえば、サイバースベースを再び地理的空間に結びつけよういうものです。

インターネットとは、言うまでも無く「地理的制限」を超えたところに価値があり、だからこそ発展してきた。そういう観点からあらためて共通ID構想を見た時に、本当にその試みが機能するのかという単純な疑問が沸く。
「海外のBlogサービス使えば、プロバイダ責任制限法は適用できない」というのも、前々からある共通ID構想への反論として代表的なもの。例えばアメリカのTypepad.comでブログを開設し、そこでの発言が問題になっても、日本のプロバイダ責任制限法は適用できないだろう。結局、仮にプロバイダ責任制限法が改正されたとしても、それは単に大量のブログユーザが海外のブログサービスに流出するのを促すだけになりはしないか。

3.全てのブログサービス事業者は法改正に反対する

kanose氏の重要な指摘。

加野瀬:
 ネットサービスというのは、基本的にユーザーを増やしたがるものです。しかし共通IDというのは、ユーザーを増やさない方向に行くシステムのような気がします。それを導入するメリットはなにかあるんでしょうか。

そもそも、ブログサービスは現状でもさほどおいしいビジネスではない。そしてブログに限らず「出来るだけ大勢のユーザを囲い込む」のが今のWEBビジネスの大前提だ。広告価値を高めるにもアフィリエイト数を増やすにも「多大なアクセス数」が収益のポイントになる。mixiの場合だと100万ユーザ突破時でさえまだ大赤字だった。加野瀬氏の指摘はその点を突いたものだ。
そこで、前段で引用した小倉先生の「参入障壁」発言である。小倉さんは「参入障壁の崩壊」を問題視している。平たく言うと、「誰でも簡単に参入できるから質が低下する」というわけ。これは言論の質だけを問題にすれば確かに一理ある。
しかし参入障壁を再び高めるというのは、つまるところ参入者数の減少を意味する。言い換えれば市場規模の縮小
共通ID導入によって、事業者にとってはただでさえランニングコストが増加するというのに、それがもたらすものは市場規模の縮小。新しいユーザ層を開拓できるとか、何かプラスの効果があるのなら検討の余地もあるだろう。しかし共通ID構想はサービス事業者には何一つ良い事が無い。こんな法改正に事業者がYesと言う訳が無い。
すべてのブログサービス事業者はこの小倉案の法改正には反対するだろう。
法改正を前提にすれば、共通ID導入のインセンティブが働く可能性も無くはないが、その法改正自体が果たして実現するのか大いに疑問だ。
つーかまだまだ終わりそうもないのでw続きは次エントリーで。

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社会・政治

梅田望夫=○○○○説

私が初めて梅田望夫氏のご尊顔を拝見したのは、CNET JAPANブログ『英語で読むITトレンド』のトップ画像 だった。
2004年の初頭あたりだったと思う。
一目見たその時から、
「この顔には見覚えがある」
「というか、私はこの人を知っている」
という感覚があった。
梅田氏の写真は、「その人」にしか見えなかったのである。
しかし、つい先日、”梅田望夫” “○○○○”←(ここには「その人」の名前が入る)
でGoogle検索してみたところ、数件ヒットはしたものの「その人」との類似性を誰一人として指摘していなかった。驚いた。
みんなあえて気付かぬフリをしているのだろうか。
もしくは、これはタブーなのか。
それともGoogleを高く評価している梅田氏に気を遣って、Googleが自主的に八分ってるのだろうか。
Googleのイメージ検索で、「その人」の写真を見つける事ができた。
fukkun1_t.jpg
メガネも書いてみた。
fukkun1_glass.jpg
ラフな感じ。
fukkun2.jpg
というわけで…
梅田望夫=布川敏和説!
ごめんなさいごめんなさい。