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どんなに愛されても「幸せ」にはなれない ”Rimo”という名のシザーハンズ

シザーハンズ。
両手がハサミで出来ているが故に、人間社会に適応できなかった人造人間エドワードの物語。
はてながリリースした新サービス「Rimo」(リィモ)は、超マジで「テレビそのもの」を目指すという、実体を伴ったWEB上のサービスとしてはおそらく世界初の画期的な試みである。
コンテンツとしては十分な魅力と可能性を感じる。
今後、多くのユーザに支持されるだろう、とも思う。
しかし、どんなに多くのユーザから愛されたとしても、”Rimo”は「幸せ」にはなれないだろう。
つまり、”Rimo”はビジネスとしては成功しないだろう。
というか、”Rimo”の存在そのものがビジネスとして成功できない「宿命」を併せ持ってしまっている様に思う。
このあたりのニュアンスをどう伝えればよいのか難しい。どう表現しても、批判と受け取られてしまいそうな文章になる。
あれこれ思案していて、「シザーハンズ」を思い出した。シザーハンズに例えたなら、少しはこのエントリーの意図を伝えられるかもしれない。
「Rimo、君は悪くない。
でも君がいくら”テレビ”になりたいと願っても、それは無理なんだ。
だって君の体は”WEB”で出来ているからね。」


サービスの収益について尋ねると、川崎さんは「ノープランです」とからりと笑う。サービスに自信はある。まずはたくさんの人に使ってもらい、楽しんでもらうのが先決だ。「人がたくさん集まれば、それだけで価値が生まれるはず。それこそ『こっちの方がテレビより面白い』とでもなれば、ビジネスも成り立つだろう」(神原さん)
YouTubeをテレビで“ダラ見” はてな、Wii対応の動画サービス (2/2)

「人がたくさん集まればそれだけで価値が生まれるはず」
「ユーザから支持さえ集められれば、ビジネスは何とかなる」
この様なある種楽観的な考え方は、WEBビジネスの世界では珍しいものではないし、むしろ支配的な考え方と言える。しかし、この理屈は「WEBビジネス」を志向するサービスで成り立つ話であって、「テレビ」を志向する「Rimo」に通用するかどうか。
Rimoのユーザがどの様に振舞い、そこで何が起こるのかを具体的に想像して欲しい。
ユーザは、TOPページURL http://rimo.tv/ にアクセスしたまま、「テレビの様に」コンテンツを視聴し始める。Rimoはコンテンツ抽出のアルゴリズムに則り、あらかじめ想定されたトラフィックを流し始める。ユーザは、流れ出したコンテンツをひたすら「消費」する。その行動パターンは、ネットユーザではなくテレビ視聴者のそれになる。
彼らは、殆ど存在感を発揮する事なくRimo上に滞留し続ける。彼らが起こすアクションは、基本的にスキップボタンかチャンネルボタンをクリックするだけ。Rimoのアクセスログには、ザッピングの痕跡だけが淡々と記録されていく。
この様なユーザが1000万人になろうが、1億人になろうが、それは「頭数」以外の意味を持たない。
何が言いたいかと言うと、ユーザの「能動的な意思表示」が有って初めてWEBは価値を創出できるという事だ。
GoogleやAmazonのビジネスモデルを持ち出すまでもなく、WEB上で成功したあらゆるビジネスは、「ユーザアクションの正確な把握」と「そこから潜在ニーズを的確に読み取る」という2つの大原則から成り立っていると言って過言ではない。

これまでのインターネットサービスでは、「文字を書き込む」「検索する」「設定項目を入力する」といった操作をする必要がありました。Rimoはそんなめんどうな操作をできるだけ取り払いました。
はてなダイアリー日記 2007-02-16

と豪語するRimoのコンセプトは確かに斬新だが、言い換えれば「WEBである事のメリットは全て捨て去りました」と言っているに等しい。そう考えると、Rimoのアクセスユーザ数をビジネスに結びつけるのは想像以上にハードルが高いと気づく。
クリッカブル広告の類は、そもそもRimoのコンセプトにそぐわないし、現状のUIを考えてもいかにも収まりが悪い。テレビを志向しているのだからテレビCMと同じ形態でCMを流せば良いという発想がやはり自然だろう。
そうなると、単純な視聴人数をベースにした広告収入という事になり、つまりテレビの視聴率競争という土俵にWEBインフラをぶらさげて参入、みたいな話になってくる。
しかし正直、スケールメリットの勝負になってしまうとWEBに勝ち目は無い様に思う。
テレビは一度電波を発信してしまえば、それを1万人が視聴しようが、1億人が視聴しようが同じコストだ。WEBではどう逆立ちしても、配信規模の増大に伴ってランニングコストが膨らむという基本構造は変わらない。ちなみにWEB上で1000万ストリーム同時配信しても、テレビ視聴率換算で約16.7%にしかならない。
「Rimo」はどんなにテレビを装ってもWEBサービスである。常識的でベタな話をすれば、ビジネスとして成功させるにはコンセプトを軌道修正すべきと思う。
しかし一方で、それこそツマラナイだろと思う自分もいる。
WEBの世界では非常識がしばしば新しい常識を生み出す。もしかしたらとてつもないブレークスルーがRimoをきっかけに起こらないとも限らない。

「どんなに愛されても「幸せ」にはなれない ”Rimo”という名のシザーハンズ」への14件の返信

ビジネスに絡めなくても、リリースするだけで意味があると思うけど。
おおっ!?って思えるサービスはなかなか作れるもんじゃないし、それだけでhatenaの価値は上がるんだろうし。

Gyaoが陥った失敗を教訓にすれば
はてなは確実に広告収入を得ることができると思います。
半年後にはRimoの画面の端には 動画のタグと関連した
広告が並ぶでしょう。
はてなのやることですから きっと目障りにならない
ような表示方法をとると期待しています。

パッと思いつくのは、
・動画のタグ付け
・関連商品のテレホンショッピングのような番組
・数クリックで買える仕組み
を一体にしたシステムでしょうか。ユーザの能動的行動が必要になりますが、テレビCMで商品名を示したり、URLを流す場合に比べて、「文字を書き込む」「検索する」「設定項目を入力する」手間は減らせます。
それで儲かるのか?という点が疑問ですが、現状、テレホンショッピング番組やクリッカブル広告が成立していることからみて可能性はあるのではないでしょうか。

”Rimo”のビジネスモデル

素人がパッと思いつくのは、
動画のタグ付け
関連商品のテレホンショッピングのような番組
数クリックで買える仕組み
を一体にしたシステムでしょうか。ユーザの…

>しかし正直、スケールメリットの勝負になってしまうとWEBに勝ち目は無い様に思う。
単純にビジネスとしてみれば収入がランニングコストを上回り、収益が上がればそれでいいのでは?TVの土台に乗るからといって、TV局と同じだけの売上高や収益を上げる必要はないでしょう。
もちろん、はてながTV局並みのメジャーメディアにのし上がるんだ!という野望を基に開発したサービスなら話は別ですが。

1>
>ビジネスに絡めなくても、リリースするだけで意味があると思うけど。
その通りだと思います。特にRimoのリリースははてなにとって重要だし、評価してます。
このエントリーは、Rimoには収益化における他サービスには無いハードルの高さがあるという指摘をしたいだけで、価値は否定してません。
kakisibu さん>
目障りにならない、程度ではすまない、もっと凄いことをやるかもという期待感もあります。そこは今後の展開に要注目というところでしょう。
tako さん>
>テレホンショッピング番組
ここで大きく問題になるのは、はてながコンテンツホルダーではないという事です。
内容はYouTubeに依存せざるを得ない。今後、はてながRimo上にオリジナルコンテンツのチャンネルを設けるという、まさにTV局と同じ様な道を歩み始めるという可能性はゼロではありませんが。
tak.hasegawaさん>
>単純にビジネスとしてみれば収入がランニングコストを上回り、収益が上がればそれでいいのでは?TVの土台に乗るからといって、TV局と同じだけの売上高や収益を上げる必要はないでしょう。
仰るとおりです。ただスケール云々の話で言いたかった事は、広告主にとっては圧倒的にテレビの方が魅力的だという点、逆に言うと、Rimoの広告料はテレビより遥かに小額になるだろうという事です。
あと、エントリーでは言及しませんでしたがUIの問題とユーザの顧客満足度の問題もあります。
Rimoはスキップボタンを既に実装してしまった。これは広告表示の時に大きなジレンマになります。もし、CMもスキップできてしまうとハッキリいって広告モデル自体が成立しません。スキップできないとなるとユーザの満足度が大幅に低下します。このあたり、Rimoがどんな解決策をもってくるか、興味があります。

番組編成権がテレビ局から個人の手に移る日 ―― Rimo 関連メモ

– キャズムを超えろ! – RimoリリースでTVが放送波受信機ではなくなる日がまた少し近づ…きますように いずれ放送局の利権なぞ薄れ、TVはテレビ放送受信…

[思考][著作権][ネット]YouTubeとCMに関して。

コレに関連して。 音極道茶室: どんなに愛されても「幸せ」にはなれない ”Rimo”という名のシザーハンズ(コメント欄) Rimoはスキップボタンを既に実装し…

なるほどー
僕もつい先日
HAPPYエイジング&幸せを呼ぶちからをさずけます
というメソッドをノウハウとして作成しましたが
RIMOにあてはめて読んでました。
シザーハンズちょっと切ない例えですが
結構好きです。

エントリの話題とは微妙にズレますが、J2さんが興味があるんじゃないかと思ってネタ提供。
樫原伸彦がこんなこと言ってる。
http://blog.livedoor.jp/nk_h/archives/50913009.html
実際にJASRACを通して著作権商売をしている人が、「JASRACだめぽ」、と考えているのは興味深い。
竹熊健太郎さんも版権を握ったまま出版してくれない出版社に対して、どうせ流通に乗らないなら近々引き上げてWebに公開するつもりだと言っている。(ソースは俺)
多分、コンテンツビジネスってえのは、そろそろビジネスモデルを考え直さなくちゃいけなくなってきている、ってことです。コンテンツ提供側から、まさしく生活がかかっているために、危機意識が生まれているというのは、本気にしていいことだと思います。

超破瓜さん>
ニコニコ動画についてえんとり書いたよ!
nomadさん>
なんつかね、音楽業界とかはJASRACとかが妙な危機感煽るせいかなんか知らんけどビジネスモデルとか気にしすぎ。おまいら才能でメシ食ってるんちゃうんかと。
お笑い芸人とかYouTubeに自分らの映像がUPされてもそんなに怒らんのじゃないか?彼らは自分たちがおもろいかどうかだけが大問題で、おもろいという自信があったらそれでOKみたいな。違法UPLOADとかどーでもいいみたいな。
音楽だってホントは同じなんだけどね。いい曲書くことが大事って人が少なすぎる。

to J2サマ>
>ニコニコ動画についてえんとり書いたよ!
わはー、やたー

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